1 心地よい朝
チュンチュン、チュンチュン。
朝、窓の外で、雀が鳴いていた。
今日は月曜日。
今朝は新聞が休みなので、毎朝の日課である新聞配達の為に、
お日様の出ないうちから起きなくてもいい日だ。
だから今朝はいつもよりのんびり寝ていても大丈夫。
この物語の主人公である私、習志野詩琴十五歳は、
ぬくぬくとしたベッドの布団にくるまれ、
夢うつつな気持ちで、心地よい惰眠に身を任せている。
私の両親が多額の借金を抱えて姿を消し、
その借金の肩代わりをしてくれた園真况乃さんの元で、
彼女が営む探偵事務所の助手として働くようになってから半月が過ぎた。
まあ、探偵の助手と言っても、
ワトソンさんみたいに事件の解決を手助けするような大それた仕事じゃなくて、
園真探偵事務所の部屋の掃除や食料の買い出しや、
炊事洗濯なんかの雑用がもっぱら私の仕事だ。
そして况乃さんに肩替りしてもらった借金を少しずつでも返済する為、毎朝新聞配達にも勤しんでいる。
探偵業は况乃さんと、况乃さんが雇っている(?)始末屋が担当していて、
私が駆り出される事はまずない(事件に巻き込まれる事はある)んだけど、私は私で毎日色々と忙しいのだ。
ああ、本当なら今頃は、親友である舞川由奈ちゃんと一緒に、
バラ色の高校生活を楽しんでいるはずだったのに、
どうしてこんな日常とは程遠い生活に身を置いているのだろう?
借金取りにさらわれて海外に売り飛ばされそうになるし(実際にさらわれたのは由奈ちゃんだったけど)、
殺し屋に命を狙われるし(実際に狙われたのは柊さんだったけど)、
同居している况乃さんはそんな借金取りや殺し屋よりもずっと恐ろしくて血も涙もないような人だし、
もう一人の同居人は頭はおバカだけど、
人身売買のグループや裏のマフィアといった怖い組織に一人で乗り込んで潰すような破天荒な強さだし。
そう言えば最近、とある殺し屋組織で最強と言われていた元殺し屋の女の子も同居する事になって、
これがまたあのおバカと絵に描いたようにソリがあわなくて、毎日喧嘩ばかりで・・・・・・。
いや、もうこの話はよそう。
今は何もかも忘れて、少しでも長くこの幸せなひと時を味わっていたい。
そう思った私は、布団を頭の上まで引き上げた。
と、その時だった。
どごぉおおおん!