12.バーベキュー
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さすがに一日では枠組みだけしかできなかった。しかし、それでも相当な速さだと思う。小屋とはいえ、普通何ヶ月もかかるような作業なんだから。
収穫組はなんとか全部終えたらしく、土を洗い落とし、種類ごとに麻袋に詰めていた。
置き場所だが、間に合わないことを見越していたらしいノームたちが、よくある自転車置き場のような雨除けの小さな場所を作ってくれていた。さすがプロの仕事である。
あ、それでもトイレだけは完成した。
男女別で、木製の便座もある。四角い椅子の真ん中に穴が空いていて、それが地下へとつながる形だ。
地球の曲線的なフォルムに慣れた俺としては若干違和感はあるが、まあ、普通に使う分には問題ない。
屋根と採光の問題も、上部に小窓をいくつも取り入れることで解決した。うん、これなら雨でも濡れないし、小窓で換気もされるし、いいんじゃないかな。
実演するわけには行かないので座るところだけみんなに説明したら、画期的だと大絶賛された。
ふふふ、トイレ大国、日本の技術はこんなもんじゃないぜ。
最終目標はウォシュレット付き水洗トイレだからな。
……先はものすごく遠そうだが。
作業に追われて昼食は各自朝の残りで簡単に済ましたから、夕食はみんなで収穫した野菜を頂く。
初めての収穫ということで、急遽「収穫祭」を開くことにした。
ライアとノームたちの歓迎会もかねてだ。
メニューは大勢でのアウトドアの定番、バーベキューだ。肉は少ないけどね。
串に挿して焚き火で焼く野菜中心のバーベキューだったが、新鮮な野菜はこれでもかというくらい甘さとみずみずしさがあって美味しかった。
そうそう、地球のタマネギはこっちのタマネギにくらべて辛味が少ないらしく、子どもたちも「これなら食べられる!」と喜んでいた。
俺も小さい頃、生のタマネギは辛くて苦手だったから気持ちはすごくわかる。
ノームたちはドライアドと違って植物の根などを好んで食べるらしい。
そのせいか、ジャガイモが大人気だった。細かく切ってやったジャガイモをがふがふと頬張る姿はリスみたいで面白い。
子ども二人は初めて食べるイチゴに感動していた。「甘い!」「美味しい!」ともりもり食べている。後半は殆どイチゴしか食べてないんじゃないかってくらいだ。
これなら、また育てても良いかもな。
大人たちも思い思いの野菜を串に刺して焼いては「美味しい」「うまいな」と話していた。
一日一緒に過ごして打ち解けたのか、マリアもテレサも次から次へとライアに野菜を勧めていた。
ライアは食事の必要がないからつまらないかと思ったが、「食べられない」わけではないらしく、トマトやトウモロコシを手に嬉しそうにしていた。
初めての収穫に新しい仲間たち。そしてバーベキューでワイワイと食事。
つい昨日まで木の実やなんやを食べていたのもあって、なんだか一気に発展した気がする。
辺りもすっかり暗くなったので、就寝の時間。
ライアは樹の中に戻るようだ。樹の精霊なんだから当然か。
フランカが「おやすみー!またあしたねー!」と元気に手を降ってお別れした。
ノームたちはどうするのだろうかと思ったが、いつの間にか森に帰っていた。
森の中で生活しているらしいし、ライアみたいに決まった寝床があるのかな。
夜の見張りだが、「私がいる限り、この大樹の周辺は安全です。」とライアが言っていたので、今日からなくなった。
ロベルトさんと同じ小屋に入り、マントにくるまって横になる。
疲れているのだろう、幾分もしないうちにいびき混じりの寝息が聞こえてきた。俺も今日はゆっくり寝よう。
その前にアレをしとかないと。
音を立てないようにそっと起き上がり、心のなかでディミトリオス様に呼びかける。
(ディミトリオス様)
(おう、どうしたのじゃ)
(あの種、世界樹の種だったんですね。驚きましたよ。)
(ふぉっふぉっふぉっ、まあ、そなたたちの役に立つじゃろうと思ってな。)
(この間おっしゃっていた「ちょうどよいやつ」ってドライアドのことだったんですね。)
(そうじゃそうじゃ、奴らは自然を司る精霊たちの中でもかなり上位の存在でな、色々頼りにすると良いぞ。まあ、あまり人に慣れんから出てくるかどうか心配じゃったが。うまくいってよかったの。)
(それと、すみません。転生のことを姉に話してしまいました。)
(ああ、良い良い。転生者が他の人間に話すなんぞ、よくあることじゃ。むしろ誰にも話さぬ人間のほうが珍しい。)
(そうなんですか?それを聞いて安心しました。けど異世界のこととかバレたら色々まずいのでは……?)
(そんなもん、知られたところでどうにもならん。仮にここへ来ようとしたところで、今のそなたたちの故郷の技術では見つけることすら不可能じゃ。そもそも地球でも、昔から伝説やらおとぎ話やらで溢れておろう?)
(なるほど……あ、それと、地球から物を持ち込むのを、勝手にディミトリオス様のしたことにしてしまいました。ほかにうまいごまかし方が思いつかなくて……)
(はぁ……そなたは真面目じゃのう。そのような小さなことを気にするわしではない。わしのことなど気にせずに、もっと自分の好きなように動いていいんじゃよ?困ったときにちょちょっと調整するのが神であるわしの役目なんじゃから。ま、大抵のことは放っておいてもなんとかなるがのう。ふぉっふぉっふぉっ。)
(はあ、そんなもんですか……)
(ま、せっかくのチャンスなんじゃ。活かすも殺すもそなた次第。あまり慎重になりすぎると、活かせるものも活かせんぞい)
そう言うと、ディミトリオス様の声は聞こえなくなった。
まあ、要するに全く問題なしってことなんだろう。
神様ってことで失礼のないようにと若干萎縮していたが、実際の神様というのは俺が考えていた以上に器が大きいみたいだ。
それに、チャンスを活かすも殺すも俺次第、か。
たしかにそうだよな。こんなチャンスまたとないんだ。
せっかく頼もしい仲間が増えたんだから、俺が遠慮してたら意味ないよな。
とにかくやるしかないんだ。
俺は吹っ切るようにガバっとマントに包まり、そのまま眠りに落ちた。