4 悪の親玉
と、おだやかだけど、どこか背筋にゾワッと悪寒が走るような男の声が聞こえ、
私と智矢ちゃんの背後から、スーツを来た中年の男が現れた。
歳は四十過ぎくらい?
表情はニコニコしているけど、背後から漂うオーラは黒くにごっているようで、どことなく不気味だ。
一体このオッサンは何者なの?
と思っていると、その男に刹羅は極めてぶっきらぼうな口調でこう返す。
「ああん?せっかくいい所なのに邪魔するんじゃねぇよ。
好きなだけ殺して、殺した分だけ金を払うっつったのはお前だろうが?」
「それはそうですが、いたいけで無垢な少女まで手にかけるのは、流石に私も良心が咎めます。
ここは私の顔に免じて、そのお嬢さんの命を奪うのは勘弁してあげてください」
男がそう言うと、刹羅はさも不愉快そうに何か呟き、智由ちゃんの首に構えていた首切鋏を引っ込めた。
これは、この男に智由ちゃんを助けてもらったという事でいいのかしら?
私が複雑な気持ちで男の顔を見ていると、その男は私と智矢ちゃんにニッコリとほほ笑んで言った。
「自己紹介が遅れましたね。私は縫来留美人。このミルグイーヌカンパニーで代表を務める者です。
この度は怖い思いをさせてしまい、申し訳ありません。
元来私はこういう事は好まない性質でしてね、
あなた方がお持ちになったぬいぐるみさえ返してくだされば、
これ以上手荒な真似は決していたしません。
なのでどうか、あなたがそのリュックに入れているであろうぬいぐるみを、
こちらに渡してはもらえませんか?」
「ほ、本当に、このぬいぐるみさえ返せば、私達に手荒な事はしないんですね?」
私が警戒しながら尋ねると、縫来と名乗ったその男は一層ニッコリほほ笑んで言った。
「もちろんです。私は子供が大好きなんです。特にこれくらいの、穢れを知らない子供がね」
縫来はそう言うと、やにわに傍らに居た智矢ちゃんを右手で抱き寄せ、
その白玉のようなほっぺをベロンと舐めあげた。
「ひっ⁉」
恐怖と嫌悪感で体を縮こまらせる智矢ちゃん。
それを見た私は怒りの声を上げた。
「な、何やってんのよあんた⁉智矢ちゃんから離れなさいよ!」
すると周りの男達が、茶化すような口調で言った。
「あ~あ、また始まったよ、社長の悪い(・・)クセ(・・)が」
「社長はあの(・・)日が来てない女の子にしか興味がねぇモンなぁ」
「そんな事してると、ケーサツに通報されちまいますよ?」
「もうとっくにそれよりヤバイ事やってるっつうの!」
そう言ってドッと笑い声を上げる男達。
そんな中縫来は智矢ちゃんを両手で抱え上げ、そのまま立ち去ろうとしたので、私は慌てて呼び止める。
「ちょっと!智矢ちゃんを何処へ連れて行く気なの⁉」
すると縫来は足を止めて振り返り、ウジが湧いた動物の死体よりも気持ち悪い笑みを浮かべてこう言った。
「私の部屋でおもてなし(・・・・・)するのですよ。もちろん、あちらの妹さんもね」
そして縫来は智矢ちゃんを抱えて倉庫の奥へと消えて行く。
その後を追うように、刹羅も智由ちゃんを抱え上げて倉庫の奥へと消えて行った。




