13.コフィン・エクスプレスはまだまだ続く
※書籍化の予定でしたが、諸事情により未書籍化となりました※
※文体に齟齬が生じるため、掲載当初のまま再掲載します※
※今見ると文章がつたないですが、ご容赦ください※
十三 コフィン・エクスプレスはまだまだ続く
コフィン・エクスプレスも後半戦になって、少しずつではあるが退学者数が減りつつある。
アカデミーに慣れて来たというのもあるだろう。
でもコフィン・エクスプレスはまだ約半月続くのである。
授業内容も濃いものになって来る。
上級生に――アカデミーで一番ついてない男――とあだ名をつけられたミヤケ君はというと、ギブスが外され、足は現在リハビリ中との事である。
「そういえば、ミヤケ、疑問点聞きにこないな。授業、安定して聞いているのか?」
「仲間内で解決しているのかもよ。私たちもそうだったじゃない」
「そう言えばそうだな、俺たち五人揃ってあーでもないこーでもないって言って、上級生じゃなく教官に殴り込みに行ってたからな」
「あの時の迫力は怖かったって、今だに法務教官に言われるのよ」
「上級生に聞きに行かなかった事、根に持たれてるのかな」
「それはないんじゃない? この間の三回生、私たちの期は楽だったって言われたもの。かえって上級生の邪魔しなくて良かったんじゃないかしら」
「教官としても迫力は怖かったけど自分の教科を真面目に聞いてるって分かって嬉しかったって言ってたわ」
「それが本音なら、俺たちも殴り込みかけた甲斐があったってことだが」
「今年の新入生達は、教官達に聞きに行ってはいないわね」
「何で分かる?」
「法務課程の教官の話じゃ、教官室は静かだそうよ」
「教官室に直接聞きに行く生徒は居ないってことか」
「私たちのところで止まってるって訳、て事で……不明点を扱いて導くのが私たちの役目って事。教官役やった奴とやらなかった奴で評価、教官役やって落第生出した奴と出さなかった奴で評価、容赦なく人事評定が待ってるわね」
「教官達、鬼だぜ……」
自習時間の際の質問する内容と回数が増えて来ている一方、教官役をやる生徒が少なくなってきた。
自分達の授業が大変になって来たからである。
そこで、教官役の二回生も持ち回りで教える事になった。
特に、プランキッシュ・ゲリラとライトニング・ブルーのメンバーであれば、コフィン・エクスプレスの授業内容が何であろうと、答えられる筈として、このようになった。
今日の担当は、ライトニング・ブルーのロバート。
自分の科学技術課程の勉強をしながら、新入生の一般教養の社会科学を教えて行く。
また別の生徒は統計学。これもすらすらと教えて行く。
さすが学年次席チームトップの力量だった。
明日はプランキッシュ・ゲリラのグレイスとジーンが担当する。二人居る訳は、操縦課程の合同レポートを作成しながら、勉強を教えるためである。
「段々、いい顔つきになってきたよな〜」とはロバートの談。
自信が徐々につき始めたのか、精悍な顔つきに変わって来ている。
「これが期末テストまで続けば良いんだけどなー」
こう言ったのはフレッド。
「ろうそくに例えるなら、今丁度半分で安定しているところ。最後で下火になって、息切れしたりして」
「ちょっと、縁起でもない事言わないでよね、本当にそうなったらどうするつもり?」
「どうもしねーよ、はい、さよなら! だぜ。このアカデミーは」
「それはそうだけど、私たちの評定に響いたら最悪」
「案外、分からないところを聞きにこない奴が落ちるんだよな」
「それ、私たちには把握出来ないじゃない、どうなるの?」
「教官達もそれとなく学習状況見に来てるから、それは大丈夫なんじゃない?」
「新入生の成績が自分達の成績に影響するなんて考えなかった」
「ま、合格者が多い事を祈りましょーか」
「神頼みかよ〜」
アカデミーで一番ついてない男の顔がちらついていたが、合同勉強に参加するもしないも本人の自由。
新入生の成績を気にしつつ、自分達の成績も気になる二回生のプランキッシュ・ゲリラとライトニング・ブルーのメンバーであった。




