31.本当のこれから
※書籍化の予定でしたが、諸事情により未書籍化となりました※
※文体に齟齬が生じるため、掲載当初のまま再掲載します※
※今見ると文章がつたないですが、ご容赦ください※
三十一 本当のこれから
グレイスの家族も無事に帰宅し、学校祭は無事終了。
叔母達を見送ったグレイスは、いつものように寮の共有スペースに居た。
そこに顔を出したのがチームメイトの四人である。
「ご苦労さん、ホスト役」
「こんなに疲れると思わなかったわ」
紙コップに入ったコーヒーを飲む各々方。
「グレイスの家族に初めて会ったな。いつもは話の中にも出てこないからどんな人かと思ったが……いい人っぽかったな」
「あー、俺もそう思った」
それぞれが感想を述べ合う。
メンバーは、グレイスが養女である事を知っている。
「だからアカデミー受験したのよ。ぬるま湯に浸かっているようで自分が嫌になりそうだから」
「ぬるま湯?」
「いい人達なのは認めるわ。だから家を出たの。甘えてしまいそうだったから」
「そんなもんかねぇ」
「そんなものだったのよ……貴方達はどうだったの?」
「一応、両親に当ててチケットは送ったよ。予想通り来なかったけど」
カイルがそう答えた。
「そうそう、みんな、『親父』に文句いう材料が出来たわよ」
「どういう事だそれ?」
そこで、自分達の実習風景が映像として使われていた事を説明した。
「そんな目的があって、あの親父、普通はしない実習組んだのかよ」
「本人の許可を得ず映像を放映した訳だからプライバシーの侵害に当たると思われるけど、学校内の訓練の風景だから、何処まで踏み込めるかちょっと分からないわね。実習の初めから最後のハイタッチまでバッチリ放映されていたわ」
それを聞いて焦る男性陣。
「ちょっと待て、では俺たちのでこピタ姿もか?」
「そりゃもう、はっきりと」
『親父』の奴、絞めてやる。
そう思ったのは、果たして何人だったのか。
「そう言えば、あの痴漢、どうなったの?」
一本背負いして縛り上げたまでは覚えていたが、その後の対応については触れる機会がなかった。
「ああ、あいつか。被害にあった女性が大事になると困ると言って、訴えを取り下げるとの事になって事は収まったんだ。だが、被疑者は痴漢常習者リストには載る事になって、当事者は青くなっていたな。あと、招待したホスト役の一回生が反省文行き。素行不良者を呼んだ罰としてな」
「なんだ、それくらいで済んだの。まあ、良かったとでもいうべきなのかしら」
「しかし、聞いたぞグレイス。それこそ見本になりそうな綺麗な一本背負いだったそうじゃないか」
「被疑者が真っすぐ私のところに飛び込んで来たから、こっちもスポーンと楽に投げられたわ。しかし馬鹿よね。よりに寄ってアカデミーで犯罪なんて。犯罪取り締まりの本家本元で犯罪したようなものじゃない。聞いた時、被疑者の精神状態を疑ったわよ、私は」
「ま、それ以外に大きな事件も迷子もなかったし、めでたしめでたしかな?」
「そうね」
それぞれ感想を言い合う。
「さて、祭りは終わった。明日からまた勉強地獄の日々か」
「慣れたでしょ、もう」
「気合いを入れ直していただけ」
「学生生活ももう少ししたら後半に入るのか。確かに気合い入れ直しだな」
「俺たちのこれからも、明日以降の行動にかかっている訳か」
「やりがいがあるな」
各々が気持ちを新たにした。
今は祭りの後――
浮かれている場合ではない事をそれぞれ心に刻み、明日からの授業に備えた。




