17.通常の日常再開
※書籍化の予定でしたが、諸事情により未書籍化となりました※
※文体に齟齬が生じるため、掲載当初のまま再掲載します※
※今見ると文章がつたないですが、ご容赦ください※
十七 通常の日常再開
さて、一般区画への外出を終え、本日から再び授業に入る面々。
気持ちの切り替えが早いのはさすがというべきだった。
朝のランニングを終え、着替えを済まし、朝食に行く
自然と集まるプランキッシュ・ゲリラの面々。
今日の朝食は洋食のようだ。パンにオムレツ、ウインナーにブロッコリーのサラダ。オニオンスープである。
ウォンお得意の激辛メニューは朝には無いようだ。
「コフィン・エクスプレス中の面々、追い込みに入ったみたいね」
「五日後に総合試験だからな」
「自習用の講師の要員増やしたけど、足りるかしら」
質問も、多岐に渡るようになって来ていて、専攻分野の上級生が対応する事が多くなって来た。
グレイスは『ハリセン』持って、講師に当たる。
最も新入生に対しては『スパーン』ではなく、『ポコン』なのであるが。
今日はプランキッシュ・ゲリラ全員で講師に当たるのである。
今日のコフィン・エクスプレスの授業は、法学、統計学、心理学、教養(音楽)である。
何故音楽の授業が有るかと言うと、アカデミー生は卒業後いろいろな方面へ配置される。場合によっては上流階級の方々との会話も考慮されるわけで、その際の基礎知識として必要との事から教科が組まれている。
さて、自習時間の対応としては、法学は勿論グレイス、統計学はウォンとフレッド、心理学はカイル、教養はジーンを主とした全員で対処する事になった。
シーンとした共有スペースに、教官役の学生の声が走る。
「この問題は、なぜ、その法律が出来たのか、歴史を考えると自ずと答えが出て来るけど……思い当たる?」
「この場合の統計は、人種間のあり方を問うているのと同じだよ、そこを念入りに考えてみて」
「心理学って、分かっているだろうが改めて言う、人の心の動きだよ。それを推理してみる」
「音楽にも歴史がある。サロンで演奏していたときもあれば、ダンス、声楽、バレエ音楽まである。さて、今回のこの音楽は、どれに当てはまる? 作曲された年代を考えると良いよ」
あくまで答えは教えない。
導きだす役目をするのが講師だ。
「まだちょっと分かりません」
こういう回答が出た時『ハリセン』が登場する。
『パコン』と音を立て、更に解説をするグレイス。
「この法律の大元は、私たちがまだ地球に足をおろしていた頃の人種隔離政策よ。これでも分からない?」
ここまで言われ『あっ』と気づく学生達。
フレッド達の方は……
「今は混血が多くてこんな統計は取れないけど、以前は取れたんだよ。はっきりと人種が別れていたから。それを考える!」
カイルはというと……。
「心理学は、人の心の学問。奥行きがあって難しいが、統計が取れるもんは取れているんだ。さあ、考えてみよう」
という導き方をした。
難しい問題に当たったのがジーンだった。
「この曲は、バレエ音楽になっていた筈だよ、思い出せないかな」
そこにグレイスが助け舟を出した。
「映画にもなった音楽よ。ラヴェルの作曲で何度も同じフレースが延々と出て来る独特の音楽」
「あっ、ボレロだ!」
自分達の導きで学生が正答を出すと、自分達も嬉しい。
「おい」
とジーンがグレイスに声をかけて来た。
「お前、バレエも出来たよな、踊れるのか? ボレロ」
「さあ、どうだろ? 振り付けは知ってるけど、ちゃんと習った事無いわ」
「ははっ……左様で……」
習い事エキスパートのグレイスには、やはり敵わないらしい。
ジーンはへろへろと力が抜けた。
そこへ、アカデミーで一番ついてない男が現れた。
法学のグレイスのところへ行く。
そこで一問。
「あの、どうして法学って出来たんですか?」
他の者のように問題ではなく学問そのものの意義を質問して来た奴。
やはり何処かずれている。
「ミヤケ、それはな、法学の質問というよりも、哲学だぞ」
と言いながらも、律儀に答えるグレイスだった。
質問に答える間、チーム合同のレポートを作成するメンバー達。
彼らも遊んでいる訳に行かず、教えながらの勉強である。
航宙士概論はコフィン・エクスプレス終了後、必ずチームごとで受けなければならない科目の一つであった。
それぞれ問題を分担し、答えをまとめて行くメンバーだった。




