42.レンタルされたグレイス
※書籍化の予定でしたが、諸事情により未書籍化となりました※
※文体に齟齬が生じるため、掲載当初のまま再掲載します※
※今見ると文章がつたないですが、ご容赦ください※
四十二 レンタルされたグレイス
境内の外れで待機していたテニス部員にレンタルされたグレイスは、叔母に電話をして事の次第を伝えると、テニス部員達と一緒に行動をともにした。
「水臭いぜ、グレイス、連絡なしで帰省してるなんて」
「だからさっきも言ったでしょう、私個人ではなくアカデミー仲間と一緒に帰省してたの! その場合、普通彼らと行動を共にするから個人行動はしないし、だから連絡はしないでしょう?」
「だが、今こうして行動しているじゃないか!」
「それは偶然が重なったからでしょう? 本当であれば初詣の予定もなかったもの」
わいわいとにぎやかな集団が移動する。
「お前のこのコート、アカデミーの制服のコートか? 九人お揃いで目立ってたが……」
「これはアカデミーのコートではなく、銀河連邦宇宙航空局のコート」
「へぇ〜、これが……」
皆、見慣れないコートにしげしげと見つめる。
「何か、お前一人が先行ってるよなぁ」
「そぉ? 学生って意味なら、皆と同じだけど?」
「でも、卒業したら就職決定だろ?」
「それは言えてるわね、その分今苦労してるけど」
「やっぱり勉強大変か?」
「それは勿論。航宙船の操縦技法から法律まで、勉強してますからねぇ」
お互いを見る。
たった一歩の距離が凄く隔てて見える。
「みんなは、海峰ハイスクール行って、またテニスしてるんでしょう?」
「あたり! だけど俺たち二年生は事実上引退だもんな」
「そうそう、来年受験控えてるし」
「あれ? 海峰の大学部行くんじゃないの?」
「行く奴も居るし、外部受験する奴も居る。テニス部はほとんど外部受験するからな」
「じゃあ、来年のテニス雑誌に載る事ないんだ?」
「あれ?気にかけてくれていたのか?」
「時々雑誌見てた」
「そっかあ、ありがとな。でも来年は俺たちが抜けて今の一年が主力になっていると思う」
「わかった」
ちょっと寂しいような気がするグレイスだった。
「そういえばグラハム・シードに会ったわよ?」
『は?』という顔をするテニス部員達。
「グラハム・シード? そういえばこの頃公式戦出てなかったな。何処で会ったんだ?」
「アカデミー」
ここでまたもや『は?』という顔をするテニス部員。
「アカデミー?」
「うん、アカデミーの廊下で声をかけられた。彼、アカデミーに進学していたのね。知らなかったわ。向こうが試合望んできたから、私、うけることにして彼と試合したもの」
「試合? お前がか?」
「うん、やった」
「どっちが勝った?」
「私。さすがにパワーで押されたしブランクもあったから最後までキツかったけど勝った」
固唾を飲んで聞いてたメンバーが、どっと疲れを見せた。
「グラハム・シードに勝ったぁ? 俺たちも勝利するのが難しかった相手だぜ?」
「ここの差かしら?」
グレイスはそう言って頭を指した。
「彼は結構パワー勝負なところがあるでしょう? 短気なところもあるし。利用させてもらったわ。前後左右に揺さぶりかけて、球を絞り込めないようにしたら、向こうがペース崩して勝負がついた」
とのこと。
「パワーはどうしても男性の向こうの方が格段上。ならゲームメイクで勝負するしかないでしょう? ネット際のプレーが結構効いてたわね」
それを聞いて唖然とするテニス部員達。
「確かにお前はゲームメイクで勝負する傾向があったが……。グラハム・シードに勝ったか……」
明後日の方向を向いて呟く部員達。
ジュニアハイスクール二年生からレギュラーは伊達じゃあない。
「さて、拉致された人間としてはこの後の行動を知りたいところね。一応夕食前までには帰りたいのでそのつもりで」
結局、この面々『テニス馬鹿』であって、正月早々ストリートテニスをする事になった。
いうなれば、テニスで会話。
グレイスも参加する事になり、それぞれ楽しんだようである。




