110.ジークは大忙し
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次は畑だ。
キークスで買ったニンニクやパセリ、レタス、豆類、ネギっぽいものにズッキーニ。
果物は アンズにイチジクにオレンジ、レモン。
それらを植えるため、まずは畑の拡大。ロベルトさんと相談しながら場所を決めて畑を耕す。『天地返し』の魔法でかなり楽に耕せた。
ロベルトさんもびっくりしていたよ。
いくつになっても褒められると悪い気はしない。むしろ後でもう少し魔法の勉強をしようかな、なんて思ってしまう俺は単純だろうか。
今回は種を植えると言うよりかは、買ってきたものをそのまま土にさすだけ。中に種があるであろう果物類はともかく、野菜はこんなんで良いのだろうか。
世界樹と力とガイアス様の加護に大いに期待することにしよう。
そうそう、鏡のことを忘れていた。
もう一度ジークの工房へ。あれもこれも頼んで申し訳ないが、ガラス工芸品を得意とするジークがいちばん適任だと思うからな。
残念ながら今はステンレスに夢中らしく、「アレ(キッチン用品)が一段落してから来い」と追い返された。
まあ確かに、新しい仕事を二つも三つも持ってきちゃ捌ききれないわな。
ここはブラック企業ではない。俺はホワイトな村をめざしているので大人しく退散する。
別に今すぐ必要って訳でもないし。
三日後にジークに呼ばれて工房に行くと、見事なステンレス製のキッチンツール達が出来上がっていた。
早速マリアさんに渡してみる。
「これはこうやって使うんだ。」
「まあ、ジャガイモの皮がこんなに簡単に!」
「これはこうやってセットして……」
「すごいわ!こんなに薄切りに出来るなんて!向こう側が透けるようだわ!」
「ここに切った野菜を入れてこの紐を引っ張ると……」
「あらあらまあまあ!いつの間にかこんなにみじん切りに!!!魔法みたいねぇ!」
俺の説明と実演にマリアさんもエルヴィラも大興奮だ。
お手伝いのカルナとフランカも「すっごーい!」「私もやってみたい!」と目を輝かせている。ふふふ、みんなしていい反応してくれるな。これは導入した甲斐があった。
ジークもこの反応が嬉しいのだろう。口元が緩んでむにょむにょと動いている。
「どうかな?これで少しは料理が楽になりそう?」
「少しなんてもんじゃないですよ村長!革命です!」
「本当、ありがとうねぇ。」
「私も一生懸命お手伝いする!」
「フランカもがんばるー!」
「ジークさんもありがとうねぇ。」
「当然じゃ。また具合が悪くなったら工房に来い。」
食堂を出ても、料理チームの興奮した声が聞こえていた。
それを聞きながら俺たちはジークの工房へ。
「そいで、何じゃい、わしに作ってほしいっちゅうもんは?」
「これなんだけど……」
俺はジークに鏡を渡す。
それを見るなりジークは飛び上がった。
「なっ!なんじゃこれは!?男がおるぞ!?わしの動きに合わせて……!?!?」
「『ガラス鏡』だよ。目の前にあるものを映すんだ。」
「なんと!ということは、この髭もじゃの男はわしか!?おお!こっちに来るな!」
「ジークだよ。あと、ジークの動きに合わせて動くからジークが近寄れば鏡の中のジークも近づいてくるよ。」
「どうやってわしをもう一人作り出したんじゃ?」
「作り出したんじゃなく、それは映った影だよ。ほら、ぼんやりだけどここにも見えるだろ?」
俺は近くにあったステンレス板を見せる。
ジークはステンレス板と鏡を何度も見比べて、ようやく納得したようだ。
「なるほどな。しっかしまあ驚いたぞい。これ程はっきりと映る鏡とはな。」
「鏡自体は知ってるのか?」
「金属板を磨いたものじゃろう?ドワーフの里でも作っていたものがおってな。人間の金持ちが欲しがるとかで。」
「じゃあ話が早いな。この鏡は……」
俺はガラス鏡の仕組みを説明する。と言ってもネットで調べた知識だけじゃ俺もいまいちピンと来なかったけど。
「……なるほど。つまりおっそろしく透明で歪みのないガラスを作るということじゃな。」
ジークは問題なく理解したようだ。さすが職人。物作りに対する理解が早い。
「できそうかな?」
「わしに出来ぬことなどないわ。でもまあ時間がかかるじゃろうからそう急かさずに待っとけ。」
「頼んだよ。期待してるから。」
鏡をジークに託して、俺は工房を出た。ちなみにキッチンツールをもう一セット渡された。
「アヤナミ殿も料理をするじゃろうが。」とのこと。やだイケメン。できる男。
さて、これで今回の村改革のあれこれは全て終わった。あとの結果はみんな次第だな。
村人のやる気もみなぎって、村の発展は急加速の予感。