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213.上陸した

「この先をもう少し行けば陸が見えてくるはずです。」

「長い間案内ありがとな。」

「いいえ、こちらこそ何度も危機を救っていただき、感謝しかありません。では、ご武運を。」


 俺達への案内も終わり、セイレーン達は海へ帰っていった。

 この先がいよいよ東の大陸か。

 果たして、どんな場所なのだろう。


「陛下!陸です!陸地が見えました!!」


 船長のリンドが望遠鏡を片手に叫ぶ。ついに来たか。


「よし、そのまままっすぐ進むぞ。」

「はっ!総員、全速前進!目標に向かって進め!」


 船員たちの手にも力が入る。

 そして、三日の航海を経て俺たちはとうとう東の大陸にたどり着いたのだった。

 魔石エンジンのおかげで相当早く進んだな。


「ここが……」

「見たところ普通の島のようですね。現在地はわかりますか?」

「おそらくこのあたりだと思います。本島の西側下の方ですかね。」


 リンドが地図を指す。

 上空から見た結果、東の大陸は一つの大陸と三つの島からなっていることがわかっている。

 今俺達がいるのは本島――メインの大陸の部分だ。

 岸壁に船を隠し、壊されないように結界をかけ、魔法鞄に荷物を詰め込み、いざ出発。

 島の奥へと進み始めた。


 「うわっ」


 ゼノの声と共にバチィッと何かにはじかれる音。

 驚いて振り返ると、サラが困ったように言った。


「強力な結界がかかっているようです。我々ははじき出されてしまいました。」

「どうやら誰かが住んでいるのは間違いなさそうですね。」


 龍族と魔法攻撃無効の俺以外、魔法に長けたエルフをもはじく結界か。

 明らかに知恵あるものの侵入を想定して作られている。

 そして問題は、こんなバカみたいに強力な結界を大陸中に張れる人物がいるということだ。

 まさか俺たちの上陸場所にピンポイントに張ったなんてことはないだろう。

 そんなことをするくらいなら攻撃して追い返したほうが早いからな。

 ということはこの結界は大陸全体、もしかすると他の島の部分まで及んでいるかもしれないということがわかる。


「壊しちゃう?」

「いや、そんなことをしたら敵対心バチバチだと捉えられるだろう。サラ達も結界が通り抜けられるようにしてくれ。」

「はーい。」


 イリューシャがサラ達にも結界を張った。

 これで島の結界は問題なく通れる。結界対決はイリューシャの勝利だな。


 しばらく散策してみたが、ごく普通の島だった。

 木々が生い茂り、木の実が生え、野兎などの動物もいる。

 違うことと言えば――


「竹だ……」

「タケ?この緑色の不思議な植物はタケというのですか?」


 なんと森の中に竹林があった。

 日本で見る青々としたあの竹だ。

 ということは、やっぱりここは日本と何かつながりがある?

 とりあえず、竹の葉と根の一部を魔法鞄に入れて持って帰ることにする。

 

 竹林をしばらくすすむと、沢があった。

 水は飲めるほどに綺麗で、すぐ近くには沼もある。

 水分補給もかねて沼のほとりで休憩する。


「不思議な植物ですが、よく見ると美しいですね。」

「これが成長する前の芽の部分は食用にもなるはずだ。炊き込みご飯なんかにすると美味いぞ。」

「そうなんですか?探してみましょうか!」

「いや、タケノコは春だけだよ。今はもう全部成長して――」


 ぺたり。


 何かが足首をつかむ感覚がした。

 見ると結界越しに俺に触れようとするぬめぬめとした緑色の手。


 「ケイ様!」


 イリューシャがすかさず捕らえる。

 捕らえられた生き物の姿を見てさらに驚いた。

 ――河童だ。

 水かきのついた緑色の手足に背中の甲羅。頭には丸い皿があり、皿の縁からは髪の毛のようなものが飛び出ている。


 グェェエエッ!!!


