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12.コフィン・エクスプレスの中のひと休み

※書籍化の予定でしたが、諸事情により未書籍化となりました※

※文体に齟齬が生じるため、掲載当初のまま再掲載します※

※今見ると文章がつたないですが、ご容赦ください※


十二 コフィン・エクスプレスの中のひと休み




 コフィン・エクスプレスが中盤に差し掛かり、中間テストも終わった頃、コフィン・エクスプレス対象者には一日リフレッシュ休暇が与えられる。

 コフィン・エクスプレス期間内は学校敷地外への外出禁止であるが、敷地内であれば何をしても良いのである。

 敷地内で体を動かすものもいれば、読書をするもの、掃除をするものもいれば、単位が危なくて勉強に勤しむものも居る。

「なんか、懐かしい」

 新入生を見て言うグレイス。

 二回生、三回生は普通通りの授業である。

 次の授業は各々異なったものである。

 グレイスは一般教養の人事管理。

 フレッドは科学技術課程の溶解実験。

 ウォンは技術管理課程の航路管理。

 カイルは医務課程の血液学。

 ジーンは火器管制過程の宇宙魚雷安定法。

 ジーンの科目は士官学校で行われる。女子が居なく花が無いといった授業でしくしく肩を落としながら高速モノレールに乗って士官学校へ向かった。

 グレイスの取っている一般教養の人事管理は、全学生が卒業までに習得しなければならない単位で、学年問わず、またいろいろな専攻学生が顔を合わせる。

 そこへ顔を出した新入生が居た。

「今日はリフレッシュ休暇なので、休暇を利用して授業を見学させてもらってもよろしいでしょうか」

 三名の女子新入生が来た。

 授業のない日くらい己の事をゆっくりしていれば良いのに、上級生の授業見学とは、何というか……。好意を持って見れば勉強熱心と捕えるべきであり、悪意を持って見れば好印象を持たれる為の行為というか……。

 講義受講生の多くは、この女子生徒達が、純粋に授業の様子を見たい! ではなく、教官受けを良くしたい! に見える。

 二回生、三回生の学生はシラけてしまい、教官は仕方なく聴講を許した。

 こんな奴らに入学許可を出すなよな、と思っている学生諸君。

 聴講だけ許してあしらおうと考えている教官(顔に出さないが)。

 これでまた退学者が決定したようであるが、気付いていない新入生。

 上級生からすれば、心証を気にするようなら、勉強なり読書なりしろと言いたいところである。

 そこへ、三回生の一人が教官へ異議を申し立てた。

「この授業はコフィン・エクスプレス終了後入出を許可されるべきところです。彼女らは、まだその切符を手に入れていない。同じ教室に居るとは不愉快です。リフレッシュ休暇であるならば、教官に媚を売らずに、自分の事に気を回したら如何かな? 君たちはこの教室に入る資格はまだ無いんだ。それを自覚したらどうだ?」

 『おぉ〜』っと歓声があがる。拍手まであがった。

「媚を売っているつもりは有りません。それに、聴講について教官は許可を下さいました」

 女子学生が言った。

 これに対し、

「学生から不服申し立てが会った場合、学生の意志を尊重せねばならない。な、君たち悪いがこの教室から出てくれないか」

 そう担当教官が言った。

「そんな!」

「……行きましょ、嫌われたみたいだから」

 女子生徒達は静かに教室を出て行った。

 彼女達には彼女達なりに魂胆があったのである。

 言葉では否定したが、教官の心証を良くし、且つ二回生の中でもトップクラスを走るグレイスの実力をこの目で確かめたい、そんな魂胆が。

 それは三回生に見事に潰されてしまったが。

「それでは、人事評価についてだが〜、彼女らが良い例を提示してくれた。向上心と見せかけて、実は媚び売り。あれはまさしくDマイナス。それでいい。勉学、仕事以外で人に媚を売って評価を受けようとは何事だ。アカデミーの学生はアカデミーの学生らしく、卒業したものは卒業生らしく勤勉で実直、礼儀正しくが求められる。君らはそれを行いながら部下となる人物の評価をせねばならん。忘れるな、どうしても人には感情があるため、場合によっては情に流される。それを客観的に見る自分の目を持つように。これができれば人事評価も公正に出来るだろう」

 グレイスはこの事を走り書きして講義を聴いていた。

「さて、明日からまたコフィン・エクスプレスが再開するが、あの三人は不合格となるだろうな。何故落とされたのか教官達に食って掛かるだろう。私の方もちゃんと教官達に今の事実を話して評価にまわさないと……」

 ここでどっと笑いが起こる。

「自分が人としてどうあるべきか、よく考えておく事が寛容だよ」

 そんな内容で講義は終わった。


 昼時、食事をしながら『そんなことがあったのか』と聞いていたメンバー達。

「彼女ら、自分達が男子学生を抑えて女子学生で総合一位の成績を取りたかったのに、目の上のたん瘤が居るものだから、実力見て、あわよくば蹴落とす対象にしたかったんじゃないのか?」

 グレイスにはそもそも何故自分が目の敵にされるのか理由が分からない。

「ちょっと、目の上のたん瘤って私?」

「他に俺らの学年でトップクラスの女子が居るかよ」

「ライトニング・ブルーは男子だけだし、他の女子はチーム間の連携で忙しいだろ、まだメンバーの調整中のところもあるみたいだし」

「そういえば、前回の試験でトップテンに入った女子、私だけだ」

「そらみろ、だから頂点を目指していた彼女らには目の上のたん瘤だった訳だ」

「私は別に目立ちたい訳じゃなく、普通に生活しているだけなのにな。それが今の私なんだけど。これで目の敵にされるって、ある?」

「あるからお前がハマったんだ。女の世界は怖いねぇ」

「お前は『自分は普通!』と言っているが、周りから見れば『普通』には見えないんだろ? 俺たちには耐性が出来ているがね」

「面倒い」

「プランキッシュ・ゲリラで居る限り、諦めろ」

 そう言われ、押し黙るグレイスだった。


 さて、休暇が終わったコフィン・エクスプレス中の連中は、翌日、また授業が再開された。

 落第したのは昨日の三名を含め五人。

 やはり、なぜ落第者に名前があるのか、教官陣に食って掛かったようだ。

 理由は成績よりも品行方正に不適切な箇所有り。

 昨日の講義が決定づけてしまったが、それをよく理解していないようである。

 それを見ていたプランキッシュ・ゲリラの面々は『落第して正解!』だそうだ。




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