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197.建設予定地

 造船技術者がエレメンティオにやってくる。

 彼らの技術があれば船を作ることができる。

 写真とゼノの説明を聞く限り、漁船に使われていた小型の船と、運送に使われていた大型の船があるらしい。

 どちらも欲しい。ぜひとも作り方を教えてもらいたい。

 ということで、今日はその準備のために海へ来ている。


「よっと。」


 転移魔法陣でいつもの海岸へ到着。

 お供はアヤナミ、そして探索班のメンバーでコボルト族のハウリルもいる。

 俺たちが何をしに来たかというと、船の建設場所と港の建設場所を下見に来たのだ。

 船づくりは大規模な事業。様々な設備が必要になるだろうし、当然スペースもそれなりに必要だ。

 そして、できた船を停泊させる港も必要だ。

 技術者たちがやってきてから探しに行くのではいろいろと遅いから、今のうちに決めておかないと。

 まずは港となる場所から探す。

 

「うーん、ここら辺は向かないな。」


 俺たちが塩や海産物を採りに来るここは、なだらかな遠浅の岩礁や砂浜になっている。

 船を入れるのには向かない。


「もっと水深のある場所がいいんだけど……」


 最悪龍の力で無理やり地形を変えるか。

 というか、港づくりの水中の整地とかは初めからそのつもりだ。


「この先に河口があって、河口の向こう側にちょっとした入り江がありますワン。」


 ハウリルが先導して歩き出す。

 おお、さすが探索チーム。このあたりの地形もばっちりだな。

 期待通りの働きをしてくれる。連れてきたかいがあったよ。


 無事に入り江を発見した。

 おお!ここなら船も入れるし波も穏やかだし、良いんじゃないか?

 周囲の陸地も見晴らしがよく、開拓しやすそうだ。


「ここ良いな。ここを第一候補としよう。」

「はい!」

「第二候補のおすすめはあるか?」

「ここからさらに南に下ったところに……ちょっと遠いですワン。」

「良いよ、一応見ておきたい。」

「かしこまりましたワン。」


 それから周辺を探し回ること数時間。

 第二候補まで建設場所が決まった。

 ついでにそれぞれの候補地になった時の造船所の位置まで決めた。


 そして、リザードマンの住む湿地帯も見つけた。

 河口を遡ったところに集落を作っていた。

 四十名近い大人のリザードマンと、百五十近い子どもと思われるリザードマン。

 子どもだらけでびっくりしたが、リザードマンは一度に十五から二十の卵を産むらしい。

 なるほど、人間の繁殖スピードで考えてはいけないということだな。

 ちなみにこのリザードマン一族は三十数年前に魔族領から移住してきたバリバリの魔族である。

 元々魔族領の一地域にそれなりの数の種族として暮らしていたが、突然変異なのかなんなのか、どうしても肉を受け付けない者がポツリポツリと現れた。要は菜食主義者だな。

 肉食中心の魔族領でこれでは生きていけないということで一族から離脱。

 この湿地帯でのんびりと過ごし、数を増やして来たんだとか。

 建国祭にも来てくれていたな。軽く挨拶をした覚えがある。

 んで、なんで今更リザードマン達にコンタクトを取ったかと言うと、造船所で船大工として働いてもらうためだ。

 このリザードマンという種族は魔族なだけあって力も強く体力もある。

 そりゃそうか、元々獲物を狩って暮らしてた種族だもんな。身体能力は折り紙付きだ。

 そして、自分達で湿地帯を開拓しただけあって器用だ。

 打診してみたらOKを貰えた。

 代わりに、この湿地帯の管理を任せて欲しいということだ。勿論税は納めるからと。

 なんでもリザードマンは綺麗な湿地で卵を産み育てて仲間を増やしていくらしい。

 開拓で埋め立てられたり汚されたりすると繁殖が出来なくて困るというわけだ。

 そういうことならお易い御用だ。

 ここら一帯をリザードマンの里として認め、開拓を任せよう。

 繁殖地の美しい自然は守りつつ、王都から海までを繋ぐ港町として栄えて頂きたい。


 そしてシリウスの構築魔法により立派な港が完成し、港から王都までの街道も敷いた。

 『構築』の力って、本当にチート級だよな。

 そう言えば『三国街道』の方はどうなっているんだろう?

 聞いてみたら、なんと既に街道を敷き終わっているとの事。あとは途中途中の重要都市に繋ぐ脇道を作るだけだとな。

 しかも街道に魔物が出ては行けないと、構築した石畳に対魔物結界魔法を練り込み、街道から五十メートル以内には魔物が入れないようにしたらしい。

 仕事早っ!そして気が利くっ!

