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187.人事異動

 祭り中に俺に謁見を申し出てきたのは多岐にわたる種族だった。

 エルフにドワーフ、オリバーたちとは別の部族が点々ばらばらに住んでいたらしい。

 そして兎人族(とじんぞく)を初めとする獣人族。多くは人間の国から逃げ出したものの子孫とかで、コボルトたちほど力も強くないし魔力もない。普通より少し身体能力が高いだけで、能力値はほぼ人間だ。

 そのため力の強い魔物には勝てず、衰退の一途をたどるらしい。

 他には山間にいた巨人族と小人族。

 巨人族は身長三メートルくらい、小人族は一メートルくらい。隣に並ぶと差がすごい。

 他にも様々な種族がこの暗黒の森に暮らしていた。

 彼らの挨拶と献上品を受け取ると同時に、今後の生活や引越しなどの相談もしておいた。


 生活力皆無のエルフたちは街に受けいれ研究職へ。うちで暮らしているエルフたちと比べてやせ細って顔色も悪い。

 きっと研究に夢中でろくに食べてすらいなかったんだろう。能力は高いのにもったいない種族だ。

 ドワーフの里は自治区としている。過度な干渉はせずこれまで通り鍛冶に精を出してもらい、特産品の売買や技術提供を行ってもらう。

 各地に散らばるケット・シーやコボルトたちには街づくりの技術を教え、王都以外の地方都市を開拓してもらうことに。

 種族ごとの特産品のやり取りなんかも出来たら相互に利があるからな。

 国内に住んでいるたくさんのノームたちに話をつけて建築班としてそれぞれの街に行ってもらう。

 

