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3.アカデミーの困った人たち

※書籍化の予定でしたが、諸事情により未書籍化となりました※

※文体に齟齬が生じるため、掲載当初のまま再掲載します※

※今見ると文章がつたないですが、ご容赦ください※


三 アカデミーの困った人たち




「フレッドが音声情報送って来ているけど、これ、どうするの?」

 グレイスが言った。

「惑星警察が、協力を要請するどころか、連邦関連の部隊を排除したいという態度が見え見えなんですがねぇ。お願いですから助けてくださいと頭を下げて来たら、文句無く見せちゃう情報だけどな。惑星政府は意地でも自分達で解決したいらしい」

 惑星警察の警察無線を聞いていたジーンが言った。

「要請が無いから、このままにしておこうか?」

 意地悪いそんな話をしていた時、情報を整理していたウォン・リーが声を挙げた。

「犯人確定です。声紋一致、おそらくこの者かと……」

 フレッドが送って来た音声を端末にかけ、旧犯罪者リストやその他の声紋リストにかけたところ、バスの中に写っている男がヒットした。

「どの情報でヒットしたの?」

 グレイスが訊ねる。

「声紋と『フィル』と呼ばれる愛称がある名前ということでクロス検索した。フレッドが名前聞いたとき、するっと答えただろ、そう言うとき、つい本音が出るんだよな」

 ウォンが見せた画像とは

 ――惑星大学在学者名簿だった。

 掲載された顔写真を見ると、確かに犯人の顔と一致した。

「なになに? 連邦大学を四度受験し、全て失敗。惑星大学に進んだ、が授業の出席率が悪くて退学扱いになる予定」

「これ、惑星警察は把握していると思う?」

「まだだろう。音声に関しては、惑星警察は正確には把握していないだろうし、事件に対してその場しのぎで対応しているくらいだから」

「つまり、解決する能力が我々より劣っていると?」

「まあ、一概には言えんが。俺たち連邦政府は流動的に動く、惑星政府は慎重に動く、が鉄則だからな」

 こんな話をしているとき、現場中継の画像が、変わった。バスの移動を知らせて来たのである。

 惑星警察は車止めを外した。犯人からの要求と思われた。

「フレッドが上手く誘導したのかな」

「向かってくる場所は何処だと思う?」

 みんながう〜んと悩んでいる時、グレイスが言った。

「連邦大学じゃないの?」

「なんで?」

「四回も落ちて、行きたくない大学に行く事になって、そこで『退学』となるとヤケを起こすかも。目的は……逆恨みって奴でさ、四回も受験落とした連邦大学じゃない?」

「でも、頭は良い方なんだろ? 惑星大学在籍だし。……性格に難ありか? だから試験落ちたのか? 連邦大学も政治家を数多く出しているから、性格診断に引っかかると点数高くても落とすしねぇ。まぁ、その点についてはアカデミーも同じだけどさ」

「こんな事件起こしているし、短絡的だ、こりゃ」

「フレッドからまた何か入電あるかも知れないから聞いていようよ」

 フレッドの腕時計でキャッチした音声が送られてくる。確認して行くと……やはり最終目的地は連邦大学のようだ。

 黙って聞いていた『親父』が、このとき初めて口を開いた。

「特別行政府入り口検問所に人を集めろ」

「了解」

 指示を検問待機所に伝える。

 特別行政区の方も、慌ただしくなって来た。


 さて、バスの方はというと――

 車止めを突破し、目的の特別行政府内にある連邦大学を目指していた。

 バスの後ろには大量のパトカー。

「これだけのパトカーに追いかけられるのって何か初めてだぜ。わくわくするな」

「喜んでいる場合でもないでしょう。私はこの状況嫌だわ」

「えっと、僕らは何をしていれば良いんでしょう」

 質問して来たミヤケに、フレッドが答える。

「こうやって頭に手を上げて、動かなければいいのさ。話はOK貰っているからしても良いんだけどな」

 バスは走る。大量のパトカーを引き連れて。

 バスが『特別行政区』の入り口に着た時、バスが停止した。

「何をしている、さっさと中に入らないか!」

 犯人が焦ったように言う。

 だが……

「おい、フィル、これから先は入所パスがないと中に入る事は出来ないと知っていたか?」

「路線バスだ、運転手が持っているだろう」

「運転手だけじゃダメなんだよ、乗員も全員チェックされる」

「何?」

「知らなかった?……ということは、フィル、あんたパス持ってないだろう。お前さんがこのバスに乗ってる限りバスは敷地内に入れないという事だ」

 犯人のフィルは本当に知らなかったらしい。ぽかんとした後言った。

「お前のパスをよこせ」

「ムリだな、入所パスは顔写真入りだ」

 だんだんと犯人のフィルの頭に血が上って来たらしい。

「では、お前の命と引き換えに通してもらうとするか」

 フレッドに銃を向けて静かに立たせた。

「これからは静かにしてもらおう。こいつの命がどのくらいのものか見せてもらおうじゃないか」

 そう言って、フレッドに向かってレーザー銃を一発威嚇発射した。

 ――これがいけなかった。

 フレッドの髪の毛三本を焼き切ってしまったのである。

「……おれのキューティクルになにをする〜〜〜!!」

 髪が命? のフレッドの逆鱗に触ってしまったのだ。

 フレッドは犯人のフィルに襲いかかり、フィルが握りしめていた銃をたたき落とし、鳩尾を蹴り上げ、その後体落しをかけていた。

 それは一瞬の出来事で、音にすれば……

 ドカ! ゴキ! バキ! 

 こんな感じだったかも知れない。

 犯人のフィルを気絶状態にし、フレッドがバスの運転手に声をかけた。

「この出口の扉、開けてくれる?」

 バスの運転手は、無言でその言葉に従った。

 スイッチを押し、運転席横にある出口を開ける。

 検問所の敷地前から、特別行政府の管轄だ。

 バスの扉が開き、駆け寄る特別行政府の警備員達。

 その中に『ぽいっ』と投げられた犯人。

「そいつ犯人、これ、持ち物」

 といい、レーザー銃とボストンバックを渡す。

「あの、莫迦」

 通信を聞いていたグレイスが思わず言った言葉だが、見守っていた他の関係者も同じ気持ちであった。

「早く検問通過してくれ、おれにはレポートが待っているんだよ」

「何を言っている、事情聴取が先、レポートは後」

「おれに反省文地獄を見ろと? ミヤケは入寮時間に遅れたのに。」

「アカデミーの厳しさは知っているさ。でも事情聴取が最優先事項。アカデミーには伝えておくから」

「そんなぁ〜」

 百九十近い背の、髪のキューティクルが大事な男の情けない言葉が、現場に笑いを沸き起こしていた。




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