4 遭遇
その日の夜。
私は智矢ちゃんの家から少し離れた場所にある、とある家の屋根の上に居た。
ここなら辺りの住宅街の屋根は一通り見渡せるし、
もし屋根伝いに移動する犯人を見つけたら、すぐに追いかけられる。
日はすっかり暮れているので視界はよくないけど、
街灯や月の明かりがあるので誰かが屋根の上に現れればすぐに分かる。
それが全身黒ずくめの細身の女なら、まず間違いなく智由ちゃんのフランソワをさらった犯人だろう。
見つけたらとっ捕まえて、何としてもフランソワを取り返してやる。
・・・・・・と、意気込んではみるものの、
こんな所に居て本当に犯人を見つける事なんてできるんだろうか?
もう他の街に移動して、この辺りには出ないかも知れないし、
フランソワをさらった時点で、他のぬいぐるみをさらう事はやめたかもしれない。
そもそも犯人がクマのぬいぐるみをさらう目的は何なの?
まさか身代金目的じゃあないだろうし、実はフランソワは物凄い価値のある高級なぬいぐるみで、
オークションで売れば物凄い高値がつくとか?
う~ん、わからない・・・・・・。
と、頭がこんがらがってきた、その時だった。
どぉん!
と、私の背中に何かが激突し、その衝撃で私はそのまま屋根の上に顔からすっ転んだ。
「うゎぷっ⁉」
思いっきり屋根に額と鼻をぶつけ、物凄く痛い。
もしかしたら鼻血とかが出てるかもしれない。
いや、それより、一体何が私の背中にぶつかったんだろう?
まさか野良猫・・・・・・に、しては、やけに大きかったような・・・・・・。
と思い、鼻をさすりながら起き上って後ろに振り返ると、
そこに居たのは野良猫ではなく、一人の女の子だった。
歳は私より下、だろうか?
ふんだんにフリルのあしらわれた真っ黒なワンピースに、
黒のストッキングを穿いて厚底の黒い靴を履き、
手には黒い手袋をして、ウネウネとクセのあるショートカットの髪は、これまた真っ黒である。
まさに全身黒ずくめの細身の女の子。
そしてその黒ずくめから浮かび上がる顔の肌は病的なまでに青白く、
その目には生気も気力も宿っていない。
顔立ちは整ってはいるけど、まるで大雨が降る直前の空のようにどんよりと曇っている。
その女の子は尻持ちをついてこちらを見上げていて、
その周りには、今まで抱えていたのであろうふたつのクマのぬいぐるみと、
ギターだかバイオリンだかが入っていそうな黒いケースがそれぞれ落ちている。
彼女の特徴のある出で立ちにクマのぬいぐるみ。これを見た私は確信した。
この子が、犯人だ。




