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125.ついに完成した

ブクマが200件を越えました!!いつも応援ありがとうございます!

まだの方もぜひお願いします!

 冬の間は畑仕事がない分、村人は滞っていた他の仕事に当たる。

 具体的には、秋までに処理しきれなかった綿花や亜麻を紡いで糸や布にしたり、ウールから毛糸を作ったり、鉱山から取れた鉱石を加工しやすいようにインゴットにしたり。

 エルフたちの研究も冬が繁忙期だ。毎日研究室に籠ってはそれぞれの研究のさらなる発展のために頑張っている。

 あくまでも無理のない範囲でな。食事と睡眠はきちんと摂ること。これはエルフたちを受け入れる時の条件だ。

 研究に夢中になって、つい疎かにしがちな者もいるが、オリバーやサラが見回りをして声をかけているとか。


 そのおかげもあって、この春とうとうアレが完成した。


「ついに出来ました!村長!『転移魔法陣』です!」


 魔法研究の第一人者、ベティが息を切らして報告してきた。

 転移魔法陣は、去年からエルフ魔法研究班が最大の研究テーマとして掲げてきたものだ。

 『転移の水盆』を高性能化したもので、物は勿論生き物を送ることだってできる。

 さっそく研究所に行って見ると、直径二メートルほどの魔法陣が二つあった。

 魔法陣には複雑な文様が描かれており、これが魔法を発動する術式なのだという。


「試してみるので見ててください。」


 そう言って、同じ研究チームのモーリスという男性エルフが魔法陣の中に立つ。すると一瞬だけ魔法陣が淡い金色に光り、そしてモーリスの身体は隣にあるもう一つの魔法陣に移動していた。

 おお、まさに瞬間移動。無駄のないスマートな動きだ。


「どうですか、村長?」

「すごいな。本当に一瞬で……身体とかは何ともないのか?」

「はい、全く問題ありません。」

「ちなみにですね……」


 今度はモーリスの隣にロジェが立つ。手には紙やペンなどを山のように抱えている。

 再び魔法陣が光り、二人はまた隣の魔法陣へ。


「このように、複数人を一気に転移させることもできますし、物を持っていても残らず一緒に転移させることができるんです!」

「これで遠くの移動が大分時間短縮になりますよ!」


 時間短縮なんてものじゃない。革新的な技術だと思う。

 これを設置できれば人の移動がずいぶん楽になるな。森の木の実の群生地とか、海で塩を作る時とか。

 使い道は山のようにありそうだ。


「これ、魔力はどうなっているんだ?」

「そこが少し問題でして……消費魔力がかなり多く、我々エルフ族は難なく使えるんですが、魔力を持たない人間が使うにはちょっと……転移するもののうち、一人でも魔力量の高い者がいれば問題ないのですが……」


 ロジェが困ったように言う。


「ちなみにケットシー族に実験に協力してもらったところ、転移後の疲労度なども鑑みた結果一人ではギリギリ転移不可能でした。二人分の魔力を合わせれば容易です。」

「魔石と結びつけることも考えていますがかなり大きな魔石を使うことになりそうです。」


 ケットシーが二人いないと発動できない魔法って、かなり高度だな。

 俺は多分大丈夫だろう。龍二体分の魔力があるから。

 でも、そうすると誰もが自由にというわけにはいかなそうだ。


「いや、今の段階でも十分便利だよ。この魔法陣を数か所設置して、とりあえず使ってみよう。あと、魔石は遠慮せず使ってくれていい。これは村の人間向けにして、売るようには考えてないから。そんなにガンガン消耗するもんでもないだろ?」

「そうですね。魔石の大きさや質にもよりますが、十年で魔石を交換して使い続けられることを今の目標にしています。」

「この村産の魔石なら質も申し分ないでしょうしね。」

「これからも研究を続けます!」

「そうしてくれ。期待してるよ。」



 それからエルフたちにはいくつかの場所に魔法陣の設置をしてもらった。

 設置をするためには一度その場所に行かなければならないし、魔法陣の設置は四人そろっていないとできないというので時間はかかるが、少しずつ着実に進めてくれた。

 魔法陣は村の入り口、周辺の森に数か所ある木の実の群生地にそれぞれ一つずつ、東の海辺、キノコの群生地、川辺の魚獲りスポット近く、オリーブの林などに設置した。

 ゼノの正確な地図のおかげでエルフたちも迷わずに行くことができたと喜んでいたよ。

 魔法陣自体は使うとき以外そこまで目立つ色ではないし、エルフくらいの魔力の持ち主でないと操れないから、そこら辺の人間や魔物がフラッとやってくるなんてこともないだろう。


 転移魔法陣のおかげで、森の採集が格段にはかどるようになった。

 今まで移動にかけていた時間を一瞬で終わらせることができるようになったんだからな。

 魔法袋も持っていけば木の実やキノコも採り放題。これをチート級と言わずして何と言おう。

 何よりありがたかったのが、塩の採取が安定したことだ。エルフやケットシーがいれば他の人員も連れていけるので、手の空いているものを交代で派遣して塩の確保に努めた。

 ついでに海産物も。森の中の村だが、昆布だしのきいたみそ汁を毎日のように飲めるようになったことは有難い。

 ゆくゆくは漁業なんかにも手を出してみようかな。

 

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