9.僕たちの未来
※書籍化の予定でしたが、諸事情により未書籍化となりました※
※文体に齟齬が生じるため、掲載当初のまま再掲載します※
※今見ると文章がつたないですが、ご容赦ください※
九 僕たちの未来
コフィン・エクスプレスの期間には、学生が学生を指導する時間が一度ある。
今回指導に当たるのは、二回生主席のプランキッシュ・ゲリラ。補助に次席のライトニング・ブルーも参加する事になっていた。
講義内容は自分達の未来について。
毎年この名前で講義されている。
「まずは、中間考査突破おめでとう」
そう言って大講義室で授業を進めて行くグレイス。
「初めに、なぜこのアカデミーを受験したのか一人ずつ聞いて行こうか。」
「まずは、最上段右側の君から順に全員に話してもらおうかな」
当てられた生徒は慌てふためきながら起立した。
「えっと、おれは、ずーっと海賊退治に憧れていて〜、それを目指して受験しました」
と言った。
ウォンは片隅で話を聞きながらメモを取る。
「おれは宇宙開発が目的で……」
「それは連邦大学にも講義はあるけれど何故アカデミーに来たのかしら?」
「実地で行いたかったからです」
という者も居た。
一方、こんな者も居た。
「生活、いや、食うためです」
「正直に言ってくれてありがとう。確かにアカデミーは衣食住困らないものね、資格も取れるし」
「他にもいる?衣食住目当てで入校した人、正直に手を上げて」
お互い顔を見合わせて手を上げるもの、あげないもの。
「言ったわよね、正直に手を上げるように」
数が少し増えたが、それでもプランキッシュ・ゲリラとライトニング・ブルーが想像していたより少なかった。
「これが本当の意志であるなら、貴方達、みっちり勉強した方が良いわよ。夢や希望は霞のようなもの。それに比べ衣食住目的で入学した者は生活がかかっているから落第者は少ない。これは二回生、三回生でも同じ事が言えるから、まず間違いないと思ってくれて良いわよ。ちなみにプランキッシュ・ゲリラは全員生活のため入学したようなものだけど、ライトニング・ブルーはどう?」
ライトニング・ブルーのロバートが指でくるっと丸を書いた。
「ライトニング・ブルーも同じ状況だそうよ」
そう言って、全員に語りかけるように言った
「ここは、学校ではあるけれど、仕事場と思って活動するように。その意識が薄れると、落第という道が待っている。始まりは憧れでも良い。だが、ここでは生活基盤を整えるための学校であり、仕事の前準備の場、甘さは許されない、そう思って毎日を過ごしてもらいたい。先日、君たちと同じ日に抜き打ちで上級生も本テストが行われた。今回は多くの者が落第する結果になった。これも気のゆるみから来る結果だ。忘れないでいてもらいたい」
グレイスがそう言って、仲間達に他に意見が無いかと合図を送ったが無かった。
「では、次にライトニング・ブルーのロバート君に何かあればお願いしたい」
ライトニング・ブルーのロバートと交代する。
「僕らの言いたい事は、プランキッシュ・ゲリラのグレイスが言っちゃったから特にないけど、仕事だからといって小さくなるな、普段通り生活し、勉強をして、毎日を過ごしてほしい。勿論、体を動かすことも必要だけどね。僕が言いたいのは、気持ちを大きく持て! かな? でないと続かないよこの仕事。プランキッシュ・ゲリラみたいにはじけ過ぎも問題だろうけど!」
それを聞いて、横で話を聞いていたフレッドがロバートに言った。
「ロバート、言ってくれるじゃねーの。次の実習、覚えてろよ」
「お〜、こわ」
ここで生徒に笑いが起こった。
質疑応答の時間が設けられる。
ここでは普段聞くに聞けないような事が聞かれた。
「あの、九条先輩が連邦大学の教授を言い負かしたって本当ですか?」
「本当!」
「ノイシュタイン先輩が実験室を半壊させたって言うのは……」
「それも本当! 頼むから質問は自分達に関する事にしてくれ!」
盛り上がったのは言うまでもない
最後に用紙が下られた。
題名は、僕たちの未来――
「これは試験でない。自分がアカデミーで学んでその後の未来についてどう思っているか、どう考えているか、どうありたいか、本心を書いてほしい」
時間は十五分。
盛り上がった会場がしんと静まり返った。
時間が終わって、用紙は回収された。