 俺の知らぬ間にほぼ全部終わってんじゃんか。

 脇道はそれぞれの国で作るように調整も済ませたらしい。

 あとは料金所の配置さえ済めばいつでも使えると。

 料金所か……エレメンティオのみならず三国街道に繋がる全ての出入口に人を配置するのは難しいな。

 現地人を雇うか。

 ただ、現地人だけに頼ると不正が横行する危険もあるから、こっちからも監視できるようなシステムを。

 そうだ。高速道路の料金所のように、払わなきゃ通れないゲートにしよう。

 料金は先払い制で、駅の切符のようにどこからどこまでと書いた札を配ろう。

 出口でその札を回収すれば、不正乗車ならぬ不正利用は避けられる。

 例えば「キークスからカロン」で料金を払ったままエレメンティオまで来た場合、切符を受け取る時にそれがバレる。その後は差額を払うか、警備隊に連行されるかだ。

 現地でやり取りした切符は定期的にエレメンティオでチェックする。

 チェックする魔道具も作っておくか。

 それでも監視員ぐるみで不正をすることは出来るが、そんなことにはならないと願いたい。

 どうしても不正が横行するようなら新たなルールを考える。

 うん、とりあえずはこれで行こう。

 早速オルテア王国とスラウゼン王国に連絡を取る。

 両国の合意形成が成されれば『三国街道』開通だ。

 あ、それとシリウスは対魔物結界が褒められたのが嬉しかったのか、「エレメンティオ国内の全ての道に同じ魔法を施します」と張り切っていた。

 魔力は大丈夫なのかと思ったが、全く問題なさそうだ。

 チート龍め、羨ましい。

 





 




 そしていよいよ『三国街道』が開通した。

 エレメンティオも、とりあえずは王都だけだがゲートと管理人を設けて受け入れ態勢は万全だ。

 ちなみにこの管理人は公務員という扱いになる。

 だから希望者を募って試験を行った。

 合格者数名の熾烈な試験だが、お金の計算や読み書き、利用者への対応などの実技を経て決まった。

 うちには貴族制度はない。国や地方都市の管理・徴税なども公務員が行う。

 ちなみに公務員の条件は以下の通りだ。

 ・給与は定められた額を国王が出す。

 ・試験を行い、合格した者が公務員として働ける。

 ・世襲制なし、身分や種族の差別なし。

 ・一度でも不正や犯罪を犯した者は即刻首。二度と公務員にはなれない。

 日本では何かとやり玉にあげられる公務員だが、高めの安定した給与と身分に関係なく誰もが領主や国の政治に関われるということでものすごい倍率になった。今では子どものあこがれの職業No.1となっており、将来に向けて勉強を頑張る子どもが増えた。感心感心。







 『三国街道』が開通して一番初めに来たのはトリノ公国だった。

 え、街道関係ないじゃん……。

 まあ仕方ない。どんな街道を作っても、直線距離で行けてしまう空路には敵わないのだから。

 トリノ公国の御用商人であるスコットリーさんは、使者として来てくれたカルミネ公の縁者らしい。

 挨拶もそこそこに早速品物を見せてきた。

 以前言った通り楽器が大量にある。

 ギタール、ヴィオリン、フルール、リコタ……どれも地球にある楽器と似ている。

 他にも沢山あったが、全て複数個買った。

 今はまだ個人で買えないと思うので、ピアノ同様俺が貸し出す形になる。

 そのうち個人でも所有する者が出てくるかもしれない。

 あとはワインをはじめとする酒類、干した海産物、特に海で取れる魚の干物は興味深かった。

 イワシにアジにカツオにタイだ。美味しいに決まっている。

 果物も豊富だ。オレンジにグレープフルーツ、キウイ、ぶどう。

 マンゴーやパパイヤといった南国っぽいフルーツまである。

 なんでもトリノ公国の南の方は暖かい気候らしく、こうした作物が育つらしい。

 季節的に今しか取引できないと言うので大量に買っておいた。

 暖かい気候、良いよな。うちの国の南の方と言ったら『不毛の大地』だ。作物が育つ気がしない。

 まあその分『暗黒の森』は世界樹パワーでどんな気候のものでも育つから全く問題ないんだけどね。


 うちからは約束しておいたワインとついでにほかの酒も、そしてジークたちドワーフ職人集団の作った宝飾品やキッチンツールが売れた。

 特に軽くて丈夫で錆びにくいアルミやステンレス製品にいたく興味を持っていたよ。

 ここら辺は街に残った使節の人も熱心に勉強している。

 まだお互いの持つカードを知らないのもあり、あれもこれもと悩みっぱなしの取引だった。

 

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