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186.収束は一気に行われた

「……てかさー、ボク謎なんだけど。」


 唐突に声を発したのは、面白そうに観戦を決め込んでいたエアリス様だ。


「そもそもお前、この国に加護与えてないじゃん。それなのになんでボクらと同じ扱いを受けられると思ったワケ?」


 …………確かに。突然の指摘に場が鎮まる。

 全員の視線がイフリート様に集まる。当のイフリート様もさすがに言葉に詰まった様子だ。


「そ、それはだな、たとえ加護がなかろうと……」

「ボクらはこの国に加護を与えて、国の守り手として龍族まで派遣して、ここに住む人間たちを守ってやってるんだけど、お前なんかしたっけ?」

「なっ!吾輩だってサラマンダーを……」

「その火トカゲたちが厄災から守ってくれるんだ?」

「ぬぅっ……」


 詰め寄られるイフリート様。筋骨隆々の大男が子どもに詰められる姿は見ていて悲しいものがある。

 エアリス様は「はぁ」と息を吐き、ジト目でさらに続ける。


「街の人間たちはさ、ボクたちのこうしたありがたぁーい行為に対して感謝と尊敬の気持ちをもってお供え物やらお祭りやらやってんの。それを火トカゲ二、三人押し付けて同じように敬えだなんて、そういうのずうずうしいって言うんだよ。」


 ぐうの音も出ない正論にさすがのイフリート様もばつが悪そうに小さくなる。

 アクエラ様は今にも噴出しそうなのをこらえるので忙しいのか、扇子で口元を隠したまま肩を震わせ、こっちを見ようとしない。

 ガイアス様に至ってはもう三人のやりとりに飽きたらしく、手酌で日本酒を飲み始めていた。


「なっ……そ、それなら吾輩もこの国に加護を授ける!!」


 元々赤い肌のイフリート様がさらに真っ赤になってそう叫んだ。

 は?え?今なんと?


「おい、そこの人間!お前が確かここの長だろう!?吾輩がありがたくもこの国に加護をつけてやる。そして龍だったか?一人でも二人でも派遣してやろう!それでこの国において吾輩はこやつらと同等!それで文句はなかろう!?」

「え、いや、あの……」


 一気にまくしたてるイフリート様。

 いや待ってくださいよ。急にそんなこと言われても。

 すでにこの村には水・土・風の三つも加護がついてるんだって。

 龍も三体いて、すでに守りは過剰というか、一辺境の国にはありえない状況なんだってば。

 イフリートの提案にNOと即答しない俺が面白くないのか、アクエラ様が再び口をはさむ。


「イフリートよ、勝手なことを言うな。すでにこの土地の守りは万全。妾が加護を授けた時点で敵などおらぬのよ。供え物欲しさに余計なことをしたところで誰もそなたに感謝などしまい。」


 どうだ人間!?とイフリート様が詰め寄ってくる。

 今は炎に包まれた体でもないのに、近寄られると熱気が伝わってきて熱い。

 加護ねぇ……正直別にいらない、と言いたいが。言ったら殺されるだろうな、確実に。

 どっちかというとあなたの行動が厄災級で困ってるんですけど……って言っても殺されるだろうな、確実に。

 なんかもう、いいや。

 俺はイフリート様に向き直った。


「正直、この村は他のお三方のおかげで万全の守りになっています。しかし、これからもあなただけ宴に呼ばず、あなただけ村人から祈りをささげられることもないというのは確かに失礼な話です。それにサラマンダーたちも、イフリート様の像だけがないことを寂しく思っております。ですから、これからはあなた様もここの守護神としてお祀りさせてください。どうかこの村にイフリート様のご加護をお授けくださ」

「よしよく言った!!吾輩の威信にかけて最強の守りをつけてやろう!!!さぁ、神殿に人々を集めるのだ!!!」


 食い気味に来たよ、この方。まったく、なんというか。

 お三方を見ると、アクエラ様は納得のいかない不機嫌な表情だし、エアリス様はしらけ気味だし、ガイアス様は相変わらず興味がなさそうだ。

 ま、こうなってしまったからには、これからは四人で仲良くしてくださいね。精霊様方。









 

 イフリート様の精霊の宣言も無事に終わった。

 流石に燃えたばかりの神殿に人は集められないので、祭り会場での宣言となった。

 あ、ちなみに神殿の後始末は三精霊様に見守られ(睨まれ)ながらイフリート様が責任をもって元通りに戻しておきましたとさ。

 なんだか見てはいけないものを見た気がしたな。どうもあの四人の中では一番立場が弱いっぽい。


 いきなりのことに加えて、大精霊が加護を与えるという貴重な瞬間を目撃したみんなの興奮は言うまでもない。

 オルディス氏も「これは国王に報告をせねば……!」と呟いていた。

 あんまり大事にしないで欲しいんだけどな。

 もうここまで広まったら無理か。せいぜい抑止力になることを祈ろう。


 イフリート様は子龍も呼び出した。

 赤い長髪をポニーテールにした勝ち気そうな美女?美少女?

 ミアガリアというその女性はとにかく武に秀で、最強の護り手となると俺に押し付けてきた。

 確かに女性にしては背も高く筋肉質でしなやかな身体付き、キュッと一文字に結んだ口元は意志の強さを伺わせる。

 見た目はアヤナミとは正反対だな。どちらも美女であるということは共通しているが。

 デスマウンテンでのスヴァローグの戦いぶりを見るにミアガリアの戦闘力にもかなり期待ができる。


「ええと、じゃ、主に軍事担当で。この国の守護を頼む。」

「は!この命に替えても、我が主とこの国をお守り致します!」


 ……結構堅物、そして熱血だ。

 やりすぎないようにしっかり見ておこう。

 せっかく作った国を火の海にされちゃ堪らないからな。


 そして、神殿を燃やした詫びとして、デスマウンテンへの立ち入りを特別に許可された。

 デスマウンテンに眠る資源やそこに住む魔物を自由にして良いと、ただし、最下層へは立ち入り禁止。

 イフリート様と火龍スヴァローグの邪魔をすることは許さないとの事だ。

 立ち入りを許されたのはありがたい。活火山なら資源も豊富に眠っているだろうし。

 まあ、魔物が強すぎるから今すぐ開拓しようとかは思わないけどね。


 こうして、あらゆる意味で大騒ぎだった精霊王国エレメンティオの建国祭もようやく幕を閉じたのだった。





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