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40.あけましておめでとう

※書籍化の予定でしたが、諸事情により未書籍化となりました※

※文体に齟齬が生じるため、掲載当初のまま再掲載します※

※今見ると文章がつたないですが、ご容赦ください※

四十 あけましておめでとう




 クリスマスが終わり、大晦日からJP地区で言うお正月にかけてはジルベスターコンサートの中継をテレビで見て、本格的に年始に突入した。

 おせち料理や雑煮の手伝いをして、食事した後、交代でアカデミーに出勤している教官に、グレイス達は通信を送った。

「A Happy New Year!」

 これは、休暇突入前のアカデミー側の指示であり、一月一日は健康状態が正常である事を知らせる挨拶を兼ねた状況報告の通信を送る事になっている。

 グレイス達はグレイスの叔母の家に居るメンバー九人総出で挨拶を送った。

 勿論、通信で映る上半身は制服姿である。

「よう、お前らも元気そうじゃねーか」

 そう通信に出たのは『親父』だった。

「新年早々、お疲れさまです」

「何言ってる、お前らの事だ、一月一日から当番とは運が悪いこととか思ってるんだろう」

「それは否定しませんが、純粋にお正月おめでとうと言っているわけで……」

「正月? ああ、お前らJP地区に行ってるんだったな。こっちには正月はないぞ。しっかり明日から通常シフトだ」

「ご苦労様です」

「レポートは済んだのか」

「まあ、大体終わりました」

「戻ったら、いつもより早いピッチで授業が進むからな、覚悟して帰ってこいよ」

 それを聞いて、ゲッとする九人。

「マジですか〜」

 とジーンが呟き、その音声もしっかり教官側に伝わってしまった。

「おう、マジだ」

 その通信を見ていた叔母は、後ろでそっと苦笑している。

「次の通信入るかも知れないから切るぞ。プランキッシュ・ゲリラとライトニング・ブルー異常なし。チェック完了。じゃあ、明後日の集合時に会おう。間違っても遅刻するなよ」

「了解」

 これで通信は終了した。


「ねえ、親父の話っぷりじゃあ、授業再開早々、とんだ災難に遭いそうね」

「予習のペース、少し上げといた方がいいかも知れないなあ」

「まずは、制服から私服に着替えましょうか」

 そう言ってグレイスは自室へ、男性陣は離れへ移動する。

 少し時間を置いてから、グレイスは離れへ移動した。

「予習混ぜて」

 既に提出課題を済ませていた九人は、予習の体制に切り替えた。

「早めに課題やっといて正解だったぜ」

 それぞれテキストを広げる。

 黙々と勉強を進める九人。

 今回のこの休暇のいいところは、疑問が出れば、すぐ答えてくれる仲間が側に居る事である。

「グレイス、法学概論について質問、この三十九番の設問って、どうなるんだ?」

「あっ、俺も聞きたい」

 こうなれば、グレイスの解説が始まる。

「他にこの問題で引っかかっている人いない? じゃあ、解き方からはじめるけど、まず答えはどうだと思った?」

「第四十二条抵触かと」

「えっ、俺は第四十二条補足一抵触だと思ったけど」

 一般法学概論を現在受講している者達がわいわいはじめた。

 それを見て、既に受講を終えた者も、どれどれと参加して来る。

 ライトニング・ブルーで法学専攻のリウも一緒に解説に加わった。

「まずこの設問からよく考えて。被害者の状況、そして訴えられた罪状。これイコールになってる? 良く読んで。一見正しいように見えるけど良く読むとイコールになってないでしょう? だから、罪状そのものが違うとなってくる。いきなりストレートに法律に引っ掛けないで、設問そのものを疑って。訴えられる罪状としては、この場合第四十条が適切。この場合無罪を主張しても、軽くて執行猶予付きでの有罪になるでしょうね」

 成る程とメモを取って行く。

「んじゃ、この四十一番の問題は?」

 どれどれと問題を見る。

「これは、航宙艦上の問題ね。係留状態ではなく、また、それぞれの惑星領外での問題だから、連邦法の適用になる。ここまではいいわね。これは実際の航宙時の案件。だからこれは連邦法ではなく、連邦航宙法の適用となる。その中の『航宙時に於ける人権の保護法』が絡んで来る問題。これで分かる?」

「あ〜、じゃあ『航宙時に於ける人権の保護法』の第二十三条が適用か?」

「その通り。これは操縦士課程の連中は忘れちゃいけない内容だし、連邦総合航宙士なら覚えてなきゃいけないわ。今のうちに頭に入れる!」 

 ライトニング・ブルーの法学専攻のリウも頷いている。

 その言葉に、法学概論を専攻していない学生もメモを取っていた。

 法学生であるグレイスとリウは更に意見交換して深いところでの理解の擦り合わせをしていた。

 そこへ真紀子叔母がお茶を持ってきた。

「お正月早々、勉強なんて大変ね。今日くらいお休みしても罰は当たらないのではないの?」

 その言葉に、まさかぁ〜、と返答するアカデミー生達。

「手を抜けばすぐバレますからね。本来であれば明日から授業な訳ですし。やれるところはやっておかないと」

 そう言ってまた勉強に取りかかる。

 それでも、と声をかけようとしたところに、グレイスが物理学で質問して来た。

「フレッド、質問。物理学の三十五問目、これどう解いていけばいい?」

 フレッドが問題を見る。

「ああ、これはこの方程式を使うんだよ」

 そう言って、ノートに方程式をすらすら書き込む。

「この方程式で良かったんだ、じゃあ、こう展開していくの?」

 こんな会話を聞いて叔母は溜め息をついた。

「勉強漬けもいいけれど、時間が空いたら気分転換に神社に初詣にでも行ったら?お正月前も課題をやってばかりいたのだし。この辺りなら、一月一日元旦のお参りは普通だわ。せっかく来たのだから『お正月』気分を味わっていっても損はないと思うけれど」

「それもそうですね、皆、一段落ついたら行ってみましょうか?」

 このグレイスの一言で、初詣が決定した。




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