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18.されど時は過ぎて行く

※書籍化の予定でしたが、諸事情により未書籍化となりました※

※文体に齟齬が生じるため、掲載当初のまま再掲載します※

※今見ると文章がつたないですが、ご容赦ください※

十八 されど時は過ぎて行く




 コフィン・エクスプレス終了後、アカデミーには学園祭が待っている。

 上級生は、それに気を取られがちである。

 三年に一度のこの学園祭は、必ず一度は体験出来るよう組まれている。

 逆に言えば、アカデミーは三年で卒業。三年に一度の開催なので、二度体験する者は居ないという事である。

 普段の鬱屈をはじけてしまえ! のごとく、企画をしていく三回生。

 その勢いに巻き込まれつつも、コフィン・エクスプレスのために講師をする二回生達。

 アカデミー全体が異様な雰囲気を醸し出し始めていた。

 その浮かれ具合を見た教官が、三回生に喝を入れた時もあった。

 しかし、一度テンションが上がると、そう落ちないのである。

 教官の溜め息を聞きながら、それでもハッスルする三回生だった。


 さて、コフィン・エクスプレス中の一回生は、学園祭どころではない。

 試験に落ちれば、参加資格が無いのである。

 せっせと勉強に明け暮れ、知識を頭に詰め込んで行く。

 一度喉元過ぎればなんとやらという言葉もあるが、『喉元過ぎても頭の中に知識を残しておかないと試験に受からず』の現状が待っている。

 この一ヶ月で習った事は多い。広範囲に及んでいる。

 この試験に合格して、今も勉学に励む上級生を見ると、尊敬の目で見てしまう一回生であった。

 コフィン・エクスプレス中の一回生からは、どのような問題が試験に出されたのかという質問が増えて来た。

「同じ設問が出るとは限らないぞ」

 という前提をつけて、問題および回答をする二回生。

「時間が足りない」 

 という声が、あちこちから聞こえ始めていた。

 だが時間は止まらない。

 試験まで後三日に迫っている。

 休憩する余裕も無いのか、休み時間まで教科書を開いている様である。

「あそこまでやらなくても、受かってたよな、俺たち」

「何か血走っているように見えるのは俺だけか?」

「いや、俺にもそう見えてるよ」

「中間考査受かってるんだから、もっと大きく構えても良いのに」

「やっぱ、点数とらなきゃってところが頭にあるからな。今回の合格点って、各八十点以上だろ? それ目指せば良いのに。上位の点数とる事に意識し過ぎだぜ」

 プランキッシュ・ゲリラの面々は、自分達の時と比較して冷静に観察していた。

 そこへ飛び込んで来たのは、ミヤケだった。

「先輩、教えて下さい!」

『ちょっと待てよ、今は休み時間で、ここ、廊下だぜ』という思いがあるプランキッシュ・ゲリラ。

「休憩ぐらい、しっかり取れよ」

 と言ったのは、カイルだった。

「すいません。でも、この問題が分からなくて、休憩できません!」

 とはっきり言われてしまえば、助けない訳にも行かない。

「この問題だけだ、他は自習時間に聞きにこい」 

 フレッドに言われ『はい』と答えるミヤケ。

 ――タイミングが悪いんだよな、こいつ

 プランキッシュ・ゲリラからすれば、休憩時間が割かれ、もったいないのである。

「貸せよ、ノート」

 数式の問題を見ながらすらすらと解いて行くフレッド。

「ほれ回答。何でこの公式になってこの回答になるのかは自分で考えろ」 

「はい!」

 足がまだ完治していないミヤケは、ノートを大事に抱え、痛めた足を庇いながらそろそろと自分の教室――大講義室――へ戻って行く。

「大丈夫かね、あいつ」

「聞きに来た問題はレベルの高いものだったから、コフィン・エクスプレスは大丈夫じゃないの?」

 フレッドがそう言った。

「ミヤケは、まあ合格しても、体育の教練でスパルタ指導が待ってるし?」

「そうなると、勉強で少しでも点数稼ぎしなくちゃならない訳だ」

「やっぱり初日の骨折が痛かったわね」

「そうなるとやはりあいつは『アカデミーで一番ついてない男』だな」

 お互い、うんうんと頷きながら廊下を歩く。

「受かったら受かったで『アカデミーで一番ついてない男』と言われ続けるのかな、あいつは」

「それは、そうなってから分かる事じゃないかしら。まずは試験合格が最優先事項でしょ」

「それもそうだな」

 自分達の時を思い出しながら、下級生に対応するプランキッシュ・ゲリラ。

 されど時は過ぎて行く――

 さて、彼らの未来はどうだ?




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