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138.村へようこそ

日刊ファンタジーBEST300、166位にランクインしました!

高評価つけてくださる皆様、ありがとうございます!!

ブクマも嬉しいです〜!これからも応援宜しくお願いします!!

 村の入り口手前に到着。

 というか、シリウスがこんなに大勢を転移させられるなんて知らなかったんだが。

 「龍ですから」?ああ、そうですか。たしかに、エルフに使える魔法を龍が使えないわけがない。

 俺の認識が甘かった。アヤナミも当然使えるそうだ。


 村に入る前に、まずはその首輪を取らないとな。

 重そうな鉄の首輪は悪目立ちしてしょうがないし、何より邪魔だろう。

 シリウスとアヤナミがそれぞれ外しにかかる。二人が首輪をつかむと、まるで繊細な飴細工で出来ているかのようにパキンッと砕けてしまった。

 ……一応だけど、それ、魔法でやってるんだよな?まさか龍族の握力とか言わないよな?

 可憐な美少女のアヤナミが握力で鉄を砕くなんて思いたくない。


 鉄の首輪も外れ、これで見た目で奴隷だとわかるものはなくなった。

 奴隷達も頭を下げて何度も礼を言う。

 ……もう奴隷扱いはしなくていいんだから、「奴隷達」っていうのも変だよな。

 そんなわけで、新しい移住者達には次のステップを。


「はい。終わりました。」


 アヤナミの手から出ていた柔らかな光がふっと消える。移住者達には、村に入る前に治癒魔法をかけさせてもらった。

 なんか咳をしてる人がいたとか言っていたし、変な病原菌を村に持ち込まれちゃ困るしね。

 という訳で追加として『浄化』魔法で体と服も綺麗に。『洗浄』よりも強力で、菌やウイルスまで完全に除去できる。うん、これで良し。


「あらためて、村へようこそ!」











 村の入り口に着くと、門番の二人と、サラが出迎えてくれた。

 いきなりの鬼人とエルフに移住者達はかなりビビっていいたが、俺が普通に話しているのを見て安心してくれたらしい。

 そのまま村を案内する。俺も久しぶりに村の様子を見ておきたかったので同行することに。


「これは……」

「なんて綺麗……」

「森の中のはずなのに……」


 綺麗に整えられた石畳の道や丈夫で美しい建物が並ぶメインストリートを歩くと、移住者のみんなから感嘆の声が聞こえた。


「不思議です……町の規模としては大きくないのに、使われている技術や整備のされ方はまるで王都を見ているかのよう……。」

「私も様々な町にや村について学びましたが、このような町は初めてです。」


 レティシアとエスメラルダもエルフ達の研究所やドワーフの工房を見ながらそうつぶやく。

 まあ、技術に関しては地球の技術をバンバン取り入れているからね。王都並み、というか、王都にも負けないと思う。

 そんなことは口が裂けても言わないけど。


「さっきも言ったけど、ここは人間だけじゃない、鬼人やエルフやドワーフ、コボルトやケットシー、色々な種族が暮らしているんだ。それぞれの種族の得意なことを組み合わせて、今の村が出来上がったんだよ。まあ、まだ作っている最中なんだけど。」

「多種族が共生することで、暮らしが豊かになる……屋敷にいた頃は考えもしませんでしたわ。」

「コンラッドレ王国では異種族は人にあらずですから、無理はありません。私も初めにオルテア王国に着いたときは驚きました。」


 どうやらコンラッドレ王国はかなり異種族に対して厳しい扱いをしてるみたいだな。

 レティシアや世話係の三人が柔軟な考え方をしてくれて良かった。勿論他の文化をなかなか受け入れられない、カルチャーショックというのは誰にでもあることだけど、この村で暮らす以上それを認めるわけにはいかないからな。

 

 食堂や公衆浴場などみんながよく使う主要な施設を案内しながらメインストリートを進んで広場に着く。

 世界樹とライアのことを紹介したらみんな腰を抜かさんばかりに驚いていた。そりゃそうか、この世界では伝説の樹らしいし。

 ライアに関しては、気持ちはわかるけどあんまり拝み倒さずに仲間として接してやってと伝えた。……移住者の反応を見る限り難しそうではあるが。


 次は住居。ノーム達に頼んで新しく作ってもらったエリアに案内する。

 長屋と家族用の戸建て。長屋は六畳ほどのワンルーム。小さめだけどキッチン・トイレ付。大学の学生アパートみたいなのをイメージして注文した。戸建ては四人家族を想定して部屋数を増やして広めの作りに。こちらもキッチン・トイレ付。

