4 通学は憩(いこ)いのひと時
「はぁ~っ・・・・・・」
その日の放課後、校門に向かって歩いている私は今朝の出来事を思い出し、
魂が丸々漏れ出てしまいそうな程に深いため息をついた。
そんな私に、右隣を歩くお団子ヘアーの、小柄で可愛い女の子が声をかける。
「しぃちゃん大丈夫?何だか凄く疲れてるみたいだよ?」
この天使のように清らかな心(いや、天使より清らかと言っても過言ではない)と、
妖精のように愛らしくて可愛らしい(否、妖精よりも愛らしくて可愛らしいと表現しても何ら差支えない)姿をした彼女は、私のクラスメイトで大々々親友の舞川由奈ちゃん。
由奈ちゃんがどれだけ女の子として魅力的で、そんな由奈ちゃんを私がどんなに大好きか、
語り始めると第三話くらいまでかかってしまいそうなのでここでは省略する(また機会があればお話しします)。
ともかくそんな由奈ちゃんにできるだけ心配をかけないよう、私は精一杯の作り笑いを浮かべて
「うん、大丈夫だよ。心配かけてごめんね?」と返す。
するとそんな私の左隣を歩く、少しウエーブのある黒髪を肩のあたりまで伸ばした女子生徒が口を開く。
「あの探偵事務所で毎日コキ使われてるの?
あの会長さん、凄いヤリ手な感じだけど、人使いも凄い荒そうだもんね」
そう言って苦笑いするのは、こちらも私のクラスメイトの柊彩さん。
真面目で人当たりがよく、面倒見がいいので誰からも好かれ、
性格もサバサバしているので、人見知りの私でもとても親しみやすい。
この前の事件(第二巻参照)をキッカケに自然と仲良くなり、
お昼御飯を一緒に食べたり、こうして放課後一緒に帰ったりするようになった。
そんな彼女に、私も苦笑いしながらこう返す。
「まあ、そうだね。それに最近新しいメンバーも増えて、
その子と綾芽が毎日喧嘩ばっかりするから、その仲裁をするのが大変なのよ」
ちなみにその綾芽は新しい依頼があるとかで先に事務所に帰っており、
潟奈ちゃんは同い年だけど違う学校(白鳥学園という、この辺では有名なお嬢様学校)に通っているのでこの場には居ない。
柊さんも潟奈ちゃんの事は知っているので、私の言葉にうなずきながら言った。
「ああ、あの元殺し屋の子だよね?桐咲さん、だったっけ?そんなに花巻さんと仲悪いの?」
「すんごく悪いのよ。今朝もつまらない事で大ゲンカして、
その騒ぎに况乃さんが機嫌を悪くして私の部屋でモデルガンを乱射して・・・・・・はぁ・・・・・・」
今朝の出来事を思い出し、再び深いため息をつく私。
するとそんな私の肩にそっと手を置き、
由奈ちゃんが春の日のお日様のようにあったかい笑みを浮かべて言った。
「元気出してしぃちゃん。そうだ、今日は久しぶりにこうして一緒に帰れるんだから、
ちょっと寄り道していかない?駅前でクレープ食べようよ」
その言葉に私はたちまち元気を取り戻し、はずんだ声でこう返す。
「クレープ!いいね!行こう!すぐ行こう!柊さんも行くよね?」
と柊さんの方に振り向いて私はそう言ったが、柊さんは申し訳なさそうに両手を合わせて言った。
「ゴメン、私はちょっと人と会う約束があるから、先に帰るね。また明日、学校でね!」
そして手を振りながら駆けだす柊さん。
もしかして、デート?
等と無粋な事を考えていると、同じ事を思ったらしい由奈ちゃんが、
いたずらっぽい笑みを浮かべながら言った。
「柊さん、今からデートなのかな?」
「う~ん、柊さんならありえるかも。
実際クラスの男子にも凄くモテるし(それが原因でこの前の事件にも巻き込まれたのだけど)、
彼氏が居ても全然不思議じゃないもんね」
「だよねぇ。そっかぁ、柊さんにも(・)彼氏が居るんだ」