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194.温泉調査

 温泉施設のイメージや設計図を考えるためにも、一度俺が直接見ておく必要がある。

 というわけで、調査隊は俺、ミアガリア、地質に詳しいシリウス、鬼人族防衛部隊、ゼノ率いる探索チーム、そして建設代表のトウリョウだ。

 街の防衛はコボルト防衛部隊に任せてある。

 まあ結界があるから外敵の侵入に関しては心配なさそうだけど。

 パーンは集落に送り届け、建設のめどが立つまでは今まで通り暮らしてもらう。

 ついでに食料なんかの支援物資もお届け。

 デスマウンテンの周辺の様子も見ておきたいので、転移ではなくシリウスとミアガリアの背に乗っていく。

 パーンはシリウスの背びれにしがみついてずっと怯えていた。

 火口からは煙が噴き出し、赤い溶岩が見えている。

 加護も貰ったし火山による災害はないとは思うが、それでも用心するに越したことはないな。

 風向きのせいか噴煙や火山灰は西の方に流れていくみたいだ。

 そしてまずはサテュロスの集落へ。

 切り立った崖と深い谷間がサテュロスの集落だった。

 崖の隙間の小さな洞窟に家族ごとに点々と住処を構えている。

 ここなら魔物に襲われる心配もない。なぜなら足場すらほとんどない場所だからな。

 逆にサテュロスたちはどうやって出入りしているんだ?

 崖に近づくとその方法が分かった。彼らは驚異的なバランス感覚でわずかな足場に蹄を乗せ崖を移動しているのだ。

 なんつー器用な。雑技団かよ。

 前に『世界びっくり映像』とかいう番組で崖にすむヤギたちを見たことがあるけど、まさしくそれだ。

 俺たちの乗る龍の姿に慌てふためき洞窟に隠れるサテュロス達。

 とりあえずパーンを送り届ける。

 パーンの姿を確認すると、「族長が戻って来た!」と大騒ぎになった。

 パーンが大声で事情を説明し、国王である俺が来ていると知ったサテュロス達は大急ぎで崖の上へ集まる。

 人数は百五十人くらいか。

 全員深く頭を垂れて恭順の意を示してきた。

 パーンに話した計画をみんなにも伝える。もちろん「強力な結界を張る」ということは強調したうえで。

 魔物に襲われず安心して暮らせるということと、仕事を与えられるということに皆感激してくれた。

 そして支援物資の食料を見て涙を流しながら跪く。

 ふふふ、これで人心は掌握したな。彼らの忠誠心は俺のものである。

 大いに働いてもらおうじゃないの。






 

 次に待ちに待った温泉郡の視察へ。

 まずは山の中腹の方に行って見る。

 もくもくと湯気が立ち、大小さまざまな温泉が点在している。

 ちょっと場所を変えると温泉の色が全く違う。透明なもの、コバルトブルーのもの、黒っぽいもの、朱に近い赤色のものまで様々だ。

 たしか、地下水に染み出した成分の違いによって色が変わるんだよな。

 泉質もかなり違うと聞いたことがある。疲労回復や肩こり、冷え性、美肌の湯や傷の治りを早める湯なんてのもあるんだっけ?

 ちょっと異臭がするのが気になる。この硫黄系の匂い、硫化水素じゃないか?

 濃度が高いと人体に害があると聞いたことがあるがどうなんだろう?


「シリウス、この空気、大丈夫かな?」

「少し匂いがありますが、人体に有害なほどではありません。温泉成分から立ち上る匂いのようですね。」


 シリウスがそういうなら間違いないか。

 ひとまずここにいるだけで人が死ぬ、なんてことにはならなそうで一安心。

 しかし――

 

「……人間が入れる温度には見えないな。」


 そう。この温泉たち、ものすごく熱そうだ。

 ボコボコと吹き出ており、おそらく入ったら死ぬ。あっという間に釜茹で人間の出来上がりだ。


「そうですね。人間や通常の生き物からしたら熱すぎるうえ、刺激が強そうです。」


 シリウスが煮えたぎる温泉に手を浸けて平然と言う。

 おい、大丈夫か……って、大丈夫だわな。龍なんだから。

 どうやら温度以外にも、成分が濃縮されすぎて人間には少々有害らしい。

 ちなみに今シリウスが手を入れたお湯、人間が触ったら皮膚が溶けてしまうんだと。怖すぎる。絶対に入りたくない。

 というわけでここはいったん保留だな。

 他に使えそうな温泉が無かったらどうにかして利用したいが、とりあえず麓の方を見てこよう。







「うわぁ……」


 麓の方は実に良い感じだった。傾斜がなだらかで歩きやすいし、そばを流れる川のせいか温泉が良い感じに冷えている。

 というか、流れる川もまた温泉だった。温泉と言ってもかなりぬるめで、風呂というよりは温水プールだな。

 そして肝心の温泉郡。こっちも大小さまざま、色も様々な温泉群だ。

 

「湯加減、泉質はどうだ?」

「村の風呂よりは少し熱いですが問題はありません。泉質も山頂から流れてきた雨水で薄まっているのでしょう。これなら人体に悪影響はありません。」


 安全と言われたので、俺も手を入れてみる。

 あ~……あったかい。これは良いな。

 少し熱めのお風呂が好きな俺にはちょうどよく感じる。

 どれどれ、こっちは……こっちはややぬるめだ。泉質もちょっとヌルついた感じだな。

 こっちはちょっと熱い、川の水を引き入れて冷ましたらちょうどよくなるか?

 その後も手分けして周辺を捜索した結果、二十以上の源泉を発見した。

 成分が強すぎたり有害なものもあったが、必要であればミアガリアが『変質』の力でコントロール可能ということだった。実に有能。炎の系譜の『変質』にはお世話になる機会が多そうだ。

 そして中にはどでかいプールのようなコバルトブルーの温泉も。これは温泉郷の目玉になるんじゃないか?

 

「良さそうな場所だな。ここを建設予定地にしよう。」

「はい。良いと思います。」

「自然の温かいお湯とは驚きましたがとても美しいですね。」

「完成が楽しみです。」


 帰ったら地球に転移して、姉貴と相談だな。

 みんながびっくりするような一大温泉街を作り出してみせるぜ。

 俺は固く心に誓った。

 

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