 契約書を見た限り単身者が圧倒的に多い。長屋の部屋数、足りるかな?一応ノーム達は二棟目を作ってくれているけど、まだ未完成だ。

 移住者達と話し合った結果、農民の三人家族、食堂経営をしていた夫婦、そしてレティシア達四人は家族用の戸建てに住むことになった。レティシア達は家族ではないが、屋敷でいつも一緒だったから問題ないと言う。まあ、そのうちまた変わるかもしれないけど、その時はよろしくとだけ言っておいた。

 部屋の使い方なんかを説明し、とりあえずいったん外へ。くつろいでもらう前にやることはたくさんある。

 次は畑の方へ案内する。ちょうど俺がキークスに行っている間に収穫を迎えたらしく、大勢の人が忙しそうに動き回っていた。


「おーい!ただいま!!」

「村長だ!」

「村長、おかえりなさい!」

「おかえり村長ー!」


 声をかけるとあちこちから返事があった。作業を中断させて申し訳ないので「俺に構わず続けて」とジェスチャーで伝える。

 見事に育った畑、そして早すぎる収穫の時期にみんな、特に農民出身の移住者達は口をあんぐり開けている。


「こ、これは一体どういうことでしょう……?」

「世界樹の加護のおかげで、ここの作物は成長が早いんだ。ああ、あと水と大地の精霊の加護も受けてるから。」

「精霊!?!?!?」

「……村の外の人には内緒だけど、うちの村は水の大精霊アクエラ様と、大地の大精霊ガイアス様の加護を受けてるんだ。あとで神殿にも案内するから、みんなもよくお祈りしておいて。」


 俺の爆弾発言に口をパクパクして驚いているもの、おかしなものでも見るかのように眉を顰めるもの、感嘆の声を漏らしたまま硬直するもの。様々反応はあったが、案内はまだ続くので現実世界に帰ってきてもらう。

 畑の管理者でもあるロベルトさんを紹介し、果樹園やハーブエリアなども見て次へ。

 保管庫にはたくさんの鬼人やエルフが出入りしていた。ここもよく出入りする場所なので使い方などを教えておく。

 まあわからなかったらその辺の住人に遠慮なく聞くといいよ。

 氷を張った保管庫や冷凍庫に、「このような仕掛けが……素晴らしい発想です。」とレティシアが感動していた。なんでも食料の長期保存に課題があり、農民は半分腐った麦や豆を食べているなんてこともあったらしい。貴族の屋敷では同じような貯蔵庫があったかもしれないが、令嬢であるレティシアが裏方のそんな事情を知る機会など当然あるはずがない。


「私も授業の中で学んだだけなので詳しくは知りませんが……。」

「ああ、お嬢ちゃんの言うことは正しいよ。あたしらが新鮮な食べ物を食べられるのなんざ、収穫の時くらいだ。ま、その収穫の時ですら、ほとんどが税として取り上げられちまうけどね。」

「生きていくには腐ってても食っていかねえと仕方ねえからな。こんな氷室も、水魔法の祝福者がいなけりゃ作りようがねぇ。夢のまた夢さ。」


 ……本当に厳しい世界で生きてきたんだな。これからは美味いものをたらふく食わせてやろう。

 ちょうど明日は収穫祭だ。移住者達の歓迎会もかねて盛大にやらねば。


 最後に俺の屋敷と神殿を案内する。といっても屋敷は入り口とみんながよく集まる大食堂だけ。

 丘の下の建物とは一線を画す石造りの荘厳な屋敷に圧倒される面々。その後も何かしらにつけて驚いていた。改めて、うちのノーム達とドワーフ職人集団のすごさを実感。

 神殿に案内する。真っ白な大理石の神殿と美しい内装や彫像に移住者達が固まったのは言うまでもない。

 みんな床を汚さないように恐る恐る歩き、繊細な彫刻や調度品を壊さないよう細心の注意を払って触らないようにしている。


「これほどまでに美しい神殿があるなんて……世の中には私の知らないことがたくさんありますわ……!」

「私も知りませんでしたよ。教育者としてまだまだ勉強不足だったようです。」


 コンラッドレ王国は水の大精霊であるアクエラ様を信仰しているらしい。向こうでは”水の女神”と呼ばれているらしいが。……そういえばナントカ子爵もそんなことを喚き散らしていたような。あれ、本当だったんだ。

 みんな三精霊の像の前に跪き、熱心に祈りを捧げる。俺も一緒に祈った。

 この移住者達が幸せに暮らし、この村がさらに発展しますよう、どうか見守ってください。

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