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World of Simulation 〜折りたたみ傘一本で世界を取り戻す〜  作者: 横浜あおば


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第51話 最終決戦

 西暦二〇二七年六月十五日。

 俺はミサキ、カナミ、レナ、ヨシアキ、ホノカ、アカリとともに、王都の門の前に並んだ。


「準備はいいな?」


 俺の問いかけに、全員がこくりと頷く。

 この門の向こうにはモクスター率いる王国軍の兵士が剣を構えて待っているはずだ。


 俺は折りたたみ傘。

 ミサキは魔導スマホ。

 カナミはエッググレネード。

 レナは《HK417アーリーバリアント》。

 ヨシアキは包丁。

 ホノカは《聖剣カーテナ》。

 アカリは魔導書。


 それぞれ武器を手にし、いよいよ門を開く。

 キー、バタン!


「一斉にかかれ!」

「うおおっ!」


 門が開いたと同時に、王国軍の兵士達が俺ら目掛けて駆け出した。


「モクスターはあいつらの奥ってことか……」


 ヨシアキが呟く。

 するとミサキは俺の方を見て言う。


「私たちがユウト君の道を作るから、そしたら一気に突っ込んで」

「ああ、分かった」


 モクスターを倒すには万全の状態で臨まなければならない。

 何もしないというのは心苦しいが、ここはミサキの言葉に従うしかない。


「状態異常魔法、麻痺!」


 アカリの魔法で、右から迫ってきていた兵士数十人がバタンと倒れる。

 それを見たカナミは、そこに狙いを定めて卵を投げつける。


「キミをスクランブルエッグにしてあげる!」


 妹よ、変な決め台詞を言わんでいい。というか地味に上手いな。

 卵は麻痺状態の兵士のそばで爆発し、一瞬でHPを削り切った。


『バンッ、バンッ!』


 レナは黙々と引き金を引いて、一人づつ怪我を負わせていく。


「くっ!」

「何だあの遠隔攻撃は……!」


 撃たれた兵士は出血によりじわじわとHPが減少している。

 ミサキは追い討ちをかけるように火炎魔法を発動させる。


「ユウト君の、邪魔をしないで!」


 ミサキがスマホの画面を叩くと、魔法陣が出現してそこから炎が噴射された。


「うわぁ!」

「あんなのありかよ!」


 炎に飲み込まれた兵士は、あっという間に光の粒子となって消滅した。


「ユウト君、行って!」


 ミサキの言葉を聞いた俺は、兵士の隊列が乱れているところへと足を踏み出した。

 再び整えられる前に、モクスターの元へ行かなければ。

 俺はオリンピックの陸上選手ばりに速いスピードで兵士の間を駆け抜ける。

 しかし後方の隊列はさほど乱れておらず、気がつくと囲まれてしまっていた。

 足を止めた俺の前に、一人の男が立ちはだかる。


「久しぶりだな、ユウト」

「ホグリード……」


 声を掛けてきたのは王国軍第一小隊の隊長ホグリードだ。

 モクスターに近づくほど強敵というわけか。

 俺は折りたたみ傘を強く握りしめる。

 その時、俺を囲む兵士の一人が消滅した。

 何事かと視線を移すと、そこにはヨシアキとホノカの姿があった。


「包丁でも兵士を倒せるんだぜ?」

「ユウトさん、助けに来ましたよっ」

「ヨシアキ、ホノカ……! ありがとう、助かった」


 絶体絶命の状況から救ってくれた二人に、俺は感謝の気持ちでいっぱいになる。


「まずは邪魔者を排除だ」

「了解!」


 ホグリードの指示に、兵士が大きく返事をする。

 兵士たちはヨシアキとホノカに標的を変更し、一斉に襲いかかる。


「三連撃剣技、フラッシュリープっ!」


 ホノカの剣がキュイーンと音を発しながら光り輝く。

 そして次の瞬間、襲いかかる兵士三人を一瞬で斬り倒した。


「ヨシアキさんっ!」

「あいよっ!」


 続けてヨシアキが包丁で残りの兵士たちをめった刺しにしていく。

 ヨシアキの攻撃では相手のHPをゼロにすることは出来ないが、あくまでホノカの反動硬直が解けるまでの時間稼ぎなのでそれは問題ない。

 再び動けるようになったホノカは、すぐに先ほどの剣戟スキルを発動させる。


「フラッシュリープっ!」


 またしても兵士三人が倒れる。

 ヨシアキとホノカの見事な連携プレーにより、第一小隊は隊長ホグリードを残し全滅した。


「さて隊長さん、どうするよ?」

「ホグリードさんの相手は私たちですっ。ユウトさんは先に行ってくださいっ!」


 ヨシアキとホノカはホグリードに切っ先を向けながら言う。


「ホノカ、死ぬなよ」

「頑張りますっ」


 俺はホノカに微笑みかけてから、再び駆け出した。

 今度こそモクスターの所まで。


「ユウト君!」

「お兄ちゃん!」

「行きなさい、ユウト!」

「行けぇユウト!」

「ユウトさんっ!」

「ユウト!」


 ミサキ、カナミ、レナ、ヨシアキ、ホノカ、アカリ。

 みんなの声が聞こえる。

 俺は折りたたみ傘を振るいながらひたすら前へと走り、ついにモクスターの元へ辿り着いた。

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