 逃げ出そうと大声で叫びながら身をよじる河童。

 イリューシャがうるさそうに頭にチョップを食らわせると、頭の皿が割れた河童は息絶えた。

 

「これは何です?見たこともない……気味の悪い。」


 イヴァンが呟く。確かにエレメンティオでは見たことないな。


「たぶんだけど、河童じゃないかな?頭の皿が弱点なんだよ。」

「せいかーい。エレメンティオにはいないね。この島の固有種ってところかな。」

「やはり別の大陸なだけあって、魔物も様相が違うようです。」

「そうだな。戦い慣れた魔物が出てくるとは限らないから、用心していこう。」


「それは殊勝な心掛け、特に背後からの急襲には注意せねばなるまいて。」

 

 いきなりの耳なじみのない声にびくりとする。

 ジェイクにイヴァン、ゼノが身構えた。

 俺も後ろを振り向く。

 するといつの間に現れたのだろう。十人近い人間?に囲まれていた。


 なんだ?いつ来たんだ?

 ジェイクやイヴァンが気配に気が付かないなんて。

 それよりもその格好。まるで忍者じゃないか。


 理解が追い付かない俺を他所に、謎の忍者たちは一斉に襲いかかって来た。

 鬼人三人が必死で応戦するも多勢に無勢。

 危ないところでサラが炎の魔法をぶちかます。

 忍者たちは軽やかな身のこなしでそれを避けた。

 リザードマンたちも戦闘に参加し、戦闘に向かない人間の船員はアヤナミの影に集まる。



「イリューシャ!彼らを全員捉えろ!」

「了解!」


 言うが早いか、イリューシャはあっという間に忍者たちの間をすり抜けた。


「これ以上動けば殺すよ。」


 ピタリ、と忍者集団の動きが止まる。

 よく見ると、首に何やら術式の浮び上がる輪が掛けられていた。


「変な真似をしたらその輪が君達の首を切り離すから。分かったら手を煩わせるようなことはやめてね?さ、拘束するから手を出して。」


 イリューシャが淡々と忍者集団を集め、両手を手錠のように拘束していく。

 仕事が早い。そして冷酷。

 さすがは風龍と言ったところか。


 拘束され大人しくなった彼等の中、一際動きの良かった女性に尋ねてみる。

 黒猫と人間のハーフといった容貌、しっぽは二本生えている。

 

「あんたが彼らのボスか?」

「……。」

「ケイ様に無礼ですよ。」

「このような男に話すことなどない。」

「……あーあ、めんどくさっ」


 パチンッ


 イリューシャが指を鳴らすと同時にボスと思われる女の目付きが変わった。

 ボーっとしているというか、どこか遠くを見ているような。


「で、君がボスで間違いないの?」

「はい。氷雨(ヒサメ)と申します。」

「どうして僕らの場所がわかった?」

「結界が反応致しましたので、その反応を追って参りました。」

「結界って、島に入る時に反応したやつ?」

「はい、侵入者を感知し、居場所を速やかに特定します。この国に古くから伝わるものです。」

「君達は何者?」

「我らは久遠(クオン)様に仕える直属部隊、『(シノビ)』でございます。侵入者発見の知らせを受け、排除、抹殺するために参りました。」

「待て、お前、氷雨(ヒサメ)様に何をした!?」

「何って、口を割らないから洗脳したけど?」

「洗脳だと……?あの短時間でどうやって……しかも相手は氷雨様だぞ!?」


 おい。なんか急にペラペラ話し出したと思ったらイリューシャが洗脳魔法かけて操ってたのか。

 全く、勝手に突っ走るなよ、イリューシャ。

 とりあえずこの『(シノビ)』達からこの国のことや『久遠(クオン)様』と呼ばれる人のことについて聞きたいけど、今の状態じゃ友好的な話し合いは無理だな。

 なんてったっていきなり洗脳して口を割らせてるんだから。友好的には程遠い。

 しかもこいつら国の上層部というか、秘密部隊っぽいし。

 このまま他国の人間にペラペラ喋ったら不味いんだろう。

 別に言いたくないことまで聞きたいわけじゃないし、とりあえず洗脳は解くか。


「俺達はウォルード大陸……外の大陸から来た者だ。この国のことについて知りたい。もし教えてくれると言うなら首領の洗脳を解こう。」

「……わかった。話す。話すからそれ以上は……」

「OK。交渉成立だ。イリューシャ。」


 俺の呼び掛けでイリューシャは氷雨(ヒサメ)の洗脳を解いた。



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