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141.いろいろと慌ただしい

ブクマ、評価、ありがとうございます!

楽しんでいただけるように頑張ります!!

 あっという間に、春の二回目の収穫期を迎えた。

 この収穫期から作物たちがどんどん実り秋の終わりまで忙しくなってくる。

 さらに亜麻や綿花、米なども収穫を迎え、畑チームはてんてこ舞いだ。

 助っ人や魔導ゴーレムも導入し、手際よく収穫していく。

 サラ、レティシア、ティア、ティナの記録係は収穫量を計測、記録。後で前年度との比較をするために正確に。

 亜麻と綿花は解され製糸作業へ。テレサ率いる服飾チームも忙しい。十人体制でせっせと糸を紡ぐ。ノームたちに糸車や機織り機を増やしてもらって正解だった。


収穫をしたあとも、土を整えて、休ませて、前回休ませておいた場所は耕して再び種まき。

気がついたら段々と夏の気配を感じるようになっていた。






 蜘蛛たちが子を産んだ。

 春の初めにやってきた四匹のキルスパイダーの子だ。

 ざっと見ただけで四〜五百匹の蜘蛛。全員の性質を調べるのも大変だ。

 その大変さとは裏腹に、パーシヴァルは我が世の春と言わんばかりの浮かれっぷりで糸を採取していった。研究所に持っていく時、一瞬だが糸の束に頬ずりしたのを俺は見逃さなかった。

 ……うん。まあ、良いんだ。研究さえちゃんとやってくれれば、俺は文句は言わない。

 

 そして初夏に入り、二回目の田植えが終わった頃、子蜘蛛たちの糸の研究が終了した。

 総勢、四七六匹。全てをやりきったパーシヴァルは見事な青クマを作っていた。

 今回得た特殊な蜘蛛糸は三種類。

 ゴムのようにビヨンビヨンと伸びる、弾性の強い糸。保温性が高く、ウールのようなやわらかさを持つ糸、暗闇で発光する糸。

 その蜘蛛たちは残し、他の蜘蛛は母親と共に洞窟へ返す。さすがにこの数は転移できないので、蜘蛛たちには街道を進んで自力で帰ってもらう。

 パーシヴァルにはひと足早くアラクネに挨拶に行ってもらう。ついでに手土産も持たせておこう。


 転移魔法で移動は一瞬のため、一時間ほどでパーシヴァルは戻ってきた。

 二メートル以上はあるヘルスパイダーを連れている。

 いきなり現れたからビビったよ。てか、よく転移魔法陣に入ったな。

 アラクネは約束通り妊娠中のヘルスパイダーを派遣してくれたようだ。そして、俺たちに納める税としてシルクの布を二巻。かなりの太巻だ。

 糸じゃなく布。よく織れたなと思ったらどうもシルキィが監督をしていたらしい。

 「ぬるま湯に漬かりきって弱い」なんて言われてたからいじめられてるんじゃないかと心配したが、結構上の立場になってんだな。

 さすがシルキィ。その調子で強くなって、早く帰ってこいよ。

  預けられたシルクの布はテレサに渡しておく。


「シルクって、意外と使い道ないのよね。普段使いするには高級品すぎて。」


 まぁ、そうなるよな。










 

 ここで大ニュース。

 なんと、エルドとナディアが結婚するそうだ。

 正確には結婚したいから許可をくれと俺の元へ二人揃ってやって来た。

 びっくり。君達、いつの間にそんなことになってんの?

 なんでも二人は姉のエルヴィラも含めて小さい頃からの幼なじみで、ずっと一緒にいたらしい。

 くぅ〜!幼なじみで結婚とか、一体どこのラブコメだよ!爆発しろ!!!


 とまぁ、冗談はさておき。俺としては断る理由なんてない。というかむしろなんで俺に許可取りに来た?

 あとから聞くところによると、この世界は結婚すらも領主の許可が必要なんだとか。

 大きな町では領主が直接許可を出すのではなく、役所みたいなところで金を払って結婚許可証を貰う。いわゆる「結婚税」というシステムがあるらしい。

 鬼人の里にはそういうシステムはなかったが、恋バナをしていたテレサがそのシステムを教えたため俺に許可を貰いに来たそうだ。エルヴィラが嬉しそうにそう言っていた。

 というか、機織り小屋はここ数カ月恋愛相談所と化していたらしい。単調作業だから会話も弾むんだと。

 別に仕事中にしゃべるくらいいいけど、こんなビッグニュースをギリギリまで隠しておくんじゃないよ全く。


「そ、そうか。俺は止めないよ。二人とも、幸せにな。」

「ありがとうございます。これも村に受け入れてくださった村長のおかげです。」

「これからもお役に立てるよう、夫婦共々精進します。」


 頭の中パニック状態の俺が言えたのはこれだけだった。

 そして、二人がかえって数分後、「村長!ちょっといいかしら?」とすごい勢いでテレサが入ってきた。


「うわっ、テレサ、どうしたんだ?」

「シルクの使い道が決まったわよ!」

「へ?」

「ナディアたちが結婚するのは聞いたでしょう?」

「ああ、たった今な。本当、びっくりしたよ。」

「だったら話が早いわ。シルクの使い道、これで婚礼衣装を作るの!!」

「婚礼衣装?」


 鬼人族は今まで人里から隠れるように過ごしていたため、綺麗な服など無縁の生活をしていた。当然、結婚式などもない。内輪で祝福して終わりだ。

 だったらせめて、この村では種族関係なく結婚式をしたらいいのではないか。

 テレサの訴えはそういうことだった。


「もちろん、私達農民も豪華なドレスなんてものはなかったけれど、それでも近所の娘たちでいろいろ持ち寄って、花なんか飾ったりして祝ったものよ。私が結婚した時は……」

「わ、わかった。婚礼衣装だな。いいと思うぞ。」


 テレサがうっとりして語りだす。このままだと止まりそうにないので早々にストップをかける。


「それで、いつ結婚式をするんだ?」

「衣装を作るのに二週間は欲しいから、そのくらいかしら。」

「わかった。こっちからも準備できることがあれば教えてくれ。」

「ありがとう。あと、いつだか見せてくれた服のデザイン、あれ見せてくれない?ドレスの参考にしたくって。」

「ああ、わかった。……なあ、それ、明日でもいいか?」

「へ?いいわよ。でもなるべく早くね。」

「ああ、明日には必ず渡すよ。」

「了解!じゃ、また相談するわね。」


 スキップするような足取りでテレサは出ていった。

 ふぅ……なんか、いろいろ慌ただしいな。


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