6.プランキッシュ・ゲリラの面々
※書籍化の予定でしたが、諸事情により未書籍化となりました※
※文体に齟齬が生じるため、掲載当初のまま再掲載します※
※今見ると文章がつたないですが、ご容赦ください※
六 プランキッシュ・ゲリラの面々
コフィン・エクスプレス以降、授業の成績はチームごとに発表される。
二回生四月入学組では『プランキッシュ・ゲリラ』がトップ独走中だった。
――プランキッシュ・ゲリラ(prankish guerrilla)は訳すると『悪ふざけのゲリラ』や『いたずら好きな遊撃兵』となろうか。あまりにもふざけた名前という事で名称変更を言い渡されるところであったが、十五歳入学生が三人も居たため、自然消滅すると思われそのまま放置された。
それが今まで続いているのは、教官達からすれば誤算だった。
プランキッシュ・ゲリラは個性的な人間の集まりである。
リーダー格のグレイスは、アカデミーのあるアスリード恒星系惑星ワイストン出身であるが、住んでいたのは、アカデミーの丁度百八十度反対側の一般居住区。法務課程と操縦士課程を取っている、十五歳入学組だった。チーム唯一の女性で日本舞踊やバレエ、社交ダンス、ピアノ等習い事は一通り出来るが、何故か料理がからっきしダメで、サバイバル料理になってしまうのである。
同じく十五歳入学組で操縦士課程と火器管制課程のジーン・アルファイドも料理が出来ない。戦場でのサバイバルナイフの扱いは超一流と言っていいのに包丁になるとさっぱりダメで、ジャガイモの皮も満足に剥けない男である。前にも記載したが、感情の起伏がわりと激しい方で『歩くグレネード(手榴弾)』の異名がある。それを本領発揮したのは現在まで一度きりである。
もう一人の十五歳入学組は何度も出ている医務課程のカイル・オービット。彼は料理が得意なのはチームにとって救いである。が、話の内容が時と場合によって物騒になるので用心が必要である。
そして十七歳入学の年長なのが『キューティクルになにをする〜』と騒いだフレッド・ノイシュタイン。癖の無い銀の長髪がトレードマークで髪は腰の位置まである。科学技術課程専攻。既に何本か学士論文を発表している逸材である。
最後が十八歳入学のチーム最年長で、一度社会経験と他大学を経験している技術管理課程のウォン・リーである。唯一の汚点は、フレッドと共同研究した時、薬品で二人ともトリップしかかった経験である。この最年長でも現在十九歳という、プランキッシュ・ゲリラは若いチームである。
チームを組むのには条件がある。
・ チーム内に操縦士課程二人、法務、火器管制、医療、科学技術、技術管理一人の各専攻生を含むこと
・ 上記専攻生が一人でも欠けたら再度チーム結成し直し
・ チームは何度組み直しても良いが、その分マイナス評価になる。
つまり、一度組んで長続きしているチームが、チームワークと成績がよいとの事で評価は高くなる。プランキッシュ・ゲリラは、一度もチーム組み直しをせずここまで来た数少ないチームの一つであった。
新入生にとっては目標となるチームである。
が、曰く付きのチームである事もあっという間に知れ渡っていた。
「プランキッシュ・ゲリラの先輩達って、相当凄いらしいぞ」
「グレイス・九条先輩は法務課程の模擬法廷で連邦大学の教授やり込めて胃潰瘍で入院させたらしい」
「火器管制課程のジーン・アルファイド先輩は射撃とサバイバルナイフの扱い、相当なものだそうだ」
「カラオケ行くとマイク離さないって、ほんとかな?」
「『歩くグレネード(手榴弾)』ってあだ名もどうも本当だって、同僚の処分に納得出来ず、教官室で派手にぶち切れたって」
「カイル・オービット先輩は、解剖実験になると人が変わるって。医者になる腕は確からしいけど。前に羊の内臓は人間と似てるって食堂で発言して食欲減退者を続出させたらしい」
「フレッド・ノイシュタイン先輩は勝手に髪の毛触られると切れるって。今回のバスジャックでも犯人を問答無用で気絶させた要因はそれらしいぞ」
「それだけじゃないって! 学位論文のための液体爆薬研究で、試作中に実験室半壊させたって聞いたぞ」
「それはおれも聞いた!」
「ウォン・リー先輩。この人は社会人経験してから入校したらしい。普段はメンバーの中でもの静からしいが、辛いものが好きで、唐辛子十個入った麻婆豆腐ぺろっとたいらげたとか……」
「これって全部本当かな?」
――すべて本当です。
こんな彼らにも複雑な事情があって、それぞれ生きるためにアカデミーに入校している。
新入生に多い『憧れて』という理由は無い。
住居寝食付きで給料を貰いながら勉強ができて、しかも資格も取れるというのが受験した理由だ。
こんなメンバーがチーム員のプランキッシュ・ゲリラ。
教官達に言わせればプランキッシュなんて可愛いものじゃなく、悪意の固まりだとか。