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43.アカデミー帰還

※書籍化の予定でしたが、諸事情により未書籍化となりました※

※文体に齟齬が生じるため、掲載当初のまま再掲載します※

※今見ると文章がつたないですが、ご容赦ください※

四十三 アカデミー帰還




 一月三日、この日はアカデミーに帰還する日である。

 地元の空港には、真紀子叔母をはじめ重成、智成と、何故かテニス部の仲間が団体で見送りに来ていた。

 真紀子叔母が言う。

「楽しい帰省だったわね。これからも体に気をつけて。皆さんも同じよ。体を大事にね」

 その言葉に各々返答するプランキッシュ・ゲリラとライトニング・ブルーのメンバー達。

 テニス部のメンバー達はグレイスに声をかける。

「またシルバーグレーのコートに出会えたな。下に着込んでいるのはアカデミーの制服?」

「これも銀河連邦宇宙航空局の制服。アカデミーは準職員扱いだから、同じ制服着るの」

 へえ〜っと上からしたまでじっくり見るテニス部員達。

 銀河連邦宇宙航空局の制服は、滅多にお目にかかれるものではない。

 そんなテニス部の仲間達から声がかかった。

「また帰ってくる事があったら、今度はちゃんと連絡寄越せよ。出来るだけ会えるようにみんな予定を調整するから」

「わかった、ありがとう」

 別れを惜しんでいる時、ジーンが寄って来てグレイスに声をかけた。

「グレイス、そろそろ行かないと搭乗時間ギリギリになるぜ」

 こちらもシルバーグレーのコートの下に男性用の銀河連邦宇宙航空局の制服を着込んでいる。これだけで、先日出会ったときと雰囲気ががらりと変わる。同い年位の青少年なのに、一人前の社会人として存在している。そんな感じだ。

「わかった」

 そうジーンに声をかけて、またテニス部員に向き合うグレイス。

「じゃあ、時間だから。またね」

 そう言って元仲間達に背を向けると、ジーンとともに現在の仲間と合流し、搭乗手続きに入っていった。

「なんか、別世界に帰るみたいな感じだな」

 テニス部員の一人がそう言う。

「シルバーグレーのコートの輪の中に入っていく……確かにそう思える風景だぜ。あそこだけなんか空気が違う」

「ホント、引き締まっている感じに見えるな」

 そう言っている間にグレイス達は搭乗口を抜け、彼らの前から姿を消した。


「座席は……っと」

 今回の帰りの座席は、お正月三ヶ日の最終日と重なったため、まとまった場所を確保出来ず、帰省時と異なり全員バラバラである。

「俺ここだ」

「俺はこっち」

「私はその前」

「荷物引き渡し所で合流しようぜ」

「了解」

 そう言って各々の座席に腰をかける。

 グレイスはコートを脱ぎ、ジーンの前の座席に制服のジャケット姿でシートベルトをして腰掛けていた。

 手には勿論六法全書の解説本を持っている。

 ここから約二時間でアカデミーのある特別行政府の最寄りの空港に到着する。

 十二時間の時差を二時間で解消するのは難しいが、明日までには何とかできるだろうと読んでいるグレイスだった。

「失礼」

 グレイスは通路側の席で、窓側の乗客が来たようだ。

 シートベルトを外して座りやすいように一旦通路に出ると、再び座席に腰掛け、六法全書の解説本を手に取った。

 グレイスは夢の中に入らず、本を読む事で機内の時間を過ごした。


 航空機は順調に航行し、予定通り空港の滑走路にタッチダウンし、駐機場に到着した。

 慌ただしく人々が立ち上がる。

 時差の関係で、夕方に発った筈なのに、その日の午前中に航空機は到着した。

 グレイスは起こさなければならない人がいた――ジーンである。

 ジーンは暴睡状態にあり、タッチダウンの衝撃にも起きなかった。

 隣の席の人が通路に行けず困っている。

 それを見て、グレイスは持っていた六法全書の解説本で容赦なく頭を引っ叩いた。

「ジーン、起きろ。他人の迷惑だ」

 それを聞いて『へっ?』と慌てて起きた。

「す、すみません」

 隣の席の男性に思わず謝ってしまうジーン。

「お前、手加減して起こせよ」

「手加減したら起きないでしょう?」

 こう切り返されぐうの音が出ないジーン。

 荷物預かり所で預けた荷物を待っている間、ジーンはずっと引っ叩かれた事に対して文句を言っていた。

 が、同情を集めようとしてもなしのつぶて。

 全員がグレイス側についてしまい、反論の余地なし。

 引っ叩かれた頭をかきながら他のメンバーと一緒にアカデミーに向かうのだった。




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