124.学校と公衆浴場
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嬉しくて震えが……。
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これからも、「余命半年のフライング開拓〜来世の俺の為に神の力で全力チート村づくり〜」をよろしくお願いします!!
畑を進めている間、ノームたちは学校と公衆浴場の建設に取り掛かった。
トウリョウと大きさや欲しい設備について相談する。
まず学校。
学校と言っても今のところ子どもの数は三十人弱。小さな学校だ。
とはいえ、これから先子どもの数も増えていくだろう、部屋数は余裕を持って、敷地も大きめに取っておく。
教室は十歳以下のクラスと十歳以上のクラスの二つに分ける。
教室には机と椅子、そして教壇と黒板。
俺の中での学校と言えばこんな感じだ。
教室の後ろ側にはロッカーとなる棚も必要だな。
図案を見せながらあれこれ説明して依頼する。ノームたちはすごいスピードで資材を加工し、運び、組み立てていく。
小さな学校だし、そんなに日数もかからないかもしれないな。
俺は出来上がった後――先生や授業内容のことを考えておこう。
学校が始まったら、紙やペンも必要になってくるな。
ヘイディスさんに相談しよう。
次に公衆浴場。
デザインについては地球に転移した際、姉貴と相談した。
ローマ帝国時代のテルマエをモデルにした完全洋風と、日本の銭湯を模した和風。
どっちにするのかで揉めに揉めた。
結果、外装は石造りの洋風、中は銭湯風ということで決着した。
その他、必要な設備や部屋の作りなど細かくトウリョウに伝える。姉貴のデザイン画とモデルとするいくつかの建物の図を見せると、難なく理解したようだ。すぐに各帽子隊に指示を出し始めた。
公衆浴場ができるなら、やっておきたいことがいくつかある。
銭湯あるあるその一、脱衣所に置かれた大量の籠。
ラタンの籠がロッカーに置かれていて、その中に服を入れる。
俺の中で覆しがたい銭湯のイメージだ。
丁度コボルト族が蔓細工が得意なので、コボルト族の女性陣に頼んで作ってもらうことにした。
ついでに蔓と木でできた腰掛なんかも作ってもらう。湯上りにラタンや簀子の腰掛に座って水分補給をしている姿も地球ではおなじみだ。
簀子よりは蔓の方がおしゃれだろうということで依頼した。
銭湯あるあるその二、積みあがった洗面器と椅子。
ドワーフ彫刻家集団に木彫りの桶と簡単な椅子を作ってもらう。
このままでは湿気ですぐに傷んでしまいそうなので、防水・防腐剤としてケットシーに漆を塗ってもらう。
サンプルに渡された洗面器と椅子は何とも上品な艶を放っていた。想像の十倍くらい高級そうなやつができたけどまあいいか。これでGOサインを出す。
銭湯あるあるその三、柔らかいタオル。
これは銭湯というより温泉旅館のイメージかもしれないが、ふかふかのタオルが設置されていて、湯上りはそれで体をふくというイメージがある。
ちなみにこの世界の「体をふくもの」といえば、手ぬぐいやただの布だ。これを機にパイル地のタオルを導入しよう。
テレサ率いる洋裁集団にお願いしたが、均一なパイルを作るのが結構大変そうだ。
ケットシーの女性陣が一番上手にできた。よってタオルづくりはケットシーたちにお願いする。
今からコツコツ作り上げれば、ノームたちが公衆浴場を作りあえる頃には十数枚くらいできているだろう。
俺たちが畑の拡張にいそしんでいる間に、ノームたちはしっかりと建築を進めてくれていた。
おかげで畑作業がひと段落した二週間後には、建物がほとんど出来上がっていた。
あとは俺の意見を聞きながら内装をいくつか調整して、家具類を運び込む。
緑帽子隊が作る木製の家具は丈夫でシンプルで、生徒の机にぴったりだ。
教卓はなぜか少し豪華なつくりになっている。原因はドワーフの彫刻家チームだ。
風呂用の椅子と洗面器を依頼したはずだが、本人たち曰く「ノッて」しまったらしく、装飾の余地がありそうなこの教卓に「少しばかり」細工を施したらしい。
……まあいいか。屋敷の彫刻程華美に飾られているわけでもないし。モノ自体は素晴らしい出来だしな。
そしてとうとう学校が完成した。
教室は二つ。空き部屋が四部屋。まあ、ここは何に使ってもらっても構わない。特別な授業用にしても、子どもの遊び場にしても。使い道は先生に一任する。
