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11.強力な助っ人

 ドライアドの主食はきれいな水と空気だ。そこは世界樹と同じだという。

 つまり俺たちのような食事は必要としない。

 にもかかわらず、「一緒に食事を」という俺たちの誘い(主にフランカとセシル)を断らなかったのは、やはりフランカの存在が大きいのだろう。


「はい、これはドライアドさんの分。ちょっと見た目寂しいけど……。」


 そう言ってテレサが差し出したのは、スープを入れる器に川から汲んできた水を入れたものだ。

 俺たちの朝食がウサギ肉のスープだったので、せめて気分だけでも……ということらしい。


「ありがとうございます。十分です。」


 ちなみに、「ドライアド様」というのは本人の希望もあってやめた。

 本人曰く、信仰の対象ではなく、仲間として加わりたいとのことだ。

 フランカが友達のように接しているのも嬉しそうだし、変に特別扱いしないほうがいいんだろう。


「皆さんにお願いがあるのですが。」


 水を飲み終わったドライアドが満足そうに器を置き、そう切り出した。


「わしらにできることならなんでも言ってくだされ。」

「実は、私に名前をつけてほしいのです。」


 「ドライアド」というのは種族名、いわば人間が「人間さん」と呼ばれるようなものだ。

 そりゃ違和感あるわな。

 ただ、今まで世界樹の中にいたため、自分の名前が無いのだという。

 自分で考えてもいいが、せっかくだからみんなに考えてほしいということだった。


「名前か。うーん、どんな名前がいいかな……」

「ぱっと言われると思いつかないわね……」

「せっかくだから、フランカちゃんが考えてあげたら?」

「そうじゃのう。それが一番嬉しかろう。」

「せっかくだから、かっこいい名前つけてやれよ。」


 満場一致で、フランカが名付けをすることになった。


 「お願いできますか?」というドライアドに、「うーんと、うーんと……」と頭を悩ませるフランカ。

 名付けって難しいよな。急に言われると特に。


「ドライアドさんでしょ?ドライ……アド……ライ……ア……『ライア』は?」


 ぱっと顔をあげるフランカ。


「ライア……ライア……気に入りました。私の名はライアです。よろしくね、フランカ。」


 ドライアド、改め、ライアがニッコリと微笑む。

 フランカも気に入ってもらえて嬉しそうだ。


「うん!ライアはお友達だから!よろしくね!」




 今日は全員総出で収穫作業だ。

 なんてったって、植えた作物が全部一気に実ったんだからな。

 食べごろのときに収穫しておきたい。

 問題は、大量の作物をどこに保管するか、だ。

 今ある屋根のある場所と言ったら、寝るとき用の竪穴住居が二つ、干し魚や木の実などを置いている小さな竪穴住居が一つあるのみ。

 大量の作物を保管するにはとても足りない。野ざらしにはしておけないし……

 大人たちが頭を悩ませていると、ライアが声を発した。


「この際、木造の小屋をいくつか立ててはいかがでしょうか?」

「じゃがのう、この人数では時間がかかりすぎる。」

「ではノームたちを呼び寄せましょう。」

「ノーム?」

「土の下級精霊たちです。この森の至るところで生活していますよ。土木関連は彼らが頼りになるでしょう。」


 そう言うと、すっと右手を上げた。すると、風もないのに大樹の葉がざわめいた。

 暫く経つと、なにやら小さいものがぴょこぴょことこちらへ向かってくる。

 近づいてくるとそれがたくさんの小人たちであることがわかった。


 身長はおそらく十五センチあるかないかだろう。

 身長に対して高すぎないか?というくらい高い三角帽を目深にかぶり、機敏な動きで駆けてくる。

 帽子で目が完全に隠れているけど前は見えているのだろうか?

