22.嵐の前
※書籍化の予定でしたが、諸事情により未書籍化となりました※
※文体に齟齬が生じるため、掲載当初のまま再掲載します※
※今見ると文章がつたないですが、ご容赦ください※
二十二 嵐の前
コフィン・エクスプレスが終わり、登山救助訓練までの間の一息ついた頃、アカデミーの副校長が変わった。前副校長が定年退職したためで、新しく着任した副校長は、専任校の副校長をしていた男であり、アカデミーの副校長になるということは、いわば大抜擢という感じになる。
印象はというと……
「俺達には合わん!」
という者が大多数だったらしい。
グレイスにとっても同じ意見を持たざるを得なかった。
何故かというと……
「まぁ、トップクラスに女子が居るとは、何と嘆かわしい。女性というものは男性の一歩後ろを一歩下がってついて行くものでしょうに」
と『おねえ言葉』を使って言ってくれたもので……。
背筋をゾワゾワさせるアカデミー生達。
――いつの時代の人間だ、お前は!
という感情を持たせたのが第一。
トップチームのチームメイトの名を汚したと言うのが第二。
そして、グレイスをけなしたという事は、他の二回生をも同時にけなしたというのが第三。
よって、二回生にとってはイコール不要人物が来たという事になる。
「何あの男、時代錯誤もいいところだわ。栄転という形で追い出されたんじゃないかしら」
どうやら、この『副校長』は、グレイスの感情の導火線に火をつけてくれたらしい。
グレイスの場合、導火線が長いため、感情の爆発まで時間がかかるが、一度爆発したら手が付けられない。
今は、まだじりじりと導火線を焼いているところか。
ここで下火になるのを待つチームメイトであった。
今回のこの副校長は、ある意味じっとしていない。
何にでも首を突っ込みたがるタイプである。
当然、今回行われる二回生の登山救助訓練の予定にも首を突っ込んで来た。
教官達も目障りにしているようであったが、本人はまるで気付いていない。
就任後初めてとなる大きな救助訓練であり、自分の事のように横やりを入れては教官達の不評を買っていた。
気付いていないのは、よいことなのか、悪い事なのか。
おかげで、教官達がピリピリし始め、それを学生達が気付き始め……。
アカデミーには、良くない、どろどろとした空気が校内を包み込み始めていた。
校長としても、その事には気付いていたが、どうにも出来ず。
ずるずると日が過ぎて行った。
そうした中、グレイスがサエキ教官の表情を見ていった。
「サエキ教官、そうとう溜まっているわね」
「何が?」
「決まってるじゃない、ほら、副校長が何か言うたびに青筋立ててる」
「言えてるな、あれじゃ、文句も言いたくなるだろうに、青筋のみでぐっと堪えてるんだ、さすがだな」
「でも、問題よね」
「何が?」
「その議題が、私たちの登山救助訓練だってことがよ」
「登山救助訓練、一波乱あるかもね」
生徒達は今後の事を考え、ドッと疲れを見せていた。