教室は大学の講義室のようにやや傾斜がついており、木製の机、椅子が等間隔に配置されている。
後ろはこれまた木製のロッカー。子どもたちが荷物を入れる場所だ。壁には掲示板。
黒板に教卓、これは定番だろう。
小さいが先生用の職員室も作った。そして図書室も併設。これは絶対取り入れようと思っていたことだ。
自由に本が読める環境っていいよな。この世界ではお金を払わないと本が読めないみたいだし。
なにより、本が読めるってなったら読み書きの勉強のやる気もアップするだろうし。
ヘイディスさんの商隊を通じて本を手に入れよう。最初は子どもたちが興味を持ちやすい物語とかがいいかな。
公衆浴場も完成した。
外観はどっしりとした石造りの建物で、周りの家々や商店にも合う洋風の作りだ。
中に入ると玄関。ここで靴を脱ぐ。
番頭さんに料金を支払って(村人は無料だけどね)、右側が男湯、左側が女湯。色違いの暖簾をつけたからわかりやすいはずだ。
男湯、女湯の中の作りは同じ。
引き戸のドアを開けると脱衣所。木の床に木で作ったロッカー。ロッカーの中にはコボルトたちが作った蔓細工の籠が置いてあり、ここに衣服を入れる。
同じく蔓細工のベンチも置いてある。さらにはジーク特製のガラス鏡も設置。
更に棚にはケットシー特製のパイル地のタオルが積まれている。数はまだ少ないけどね。
風呂場の方は、石の床の中央に石の浴槽。左右には洗い場として蛇口が十か所。
一応三十人くらいは入れる大きさにしたつもりだけど、大丈夫だよな。
さっそく、子どもたちを集めて学校完成披露会を行う。子ども以外にもみんな気になっているらしく、結局大人数で列をなして校内を見学していった。
机といすの揃った教室、先生用の職員室、図書室。図書室は一般の人も入れるように校内の出入口とは別に外につながる出入口も設けてある。残念ながら本はまだほとんどない。一応、キークスの町で買った三冊の本を棚に置いては見たけれど、なんだか余計に寂しさが増している気もする。
これは急いで本を集めないとな。
「わぁ……!」
「ひろーい!」
「ここで勉強するんだよね!」
「この部屋は何に使うんだろう?」
「机も大きい!」
「こんな場所で勉強できるなんてすごい!」
子どもたちは興奮しっぱなしだ。そうだよな。今までの建物と違い、ここは「子どもたちのための場所」。特別感があるのは当然か。
大人たちも「こんな立派な環境で……。」「学校というのはこういう作りになっているのね……。」などと言いながら構内を見て回っていた。
公衆浴場の完成披露会も行った。
まず石造りの立派な外観に村人はびっくり。そして、玄関を入って男性陣は男湯へ、女性陣は女湯へ。壁を隔てて互いの「わぁー!」「こりゃすごいのう!」「すっごくきれい!」「鏡までついてる!!」といった歓声が聞こえてくる。うんうん、女性陣の方も喜んでくれているようで何よりだ。
男性陣も大興奮だ。まずロッカーにずらりと並んだ蔓の籠に感嘆し、コボルト族を褒めちぎる。褒められたコボルト族は「うちの女衆もなかなかやるんだワン。」とちょっと照れ気味。そしてジークの鏡にびっくり仰天。初めて鏡を見る者も多く、恐る恐るのぞき込んでは映った自分の影に驚いたり、「自分はこんな顔だったんですね……」とまじまじ観察したりと忙しい。
肝心の浴場もみんなテンション上がりっぱなしだ。今までとは比べ物にならないほど広い浴槽に、魔石式水道の洗い場。
今までは数人ずつが順番に入り、順番待ちがとにかく長いという問題があったがこれなら三十人くらいは一緒に入れる。
なにより広い浴槽にゆったり浸かることができるっていいよな。
これくらいなら、うちの館の風呂にも負けてないと思う。
「村長、素晴らしいです!」
「この世の天国を見ました!!」
「こうなったらますます石鹸作りに力を入れないと!」
「鏡がついているのも嬉しかったわ」
「はやくおふろはいりたーい!」
「みんなで入るのが楽しみだワン!」
みんな口々に言う。もう、早く入りたくて仕方がない様子だ。今日の仕事はここまでだな。
その後、誰が最初の湯に入るかで、男女ごとに熾烈なじゃんけん大会が開かれた。そして選ばれし各三十名の男女をみんなで見送る。
出てきた人は見なとろけ切った顔をしていた。「はぁ~……良いお湯……」という呟きと共に。
こうして、村の新たな公共施設が誕生し、村民の生活は本人たち曰く格段に向上した。