 堀の前で困ったようにしていたので渡し板の方に誘導すると、あっという間に広場に集まった。


「うわ~かわいい!!」

「すげえ!小人だ!」


 フランカとセシルは初めて見るノームたちに大興奮で、しゃがみこんでよく見ようとしている。

 ノームたちはおっかなびっくりといった様子だったが、逃げ出したりはしなかった。


「彼らがノームです。小さな姿ですが、ご覧の通り機敏で、力も強いです。彼らなら指示さえすれば小屋の一つや二つすぐに作れますよ。」


 ライアはそう言うと、威厳たっぷりにノームたちへ向き直った。

 ノームたちもぴしっと姿勢を正している。

 下級精霊と言っていたから、序列があるのだろう。ドライアドは伝説の精霊っぽいしな。


「こちらの方々は、私の大切な友人たちです。彼らが快適に生活できるよう、助けになっておやりなさい。」


 ノームたちは了解したようで、俺たちに向き直る。

 大人チームはどうしようかと顔を見合わせたが、なんかあまりに畏まらせるのも申し訳ないし、命令っぽいのはなるべく避けたいので、とりあえず俺が代表で声をかけてみた。


「あーっと、そんなに畏まらなくていいよ。もともと俺たちが手伝って貰う立場なんだから。その、仲間として協力してくれたら嬉しい。」


 ノームたちはしばらく互いに顔を見合わせていたが、やがて肩の力を抜いて楽に立つようになった。

 そのままの流れで、俺がノームに小屋の指示出し、他のみんなが作物の収穫を担当することになった。

 しかし、セシルはノームたちに興味深々でこっちに来たそうだったので、建築チームに入ってもらった。

 セシルは嬉しそうにノームたちの前にしゃがみ、「よろしくな!」と人差し指を差し出した。

 目の前にいたノームは一瞬戸惑うも、同じように人差し指を出し、「E.T」のようなポーズで握手?を交わした。


 ノームたちには、『賢者の書』にあるログハウスをイメージして作ってもらおうかと思っていたが、なぜか一瞬だけ見えた木組みの方に興味を示した。宮大工とかに使われる方法だから難しいんじゃないかと思ったのだが、日本語も読めないだろうに、かわるがわる見に来ては役割分担まで決めてしまった。

 ノームたちがどれほどの技術を持っているかわからないが、土の精霊たちだし、まずは任せてみよう。どうにも無理そうだったらログハウスを注文しよう。

 俺は地面に線を引いて、どのくらいの大きさの小屋がほしいのか、どんな用途で使うのかを身振り手振りも交えて説明した。

 ジェスチャーを入れたのは、ノームたちが全く言葉を発しないので、本当に言葉が伝わっているか不安になったからだ。

 とりあえず、収穫した野菜を入れる倉庫、俺たちが寝る小屋、トイレを作ることにした。この際、トイレは男女別にしようと思う。

 やることが決まると、ノームたちは一斉に森へ駆けていった。

 俺とセシルは完全においていかれてしまったので、小屋の建設予定地に近い部分の堀を埋めることにした。

 ノームたちが戻ってきたとき、堀がないほうが作業しやすいだろうしな。


 三十分ほど経っただろうか、ノームたちの一部が戻ってきた。四角く削り出した石を二人がかりで運んでいる。おそらく基礎の部分に使うのだろう。が、石の大きさ的にどう見ても人数不足だと思う。

 俺とセシルは大慌てで手助けに向かったが、人手は足りていると言わんばかりに手で制止された。彼らは見た目からは想像もつかないほど力持ちらしい。

 そこからは、次から次へと石やら木材やらが運ばれてきた。

 どこで加工しているのか、ホームセンターに売っているような真っ直ぐですべすべの木材だ。

 棟梁?らしきノームが的確に指示を出し、柱やら梁やらを立てていく。流石に高いところは俺たちが支えたほうが楽なようなので、ジェスチャーで誘導してもらいながら梁を通す作業に加わった。木組みの仕組みを完璧に理解しているらしく、凹凸に加工された木材を的確に合わせていく。俺が支えている途中、目の前の梁の上で作業中のノームと目があった。しばらくこちらを見つめた後、「ぴっ」と人差し指を突き出してきた。これはアレか、さっきの「E.T」ポーズを要求しているのか。俺も優しく人差し指を合わせ、「E.T」ポーズを取ると、満足したらしく再び作業に取り掛かった。

 うん、なんか愛嬌があって可愛い奴らだな。



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