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142.結婚式

 その夜、地球に転移した。

 姉貴にメールをする。明日の夕方に飛んできてくれるらしい。


 予告通り、夕方に姉貴は飛んできた。


「素敵な話ね!苦労した二人がやっと結ばれるのね。そして村で最初の結婚式……」


 目を輝かせ、遠くを見つめながら「はぁ……ロマン♡」とおかしなことを言う姉貴。


「それでさ、メールでも言ったけど、婚礼衣装のデザイン案が欲しいんだよ。」

「まっかせて!昨日は寝ずに考えてきたんだから!!」


 そういって紙の束をドサっと置く。紙にはドレスや男性のタキシードのデザインがこれでもかと描かれていた。


「白いシルクの布と金糸、銀糸はあるのよね?じゃあこの王道はやっぱり外せないかな?それとも金糸銀糸を贅沢に使ったこんなドレス……田舎の村風ということも考えてちょっとカジュアルっぽくてもかわいいし……あーどうしよう!迷うわぁ!!!」

「姉貴が着るわけじゃないんだから……」

「馬鹿ね!結婚式で浮かれない女はいないのよ!会ったことないとはいえ陰ながら村づくりや生活に協力している身としては、我が子の晴れ姿を最高のものにしたいのは当然でしょ!?」


 我が子……そこまで思い入れが強いのか。それは知らなかったぞ。

 とはいえ、俺はいくつか指摘を出す。


「あんまり複雑な刺繡とか立体的な縫製とかは無理だと思うぞ。あと二週間くらいで仕上げないといけないからどっちかというとシンプルがいいと思う。」


 その後もあーだこーだ話し、男性版、女性版の合計十枚の図案をもって俺はエルネアに転移した。


 翌日、朝一でテレサに図案を渡す。そこからのテレサたち女性チームの行動は素早かった。

 会場、設営、料理、装飾、式の運営から参列者の配置まで、テレサやエルヴィラそしてサラやレティシアまで一丸となって進めていった。俺はといえば、次々に許可を取りに来る彼女たちにOKサインを出すことくらいしかしていない。

 そして二週間後、鬼人族と俺達初期の移住メンバーが神殿の広間の参列席に集まった。

 他のみんなは後ろから見守っている。


「それでは、これより新郎エルドと新婦ナディアの結婚式を始めます。」


 司会のレティシアの声に合わせ、神殿の広間を腕を組んで歩くエルドとナディア。二人ともタキシードの袖やドレスの胸元に金糸の刺繍があしらわれた美しいドレスを着ていた。グレゴールに作ってもらったというネックレスやイヤリングが天窓からの光を受けてきらりと光る。二人ともよく似合っている。その表情は幸せと気恥ずかしさが混じったような顔だ。参列者は一斉に拍手で迎え、上からはシルフが花びらを落としてくる。

 二人は三精霊とライアの彫像の前で止まった。

 

「では、ライア様のお言葉をお願いいたします。」

「二人は様々な苦難を乗り越え、今ここに結ばれました。この先、どんな未来が二人を待ち受けようと、互いに慈しみ、愛をもって助け合うことを誓いますか?」

「はい、誓います。」

「はい、誓います。」

「それでは二人、手を取って。」


 二人が向かい合い、しっかりと手を繋ぐ。その上から蔦が絡まり合い、二人の手がほどけないように結んだ。


「世界樹の精霊ドライアド、今ここに誕生した新しい夫婦の立会人として、二人が夫婦であることを宣言します!」


 蔦がほどけると同時に、あたりに花が舞った。ライアの魔法だろうか。

 参列者からは「わあっ」と喜びの声が上がる。

 それからはお祭り騒ぎだった。世界樹の広場に移動し、みんなでごちそうを食べ、踊り、歌い、二人の結婚を祝福した。

 

「結婚式は初めて見たけど、テレサが考案したのか?」

「私のやった結婚式と、レティシアやエスメラルダが知っている貴族の結婚式を合わせてみたの。」

「ドレスもよかったよ。二週間でよくあれだけ作れたな。」

「私達が本気を出したら意外とすごいのよ?まあ、あとは質のいいシルクを出してくれる蜘蛛たちのおかげね。」


「他にも色々渡りつけて頑張ったんだから。」と得意げに言う。

 なんでも広場の宴会会場造りをノームたちに依頼し、シルフにお願いして花びらのパフォーマンスを。オンディーヌにはドレスが汚れないように広場や道を綺麗にしてもらったとか。

 精霊たちまで手を回して巻き込むって、女性陣すごいな。

 更には、結婚式の料理にうちの料理チーム、ドレスを着せるのに慣れているティアとティナが当日の着付け、新郎新婦の作法や動き方をエスメラルダが担当したそうな。


「テレサ、エルヴィラ、ありがとう。自分がこんなに素敵な結婚式をあげて、人間や色々な種族にお祝いしてもらえるなんて考えもしなかった。」


 目に涙をためながらナディアが言う。

 エルヴィラはナディアをギュッと抱きしめた。


「おめでとう、ナディア。今までも家族みたいなものだったけど、これからは正真正銘の家族だから。なんでも相談して。」

「ありがとう、エルヴィラ。」


 結婚式を通じて仲良くなったのか、レティシアやエスメラルダを初め移住者たちもすっかり村人と打ち解けたようだ。

 色んな意味で、結婚式をやって良かったな。

 今日は村の歴史の中でも特に印象深い日になった。





 

 ちなみに、婚礼衣装は縫製し直せばサイズ直しは簡単なようで、何パターンか作って村の管理にしたいと服飾組から打診された。

 それはいいけど、違うパターンは他の結婚する新婦ができてから希望を聞いた方が良いんじゃないか?

 そう言うと、「次、結婚する人?」「てか、独身の人、誰?」「独身者同士でお見合いする?」と募り始めた。


 いや、そういうのはのんびり行こうよ。



 

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