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4.お帰りなさいフレッド、いらっしゃいミヤケ君

※書籍化の予定でしたが、諸事情により未書籍化となりました※

※文体に齟齬が生じるため、掲載当初のまま再掲載します※

※今見ると文章がつたないですが、ご容赦ください※


四 お帰りなさいフレッド、いらっしゃいミヤケ君




 事情聴取はそれほど時間がかからなかった。

 バス内部からの映像と音声が役に立ったようである。

 結局グレイスはミヤケが定刻に入寮出来なかったため、外出許可はおしゃかになって不機嫌そうである。

 フレッドとミヤケの二人が寮に帰った時、派手にクラッカーが鳴った。

 パン! パン! パン!

 お帰り、いらっしゃいの声が次々とかかる。

「しかし、犯人も人を選んで人質作れよな〜」

「おれ達だったら、お前は絶対ご免だぜ」

 『わっはっは』と笑いが起こる。

 誰も『警備専門技術員養成校』からスカウトが来る人物を相手にしたくないのである。

「今日の処分は?」

 グレイスがフレッドに問いかけた。

「おれが反省文二十枚、ミヤケは二枚」

「えっ、ミヤケ君にも出たの?」

「一応、何であのバスに乗らなければならなくなったのか、聞いてはいたらしいが文章に起こせだとさ」

「……カズヤ・ミヤケ君でいいのよね、名前」

「はい、合っています」

「貴方、反省文提出最速記録更新したわよ。入寮日当日提出は居なかったから。貴方が初めてよ」

「それって、喜んでいいんですかね? 非常に泣きたい気分なんですが」

 げっそりとした顔をしたミヤケにグレイスが声をかけた。

「とりあえず、入寮の手続きを完了しちゃいましょう。医務課程のカイル、さっさと血液検査やってちょうだい」

「へいへい、やらせて頂きますよ」

 カイルがミヤケの左手から血液採取している間に、グレイスが入寮の手続きをして行く。

「緊急連絡先はご両親の元で良いのかしら」

「はい」

「おい、彼女の元でもいいんだぞ、居ないのか?」

「去年二十人もの女性を連絡先にあげた奴にいわれたくはないわよねぇ?」

 現に去年、実際にフレッドがそれをやり、一カ所に絞るのが難しかったという笑えない事実が存在する。

「……家族の元で結構です」

 ミヤケが小さくなりながら答えた。

「別に恥じる事はないわよ。普通は両親の元を指定するもの。こいつの方が異常なの!」

 フレッドを指差すグレイス。

「もてる男の特権だ」

「言い換えれば女にだらしない男の特権よね」

 容赦のカケラもない言葉に言いくるめられて行く。

「入寮の手続きは終わったわ。次は入寮の説明なんだけど、それは私の担当ではなく、ライトニング・ブルーのロバートが担当だから代わるわね」

「あの、ライトニング・ブルーって何ですか?」

「入学生が最初の一ヶ月乗り切った後にチームを結成するの。そのチームの一つよ。私は『プランキッシュ・ゲリラ』のグレイス・九条、よろしくね」

 そう言ってグレイスはロバートと入れ替わった。

 ミヤケが寮での注意事項として聞いた事は……

 ・ 朝五時四十五分起床

 ・ 朝六時正門前集合し、連邦旗掲揚と体操を行う

 ・ その後マラソン五キロ走る

 ・ 体操服から制服に着替え、七時半朝食

 ・ 少し休憩を挟んで八時半授業開始

 ・ 十二時まで午前授業

 ・ 午後の授業は十三時から十六時半まで

 ・ その後自主トレーニング

 ・ 夕食は十八時厳守、遅れた場合夕食抜き

 ・ 消灯までの時間は自由時間

 ・ 消灯は二十三時

以上であった。

守れなかった場合は、如何なる理由があろうと、フレッドの様に反省文行きだった。

「不可抗力で遅れた場合も反省文なんですか?」

 ミヤケが疑問を口にした。

「もし災害救助要請が出て遅刻したらどうするんだい? 理由は関係ない筈だよ」

 ロバートが答えた。

「そうですね」

「明日は入校式。各教官方から有り難いお話も聞けると思うよ。覚悟してね」

 グレイスが言った。

「え?」

 覚悟とはどういう意味だろう。

 とりあえず先輩方に反省文の書き方を教わりながら地道に作成して行くミヤケだった。

 さて、もう一人、反省文を言い渡されたフレッドはものすごい勢いで文章を作成していた。

 本来であれば、五〜十枚程度の反省文で済んだのに二十枚まで増えたのは理由がある。

 『キューティクルに何をする〜!』の一言が原因だった。

 髪の毛三本の為に、犯人に襲いかかり他の乗員を危険にさらした事、そして犯人を問答無用で気絶状態にした事が反省文の枚数を増やした。

 フレッドを含む『プランキッシュ・ゲリラ』のメンバーは、勉強はできるが問題児の集合体だった。こちらはなんやかんや言って反省文の常連である。

 書き慣れているせいもあってものの三十分で反省文を仕上げていた。



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