6/10

果たされない“約束”

◆果たされない“約束”

　──裕福ではないがそれなりに仲の良かった両親。その両親と、何か行事があるごとに集まり、賑やかしてくれる、面白くて大好きな親戚のおじさん、おばさん、従兄弟姉妹たち。

　５つ年上のスポーツマンで、頼りになるがちょっと意地悪で、でも普段は優しく、社会人になってから桔梗家を支えてくれてる一角を担う長男の兄。

　女の子のくせに、少々お転婆で、でも姉である自分に良く懐き一緒になって遊んだり親に怒られたりした可愛い３つ下の妹。

　しつこい男に言い寄られたときに守ってくれたり、買い物や映画や恋バナを楽しんだ友人たち。

　そして・・・、高校生の時に修学旅行で告白されてから付き合い始め、やっと最近、お互いの両親に紹介され、紹介し合い、結婚を前提に家族公認の仲になった恋人・・・、四葉大地くん・・・。

　そんな素晴らしい彼らのいる場所から、だけでなく、突然襲ったまるで暴力のように、無理矢理世界から切り離され、引き剝がされて、たどり着いた異世界から、一刻も早く、家族の元へ、仲間の元へ、大好きな人の元へ帰れる希望だけを頼りに、“聖女”としての役目と責務を承諾したのに・・・。

　実は、一目惚れしたのだと言う、護衛騎士ジョンジャックと結婚し、この世界に留まり、類稀なる聖女の聖力を、この世界に残さない手はないだろうと。子孫を残すことを強要され、そして自力では開けることも抜け出すこともできない結界を張り巡らされ、豪華だが牢獄のような部屋に、軟禁されてしまった──。