3 犯人は屋根の上?
と、いう訳で私と智矢ちゃんは、智由ちゃんのフランソワをさらった犯人を捜し、
四邸阪田駅を中心に、街中をあちこち捜しまわった。
駅前の商店街、バス停、智矢ちゃんの通う小学校に、智矢ちゃんの家の近所の住宅街。
色々な場所を捜してみたけれど、フランソワも、それをさらった犯人らしき人物も、
どこにも見当たらなかった。
「見つからないねぇ・・・・・・」
元の公園に戻って来た私はベンチに腰掛け、隣に座る智矢ちゃんにつぶやくように言った。
それに対して智矢ちゃんも、元気のない声でこう返す。
「そうですねぇ・・・・・・」
私と合流する前からあちこち歩き回っていた智矢ちゃんは、さすがに疲れている様子だ。
おまけに犯人の居場所はおろか、手がかりすらつかめないのだから、その疲労感は更に大きいだろう。
そんな智矢ちゃんに、私は尋ねた。
「犯人の手掛かりって、全身黒ずくめ以外に、何かなかった?
それが分かれば、犯人の行動パターンや、現れる時間帯もしぼれるかもしれない」
しかし智矢ちゃんは首を横に振ってこう答える。
「私が見たのは、犯人の横顔と、逃げて行く後ろ姿だけだったので、
それ以上の事はちょっとわからないです。ごめんなさい・・・・・・」
「あ、いや、智矢ちゃんが謝る事はないよ。悪いのはフランソワをさらった犯人なんだから」
私はそう言ったが、智矢ちゃんはすっかり落ち込んだ様子でうつむいた。
が、すぐに何かを思いついたようにガバッと立ちあがって言った。
「そうだ!私が犯人を見たのは夜で、屋根の上を走って逃げて行ったから、
夜にビルやマンションの屋上に上って辺りを捜せば、もしかしたら犯人が見つかるかもしれません!」
「な、なるほど。やみくもに街中を捜し回るより、その方が見つけられる可能性はあるかもね」
私がそう言ってうなずくと、智矢ちゃんは再び元気を取り戻した様子で声を上げた。
「そうと決まればさっそく行きましょう!
こうしている間にも、他のぬいぐるみがその犯人にさらわれているかもしれません!」
「そ、そうだね、行こっか」
智矢ちゃんの勢いに引っ張られるように、私もそう言って立ちあがった、その時だった。
き~んこ~んか~んこ~ん。
と、夕方五時を知らせるチャイムが辺りに鳴り響いた。
それを聞いた智矢ちゃんは気まずそうに表情をくもらせて言った。
「ご、ごめんなさい、私、もう帰らなきゃ。お母さんに叱られちゃうんです・・・・・・」
そうだよね、夕方のチャイムが鳴ったら、よい子はお家に帰らなくちゃね。
その辺の事情は重々分かっている私は、ニコッと笑って言った。
「大丈夫だよ智矢ちゃん。後は私が犯人捜しをするから。
もし犯人を見つけてフランソワを取り返す事ができたら、明日この公園に持って来るからね!」
「は、はい。でも、危なくなったらすぐに逃げてくださいね?
もし、詩琴お姉ちゃんに何かあったら、私、私・・・・・・」
そう言って心配そうな顔をする智矢ちゃんの頭を優しくなでながら私は言った。
「大丈夫。危ない時はすぐに逃げるから心配しないで。こう見えても逃げ足には自信があるんだから」
私がそう言うと智矢ちゃんは少しだけほほ笑み、
明日、またこの公園で待ち合わせする約束をして帰って行った。
さて、それじゃあ私はもう少し犯人捜しを続けますか。




