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190.国交と街道整備

 ラムゼイ公爵との会談が終了し、休憩室へと案内した直後、また誰かがやって来たようだ。

 

 「陛下。次のお客様です。」


 客がいるという応接室に入ると、立派な身なりの恰幅の良い男性と執事っぽい人。そして背筋を伸ばした騎士たちが十人程。

 スラウゼン王国からの使者だと名乗った。

 スラウゼン王国。確かオルテア王国のお隣さんで、同盟関係でもあるんだっけ?

 スラウゼン王国の使者の目的も、オルテア王国とほぼ同じだった。

 こちらもエレメンティオとは友好の一択らしく、スラウゼンと友好した場合のメリットを熱烈にプレゼンしていた。

 なんでも農産物の輸出で栄えている農業大国だとか。質がよく珍しい農産物が手に入るかもしれない。

 というわけで、スラウゼン王国とも国交を結ぶことに。

 内容はオルテア王国とほぼ同じ。相互不可侵条約に通商条約。輸出入の取り決めと街道について。

 一度経験したからか、今回は頭がこんがらがらずトントン拍子で決まっていった。


 それにしても、エレメンティオ、オルテア、スラウゼンがつながったな。

 いっそのこと、三国をまっすぐ横切る高速道路みたいな街道があったら互いの交易がスムーズにいくんじゃないのか?

 ちょうど今は両国の大使がいる。ちょっと提案してみよう。


「おお!ラムゼイ公爵、貴殿も来ていたんですな。」

「互いに考えることは同じですな。」


 ラムゼイ公爵を俺たちの会談場所に呼ぶと、互いに知り合いのようで盛り上がっていた。

 よしよし、仲は悪くなさそうだな。

 早速、さっき思いついた案を話す。


「……ってなわけで、ここからここまで一本の街道を通すって言うのが俺の案なんですが。」

「ほうほう!これはまた面白いですな。」

「こちらとしては願ったり叶ったりでございますな。なにせこのエレメンティオに来るのにも馬車でひと月かかりますから。」

「ではこの街道の案、採用ということでよろしいでしょうか。」


 俺の言葉に、二人とも大きく頷いた。

 

「異論はありませんぞ。我ら三国の輸送に革命が起こりますな。」

「せっかくですから各重要都市を巡って通していくというのは?」

「あんまりあっちこっち行くと、結局輸送が遅れてしまいますから、本線を一本通して各都市からは川の支流のように道を引いていきましょう。」

「なるほどなるほど。となると問題は費用と労働力ですな。」

「大規模な工事になりそうですし、それなりに金がかかることも覚悟せねばなりません。」

「それなんですが、発案者であるエレメンティオに街道の整備は任せていただけませんか?」


 大規模な街道工事を一国が全面負担。

 普通ならありえない状況だ。両国の大使たちも大きく目を見開いている。

 

「なんと!そんなことを引き受けてよろしいのですか?」

「しかし負担が大きいのでは?こちらとしてはありがたいが……」

「勿論タダでは無理です。この街道の利権……通行料をとらせてください。」

 

 ぶっちゃけ街道整備なんざ、うちの国からしたら大した工事じゃない。

 場所と許可さえ下りればシリウスの魔法で一発だからな。

 莫大な費用とやらも無きに等しい。

 ここはエレメンティオとしての力と恩を見せつけ、恩恵にあやかる者たちからは金をとって長期的な利益を出す予定だ。

 うちお得意の「交通ビジネス」だな。

 しかし『通行料』という言葉に、二人は慎重な姿勢を見せる。

 一つ一つは小さな金でも、積み重なれば莫大な金になるからな。

 俺が魔王軍を盾に暴利な通行料を吹っかけるとでも思っているのだろうか。

 

「通行料ですか……それはどのくらいの額を想定しておりますか?」

「金額によってはこちらにとって大損害となります。軽々しく了承はできませんな。」

「では通行料はこれくらいで。通行料の決定権はこちらにありますが、数年に一度の交渉権をお二方が持つこととします。いかがですか?」

「ふむ。悪くないですな。この利便性でこの値段ならそこまで高額とも思いませんし、森を抜ける準備や護衛費に比べたらオルテア王国の利用者にとっても損害にはならんでしょう。むしろ利益の方が多い。」

「失礼な話、街道が通った直後にそちらが通行料を釣り上げても我らは異を唱える権利がある、ということですか。……それならば問題ないでしょう。」


 こうして、三国の交易に加えて各国を最短で横切る高速街道、『三国街道』の建設が決定した。

 魔法の使用許可も得たし、準備ができ次第パパッとやっちゃおう。

 

 せっかく来ていただいた大使だし、めでたく国交と『三国街道』の建設も決定したことだし、今夜は宴だ。

 酒や料理を惜しむことなく出す。うちの国力を示す大事な場でもあるからな。

 スラウゼン王国の使者は作物と料理の質に驚いていた。

 ラムゼイ公爵はヘイディスさん達からの前評判を聞いていたのだろう、そこまで驚きはしなかったが、実際に食べた料理や酒の味に感動していた。


「これは驚きました。農産物が強みだと誇らしげに説いた私がとんだ愚か者に見えますよ。」

「見たこともない調理法と味だが、素晴らしいものだ。この酒も信じられないほど上質な味わい……ぜひうちと取引をお願いしたい。」

「こちらこそ喜んで。御覧の通りうちは作物もそうですが、加工品に自信を持っています。逆に原料となる珍しい物には目がないのでいろいろと仕入れさせてもらいますね。」

「『鉱山の国』に『農業の国』に『加工の国』か……。三国街道もできますし、我らの結束が強まれば民も安泰ですな。」

「ぜひよき友として付き合っていただきたい。よき出会いに感謝を。」


 酒も入って打ち解けた雰囲気でいろいろなことを話せた。

 聞く限りではオルテア王国もスラウゼン王国も平和主義の王様のようだし、国自体も発展している。

 国際的にも影響力を持つ中規模国家が二つも国交を結んでくれたというのも大きい。

 これからやり取りをしていく最初の人間の国としては大当たりなんじゃないだろうか。

 その場の勢いで交易隊の第一陣の出発と取引する物資まで大まかにだが決まってしまった。

 全権委任とはいえ、仕事を一気に進めすぎじゃないのか?

 ま、いいか。大きくて大事なことに限って、意外とこういう酒の席で決まるものなのかもな。


 こうして、上々の成果をあげて人間の国との会談は幕を閉じた。



 

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