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130.キメラ効果は抜群だ

 本格的に暖かくなり、春の陽気を肌で感じる今日この頃。


 オルディス商会の商隊がやってきた。

 隊長はもちろんヘイディスさん。下働きのカストルとポルコも、護衛の『暁』の皆さんも一緒だ。

 サラがヘイディスさん達を館に案内し、俺は応接室で出迎える。


「お久しぶりです、ヘイディスさん。お変わりありませんか?」

「ご無沙汰しております。いやあ、キメラの買取ですが、なかなか大変なことになりましたよ。」


 なんでもオルテア王国でのキメラの討伐自体が百五十年振りらしく、王都に呼び出されたらしい。毛皮と頭は国王に献上され、他の素材も一瞬で売れてしまったとか。

 聞くだけで大変そうな話だが、当のヘイディスさんは「おかげ様で一稼ぎ出来ましたし、王都でもちょっと知られた顔になりましたよ。いやあこれもケイさんのおかげです。」とニコニコ顔だ。さすが商人、強かさと胆力が俺とは違う。


「ご注文の品物、しっかり持ってきましたよ。」

「ありがとうございます。」


 ヘイディスさんが次々と商品を並べていく。

 今回注文したのは大量の羊皮紙とペン、インク。そして様々な種類の本だ。


「学校を始めるんでしたっけ?でしたら紙はこちらの普段使いにピッタリな普通羊皮紙、ペンとインクもあまり値の張らないこういったタイプがよろしいかと……。」

「ほうほう。……良いですね。ではこちらをあるだけ全部下さい。」


 ヘイディスさんの丁寧な説明を聴きながら欲しい商品を大量買いしていく。次に来るのは数ヶ月先だろうからな。買える時にまとめ買いしておかないと。


「あとは本でしたね。まずは読み書き算術の教本。それと子ども向けの本を適当にということで、私の独断ではありますが色々選んで来ました。」


 教本は以前キークスに行った時にゼノが買っていたのと同じようなもので、子ども向けの本は昔の物語を集めた物語集や小さな教訓を交えた寓話集など、子どもが興味を持ちそうな内容だ。


「本の内容も良いですね。選ぶの大変だったでしょう?」

「いやあ、私が子どもの時によく読んだ本達を中心に選んでみました。久しぶりに手に取ると懐かしいですね。」


 照れたように頬を搔くヘイディスさん。

 当然本も全てお買い上げだ。


 あとは魔道具のなかで、侵入者感知の呼び鈴を買ってみた。村の門や俺の館、畑の入口などに取り付けようと思う。

魔物や野生動物が入り込んでもすぐにわかるし、俺に用がある時なんかも呼び鈴で呼んでもらえたらすぐに行けるしね。


 欲しいものを選んで品物をどっさり渡されたら、代金を支払う。

 荷馬車一杯の紙とペン、そして高額な本ということで今回も大きな金額になった。

 次はこっちが提供する番だ。

 まず、エルフ特製ポーションとヒールポーション、それぞれ下級~上級まで大量に。さらに身体能力向上薬や魔力向上薬、体力回復薬、魔力回復薬なども買い取ってもらえた。

 身体能力向上薬や魔力向上薬は冒険者にかなり人気らしく、オルテア王国でも作ってはいるがエルフ製にはかなわないらしい。

 体力回復薬や魔力回復薬、これは村ではオンディーヌやアヤナミの疲労回復水と同じような効果を持つ薬だが、オンディーヌ達の魔法一発で作れる疲労回復水に比べ調合が複雑だ。

 村では疲労回復水の方を使っているからエルフ達の薬はあまり使わない。

 さすがに精霊や龍の魔法を他国に簡単に渡すのも良くないかなと思ったので、エルフ達の薬を対外向けに、オンディーヌ達の魔法水を村内向けにすることにしたのだ。

 とはいえ、働く者がエネルギーチャージを求めるのはどこの世界でも共通。前回試しに売ってみたら飛ぶように売れたため、ぜひ今回もということだ。


 次に、前回の約束でもあったジークベルトの工芸品。美しい細工のされたランタンや香炉、絶妙な曲線の器や水差しなど、ジークの工房に眠っていた工芸品を並べると、ヘイディスさんは「ほう……」とため息をついて見とれている。

 ついでにグレゴールの宝飾品も出してみた。繊細な細工の施された指輪やブローチ。こちらもため息が出るほど美しい仕上がりだ。……残念ながら、この村で宝飾品を身に着けるものはいないが。


「いやはや……改めて見ても素晴らしいもの達ばかりです。そこら辺の工芸品や宝飾品とは格が違います。すべて、買わせてください。」

「ははは、ジーク達にも伝えておきますね。あとこれ。」

「おおお!例のガラス鏡ですか!!ありがとうございます!」


 ジーク特製のガラス鏡。冬の間に何枚か作ってくれたものだ。いくつかは村の施設に取り付け、今回は三枚を納品する。

 ヘイディスさんは恭しく鏡を受け取ると、角度を変えて反射させたり、のぞき込んだりしてすっかり夢中だ。


「素晴らしい……どうやったらこのように光を反射するのでしょう……?」

「俺も詳しくは知りませんけど、一部にミスリルを使っているみたいですよ。」

「ミスリルですか!それはまた貴重な……相応のお値段はつけさせていただきますね。」


 その他、いつもの作物達を木箱数箱分買っていった。

 金貨のタワーを数えて間違いなく代金を受け取る。今回は魔物の買取こそなかったが、ドワーフの工芸品や宝飾品が一つ金貨百枚越え、下手をすると金貨五百枚越えで売れたこと、鏡の代金がとんでもないことになったことなどがあり、前回に負けず劣らずな金額になってしまった。

 なんかこっちばかり儲けさせてもらって申し訳ない。


「そうだ!ケイさん、これをお渡ししておかねば……。」


 そういってオルディスさんが魔法収納から取り出したのは、恐ろしげなライオンとヤギの頭を持つ巨大な首――キメラだ。

 そういえばそんなんあったな。魔王から貰った記念に頭の一つを剥製に加工してもらってたんだった。

 どうぞ、と渡され受け取る。中身がただの詰め物になった分ずいぶんと軽くなったが、その迫力は健在だ。


「あはは……ありがとうございます。」

「キメラの件で王都に行く機会があったので、どうせならと王都の貴族にも評判の良い職人に仕上げてもらいました。いやあ、魔法収納に保管しているとはいえ、運ぶのに冷や冷やしましたよ。」


 確かにお渡ししましたよ、と念を押される。代金を支払おうと思ったが、断られてしまった。

「キメラ関連でうちの懐は温まりましたので、これ以上は逆に申し訳ないです。」とのこと。

 どうやら俺が想像している以上にキメラの効果はすさまじかったようだ。


 その後、ヘイディスさんはいつもの宿に泊まった。

 新しくできた公衆浴場にヘイディスさんをはじめみんな驚いていたのは言うまでもない。


 キメラはシリウスに「飾っといてくれ」と頼むと、ギャラリーの入り口――ホールから階段を上ってすぐのところに飾られた。

 …………いや、階段上るたびに毎回目が合うんですけど。怖えよ。


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