 他にも羊の丘辺りに大規模な牧場を設け、魔豚を初めとするこの国のブランド家畜の育成を始めた。

 ちょうどその辺に住んでいた兎人族(とじんぞく)に役割を任せてある。

 しばらくは飼育係だったコボルトやシンバが住み込みで指南役をする。

 ちなみに魔豚は人間の味に近く抵抗があるということで、人間用に新しく豚を育てることにした。

 イベリコ豚と黒豚のかけあわせで、艶のある真っ黒な豚だ。

 歯切れの良い口当たりと、上質な脂肪と赤身の霜降りバランス、まろやかな脂の甘みが特徴だ。

 これでうちの国にも鶏、豚、牛、羊の四大食肉が揃った。

 食生活が豊かになるのは良い事だ。

 更には羊の丘から南に行った先の水牛の繁殖地の近くで水牛牧場を作り、本格的な酪農を開始する。

 生まれ故郷に近い環境で美味しい牛乳をたくさん出してほしい。

 こちらはロバ耳を持った獣人たちに任せることに。驢人族(ろじんぞく)と言うらしい。

 同じ畜産に携わるお隣さん同士の街だ。仲良く助け合ってやっていってほしい。

 巨人族は土木建築を、小人族は小柄な身体を活かして鉱山での採掘を。

 役割に違いはあれど、同じエレメンティオの国民。みんなが快適に生活できるように技術提供は惜しまない。



 村が国になったということで、新たに国政の組織と人事を考えてみる。

 俺の地球の知識やレティシア達人族の国の政治体制、ダンタリオンの住んでいた魔王国の政治体制を共有し、色々話し合った結果、以下のようになった。


 王:俺

 総務大臣:シリウス

 法務大臣:ババ様

 財務大臣:ジャルグ

 外務大臣:サラ

 教育担当大臣:コボルト長老

 生活担当大臣:アヤナミ

 農林水産大臣:ロベルト

 経済産業大臣:オリバー

 防衛担当大臣:ミアガリア

 情報局:イリューシャ


 まず、この世界ではまだまだ絶対王政が主流なため、全ての最終決定権は俺にある。

 各大臣はあくまで俺のサポートという位置づけだ。

 責任が重くのしかかるな。頑張らないと。


 総務大臣は行政全般を司る。

 特に地方都市の管理や連絡が今の喫緊の課題だな。

 他にもやることはいろいろあるが、シリウスなら難なくこなせると信じている。


 次に、法務。

 国民が増えて多種族が一つの国家を形成する以上、どうしたっていざこざが起きる。

 そのたびに俺に相談して俺が判決を言い渡して……だと時間がいくらあっても足りないし、毎回公平な判決ができるかもわからない。

 だから少しずつではあるが『法』の整備を進めていく。

 どういうことが違法行為で、どんな処罰があるかをしっかりと明文化する。

 担当は皆の知恵袋、ケットシー族のババ様だ。


 次に、財務。徴税と財源の使い道などを提案する。

 ジャルグというのは建国祭の前に挨拶に来ていた集団の一人で、レプラコーンという種族らしい。

 見た目は髭もじゃの身長五十センチくらいの小人だ。ドワーフをさらに小さくして細身にした感じか。

 レプラコーンの特徴は、なんといってもお金が大好き。金目のものに目がない。

 だからなのか、金目の物をかぎつける能力は凄まじく彼らの前では隠し財産など意味をなさない。

 金貨の山を一瞬見ただけで枚数を把握してしまう。

 このように、金に特化した能力を持つ種族なのだ。

 そんな能力を持ち、かつ本人たちも金が大好きということで、挨拶の際に自らこの国の徴税官にと売り込んできた。

 金が好きなあまり横領するとかの心配はないのかと思ったが、彼ら曰く「綺麗な金の流れこそがより金貨を輝かせる」らしい。要は汚職などもってのほかということだ。

 レプラコーンのプライドにかけて横領などしないし国民の脱税も許さないと誓ってくれた。

 横領の心配さえなければこれほど有能な徴税官はいない。そういうわけで財務部門に採用した。


 外務は外交を司る部分だ。

 対人間外交官にレティシアを、対魔族外交官にダンタリオンを、それらを統括する外務大臣にサラを置いた。

 これから忙しくなるであろう部署だ。盤石の配置でやっていこう。


 教育担当はそのまんま。学校長のコボルト長老に就任してもらった。

 子どもは未来の宝だからな。しっかり教育を施していこう。

 目指すは識字率ほぼ百パーセントだ。


 生活担当は、衛生面や医療、食事などに関することだ。

 特にポーションだよりで医療や薬が発展していないこの世界において衛生は最重要課題ともいえる。

 うちもアヤナミや世界樹、エルフたちのおかげで薬は充実しているが、庶民には手が出しにくいお値段だ。

 使わないのが一番。健康で文化的な生活を目指す。アヤナミ、頼んだぞ。


 農林水産大臣はロベルトさん。

 これは村だった時の「畑部門」や「狩り部門」などを統合したものだ。

 トップのロベルトさんの下に、「農業」「畜産」「狩り」「水産」など細かな部署がある。

 生きるためにまず必要な食料を司る部分だから、いろいろ優遇するつもりだ。


 経済産業大臣はオリバーに一任した。

 ここはエルフたちの研究やドワーフたちの道具など、技術や工業に関わるところだ。

 国を発展させ、また交易によって国を潤すためにも重要な部分である。


 防衛担当。所謂軍事だ。

 まずトップが火龍な時点で馬鹿げた戦力である。

 そして龍族四人組による結界。いったい誰が攻略できるだろうか。

 盤石すぎる配置だが、念のため鬼人族をはじめとする防衛チームの戦力強化のために鍛錬は欠かさずにしておこう。

 何度もいうが、そもそもの戦力が馬鹿げているよなぁ……。


 最後に情報局。これは所謂「スパイ」の役割だ。

 国内外の不穏な情報をいち早く仕入れ、手立てを考える。

 レティシア曰くどの国も表には出していないものの、「暗部」として似たような私兵を持っているものらしい。

 おチャラけてはいるが仕事が速くて的確なイリューシャにぴったりだと思う。


 以上が俺たちの国、精霊王国エレメンティオの政治組織だ。

 これから国としてやって行く中で必要に応じて部署を増やしたり、統合したりする予定だ。

 俺は会議室に集まった官僚たちを見て言った。


「最初に言っておくが、俺は領土拡大の野心はない。エレメンティオを建国した時点で、すでに破格の領土を得たと思っている。それよりも、今ある土地の中で国民が幸せに暮らせるようにしたい。貧富の差を最小限に抑え、王都だろうと地方の農村だろうと子どもが等しく教育を受けられる。そんな国にしたいんだ。この国はまだ動き出したばかり、みんなの力が必要だ。俺と一緒に、精霊王国エレメンティオを作り上げていってくれるか?」

「「「「「はい!陛下!」」」」」


 みんな良い顔、良い返事だ。

 まずは目の前のことから一つ一つやっていこう。理想の国を現実のものにするために。

 こうして、精霊王国エレメンティオが国として本格的に動き出した。

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