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128.再会と魔物の客人

 しばらく待っていると、デーモンスパイダー達が戻ってきた。

 五匹のキルスパイダーを連れている。

 そのうち一匹を見て、フランカの顔がパッと明るくなった。


「シルキィ!!」


 蜘蛛達に駆け寄るフランカ。恐ろしげなデーモンスパイダーに近づいていくことを一瞬不安に思ったりもしたが、アラクネも見ているしたぶん大丈夫だろう。

 デーモンスパイダーがフランカに手を出したりなんかしたら、うちのシリウスさんが黙っていませんからね。

 シルキィもフランカの方に走り寄り、フランカはシルキィをぎゅっと抱きしめた。


「元気だった?心配してたんだよ?ごはんはちゃんと食べてる?」


 その後も俺には聞き取れないが、シルキィといろいろと話しているのだろう。相槌をうったり語り掛けたりする声が聞こえた。

 パーシヴァルは自分も混ぜてほしそうに見ていたが、仲良しの友達との久しぶりの再会だ。水を差したりしないように言い聞かせる。

 

「この四匹がそう?」

「そうだ。こやつらを連れて行くといい。あと、来るなら夏の初めごろにまた来い。そうすればヘルスパイダーを派遣できる。」

「わかった。ありがとう。」

「あの、アラクネ様……、お聞きしてもよろしいでしょうか?」


 意を決したように会話に入って来たのはパーシヴァルだ。

 アラクネはいかにも面倒そうな不機嫌な顔をしたが、シリウスや俺の手前無下にもできないと思ったのか、しぶしぶ答えた。


「なんだエルフ。」

「私は長年シルクスパイダーとその系列について研究を続けてまいりました。彼らは実に素晴らしい生き物で――」

「前置きはいい、聞きたいこととはなんだ。」

「……アラクネ様の存在は、これまで伝説上の生き物で存在しないと考えられてきました。ですので、よかったらあなたのことを教えていただきたい。いつから存在し、どういった能力があるのか。」

「……話せば長くなるが千年以上は生きている。ここにいるすべての蜘蛛は私の子孫だ。お前を一瞬で屠るのに十分な能力は秘めている。――今教えてやるのはこれだけだ。」

「あの、蜘蛛達の糸の能力について――」

「聞こえなかったか?教えてやるのはここまでだ。そもそも、一介の魔族もどきがこのアラクネと気安く話せると思うな。」

「…………。」

 

 あらら、拒絶されてしまった。

 ま、気位が高そうではあるし、そんな気はしていたよ。俺と話しているのもたぶん「地龍の主だから」だろうしな。

 フランカがもう少し大きくなれば通訳というか、交渉役になってくれそうな気はするんだけど。

 それまで数年間やきもきするのはちとかわいそうな気もする。

 村としても、蜘蛛達の研究が進むのは有難いことではあるし。


「あのさ、アラクネ、たまにでいいから、パーシヴァルの質問に答えてやってくれない?」

「エルフに話すことなど何もない。」

「そういわずに、質問に答えるだけでいいからさ。」

「……」

「じゃあ、なんかいっこだけ願いを聞いてやるよ。困ってることとか。だから、な?」

「願いだと……ふむ。そうだな、強いて言えば……地上の動物の肉が食べたい。」

「え、そんなんでいいのか?」


 話によると、アラクネは全ての蜘蛛の始祖として何百年もの間洞窟内の地下で過ごしてきた。

 洞窟内にも魔物はかなり住んでいて食べ物に困ることはないし、洞窟周辺であればしもべ達が狩ってきたのを食べることもある。

 しかしたまには地上の、それも洞窟周辺にはいない種類の肉が食べたいとのことだ。


「だったら、そこのお土産、地上のシカとかウサギとかだけど。」

「それくらいならしもべ達で狩れる。せっかくならもっと珍しいものが良い。」

「じゃあさ、一回うちの村、来る?」


 村に来ればシカやウサギは勿論、クマに狐に、名前の知らない魔物、あとオルトロスもあるな。

 暗い洞窟にばかりいても健康に悪そうだし、たまには外に出てみては?

 アラクネはしばらく考えていたが、「……よかろう。」と条件を飲んだ。


 こうして、蜘蛛の女王アラクネが村に来るようになった。

 シルキィどころじゃない魔物を村に招き入れるわけだけど、シリウスやアヤナミもいるし、大丈夫だよな?


 そうと決まれば早速帰ろう。

 アラクネの許可を取り、この階にも『転移魔法陣』を設置することになった。

 エレベーターで降りた場所辺りに、エルフ研究チームが魔法陣を書いていく。


「シルキィ、まだ帰らないの?」

「キィ。」

「もうシルキィは強くなったんじゃないの?」

「キィキィ。」

「……そっか……また会えるよね?」

「キィ、キィ。」

「フランカもたくさんお勉強して、大人のお手伝いもするからね。一緒に頑張ろうね。」

「キィ。」


 どうやらシルキィはいまだに帰るつもりがないらしい。

 フランカは名残惜しそうにシルキィを抱いていたが、ゆっくりとその手を放し、俺達の方にやって来た。

 ……今度は泣かなかったな。

 フランカもシルキィも、以前よりもずっと強くなっているということだろう。身体も、心も。


 転移魔法陣が完成し、村に帰ることに。

 エルフ達は五人一緒に派遣の蜘蛛達と転移。俺とシリウス、フランカ、アラクネが一緒に転移。

 シリウスの強大な魔力のおかげで難なく魔法陣を使えた。足元が一瞬淡い金色に光り、俺達は村の入り口に立っていた。


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