1 二人で乗り込む
夜空にキレイな半月が浮かぶ夜。
私は今、自転車の荷台に智矢ちゃんを乗せ、四邸阪田市の郊外にある工業団地に向かって、
必死に自転車のペダルをこいでいた。
智由ちゃんがさらわれたという電話を受けた私は、
その後智矢ちゃんを慰めて落ち着かせ、事のあらましを聞いた。
それによると、智矢ちゃんが智由ちゃんと一緒の部屋で寝ていた所、
再びあの久尾刹羅が現れ、眠ったままの智由ちゃんをさらい、一通の手紙を残して逃げて行ったとの事。
その手紙には、
『妹を返して欲しければ、あのノッポの姉ちゃん(私の事だろう)に、
アタイから盗んだ二匹のぬいぐるみ(太郎と太郎二号の事だろう)を持って来させ、
四邸阪田市の郊外の工業団地にある、ミルグイーヌカンパニーの倉庫に二人で来い。
ただし、この事を他の誰かに知らせれば、妹の命はない。久尾刹羅』
と書かれていたという。
それを聞いた私は急いで新聞配達用のジャージに着替え(制服は発信機が仕込まれているので)、
况乃さん達に気付かれないように太郎と太郎二号を持ちだして智矢ちゃんと合流し、
こうしてミルグイーヌカンパニーの倉庫に向かっている訳だ。
「智由、大丈夫でしょうか?まさか、もうあの殺し屋の女に殺されたなんて事は、ないですよね?」
一旦は落ち着いたものの、やっぱり智由ちゃんの事が心配なのか、智矢ちゃんは不安そうな声で呟く。
私の腰にまわした智矢ちゃんの細い両手もかすかにふるえていた。
そんな智矢ちゃんを励ますように、私は気丈な口調でこう返す。
「大丈夫!向こうは私と智矢ちゃんと、
二匹のぬいぐるみを誘い出す為に智由ちゃんを人質にとったんだから、そう簡単に殺したりはしないよ!
私が絶対に智由ちゃんを助け出すから安心して!」
「お姉さん・・・・・・」
私の言葉に、幾分勇気を取り戻した様子の智矢ちゃん。
けど実際の所、あの刹羅を相手にどうやって智由ちゃんを取り戻すのか、
確かな自信は全くと言っていいほどなかった。
だけど私が行かなきゃ智由ちゃんは刹羅に殺されてしまうかもしれないし、
况乃さん達に助けを求めても、結果は同じ事になるだろう。
ここは私が智矢ちゃんと二人で乗り込むしかないのだ。




