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129.そんな仕組み初めて知った

 アラクネを俺の館の方に案内する。

 村人達はいきなり現れた蜘蛛人間を見て「ヒッ!」と小さく悲鳴をあげて怯えていた。

 無理もないよな。俺だっていきなりこんなのと出くわしたら悲鳴をあげて腰抜かすと思う。

 そそくさと逃げる村人達。うん、そっちの方が俺もいちいち説明せずに済んで都合がいいから止めはしない。

 しかし、それ以上にビビってるのがいた。

 俺とシリウスに挟まれて歩くアラクネ本人だ。

 当たりを見回しては、ブツブツとつぶやき、どんどん縮こまっていく。


「なっ!?この土地……まさか……いやそんなはずは……」


「どうしたんだ?」

「こ、こ、この地は……大精霊の加護を受けているのか?」

「あ、うん。水と大地の加護を受けてるよ。あ、そっかアラクネ達は大地の系譜だって言ってたよな。後で神殿見に行く?」


 大地の系譜だから、ガイアス様の像に挨拶したいのかもしれない。

 そう思って提案したのだが。


「すみませんでしたぁっ!!!!」


 八本の足を器用に折りたたみ、出来る限りコンパクトな姿勢で俺に跪くアラクネ。

 え?え?ナニコレ?

 ってか、この構図見たことあるんですけど。


「ど、どうした?」

「地龍を従えている時点でまさかとは思っていましたが、大地の精霊に加え水の精霊とも懇意にしているとは……!知らぬ事とはいえ、とんでもない無礼を……お許しください!!」

「いや、あの、とりあえず頭上げて……」

「我ら蜘蛛の一族、貴方様の配下としてお役に立ちます!どうか……」

「だからぁ……」


 やり取りすること数分。ようやくアラクネが落ち着いてくれた。

 なんでも加護を受けるというのは単に土地が豊かになるというだけでなく、「これは大精霊である私のお気に入りだからね」という、ある意味マーキングのようなものらしい。

 「大精霊(神)のお気に入り」に手を出すことは文字通り神への反逆、敵対行為だ。

 さらにこの土地は水と大地の二つの加護を受けており、その土地や土地の主に牙を剥く行為は大精霊二人を相手に喧嘩を売る行為に等しいらしい。

 ……そんな仕組み初めて知ったんですけど。アクエラ様もガイアス様も、そんな大事なことは前もってしっかりと教えておいて欲しい。


 というわけで、アラクネは俺に対する態度を省みて青ざめているというわけだ。

 んで、配下に加わるから許して欲しい(ついでに配下に加わるからなんかあった時守って欲しい)と言っているわけね。


 別にアラクネ達に危害を加えようとは思わないし、今までの態度も特に何とも思っちゃいない。

 むしろへりくだり過ぎている方がやりにくいからやめて欲しいんだけど。

 互いに手を出さないことも以前取り決めているし、今後も研究に協力してくれたら俺はなんにも言わないよ。


 そう言ったら、時間はかかったものの納得して貰えた。

 と言いつつ、魔物や魔族は序列を結構気にするらしく、アラクネ以下アラクネ一族は俺の配下ということに。

 今後は洞窟内でもシルクを生産し、一定量を納品してくれることになった。

 あとは必要な時には兵を出して協力すると言ってくれたが、まあそんなことにはならないように祈っておく。

 

 配下に下ったので俺の言うことは従わねばならないらしく、パーシヴァルはこれからもアラクネに逢いに行くことができるようになった。

 ただし、いつでもOKにしてしまうと四六時中入り浸ってアラクネを質問攻めにしかねないので、週に一回、一時間以内という約束も作る。

 さすがに四六時中張り付かれたらウザイだろうしね。アラクネが可哀想なので予防線を張っておかないと。


 アラクネは「配下になったのだから肉はもういい。むしろ申し訳なかった。」と言っていたが、せっかくここまできたなら食べていきなよ、ってことでアヤナミに料理してもらう。

 館の大食堂にはオルトロスのステーキやロースト、ヘルチキン(鬼人が狩ってきたデカいニワトリだ)のトマト煮、あとは果物や酒も出す。

 調理された肉を食べるのは初めてらしく、美味い美味いといいながら頬張っていた。

 酒もいける口で、ビールもワインも美味そうに飲む。

 すっかり上機嫌になったアラクネは、洞窟では話さなかった自身のことを話し始めた。


 アラクネは大地の大精霊ガイアス様によって作られた魔物で、蜘蛛系の魔物達の始祖に当たるという。蜘蛛系の魔物はシルクスパイダー系の他にもいくつかいるらしく、それぞれ独自進化を遂げているらしい。

 アラクネ自身も最初はキルスパイダーの生まれだったようで、そこから進化を繰り返してデーモンスパイダーに。そこで打ち止めかと思っていたら、特殊進化でアラクネとして誕生したらしい。

 アラクネ種となる個体は通常ならデーモンスパイダーではなくアラーネアという特殊個体になり、そこからアラクネになるものなのだが、彼女は特殊な例なのだという。

 先代蜘蛛の王を倒してトップに君臨したのがおよそ千年前との事だ。

 途方もない時間だな。パーシヴァルのメモの手が止まらない。

 アラクネ自身の戦闘力については、まず色々な種類の蜘蛛糸で敵を絡めとったり、切り刻んだり、足止めをしたり出来る。さらに土魔法も使えるらしく、洞窟や地面に接していれば大抵の魔物には勝てるらしい。特に洞窟内は蜘蛛糸も自由に操れる、地面の土や岩も自由に操れるということで絶好のフィールドだとか。

 聞けば聞くほど、チート級の魔物だよな。

 間違っても敵対しなくて良かったよ。


 色々聞いているうちに時間が経ってしまったので今日はこの辺で。続きはパーシヴァルが聞きに行ってくれるだろう。

 帰りはアラクネも転移魔法陣で帰っていった。使い方を教えたら自力で帰れてしまったところを見ると、少なくともエルフくらいの魔力はあるってことか。

 なかなか恐ろしい相手を配下にしてしまった。

 ま、敵にすると怖くても味方であればとても頼もしいし、これでいいか。


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