表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢幻界物語  作者: はぎの
3/15

第三話

「……なるほどね。先ほど<アイアン>と聞こえたが、エルカードのものか?」


「そうだ。さっき<アイアン>と書かれたカードを使い、体を鉄にした」

昨日の強盗事件の際もこのカードの力で体を鉄にしてナイフから身を守ったのだ


 ブルーはそれを聞いて、了に不敵に問いかける。


「しかし、そんな事を教えても良かったのか」


「構わんよ。言ったところで負ける気はしないしな」


 確かな自信を持ち、吸血鬼を挑発する。しかしブルーも言い返す。


「だがそれ一枚だけでは――」


「他にもあるぜ」


 ブルーの言葉をニヤリと笑い遮る了。その言葉で、ブルー中にある吸血鬼の闘争本能が湧き出し、口を弧にして再び了に飛びかかった。


「なら楽しめそうだッ!!」


「また同じ手かッ!」


 了はブルーの行動を愚策と判断した。彼女は飛びかかったブルーを受け止め、攻撃を加え様とした。

その時 了に予想外の出来事が襲う。


 「何!?」


 吸血鬼は了を掴み、天井と屋根を破壊し上に飛んだのだ。

 掴まれた了は何とか振りほどこうとするが、吸血鬼のパワーには及ばなかった。


 二人は天井を破壊し突き抜け、夜空に飛び出した。 夜空には青い月、そして吸血鬼と了だけだった。ブルーの翼が月光に当てられ美しく光る。


「いくら鉄になろうとも、この高さから叩き付けられればただで済むまいッ!!」


 言葉とともに了を勢い良く地面に投げ捨てた。了はジェットコースターのように下に落ちてゆく。もし地面に衝突したなら大怪我を負ってしまうだろう。了は吸血鬼の策略に悪態をつく。


「こう来たか!?」


 このまま地面に衝突したら衝撃で了は気絶か、大怪我をおう。それを防ぐため了はカードホルダーから、新たにカードを取り出して発動。カードから音声が響く。


<グリフォン>


 音声と共に了の背中から鷲の翼が出現。 <グリフォン>のカードは風を操る力と飛行能力を与える。翼の出現と力にブルーは目を見開いて驚く。


「なんだと!?」


「クオオオオ」


 了は翼で逆風を起こし地面ギリギリのところで衝突を回避。 そしてゆっくりと地面に降り、安堵のため息を吐いた。


「危なかったぜ……」


 しかし戦いは終わっていない。ブルーは叫びと共に風を切って了に急接近。


「何を安心しているッ! まだまだこれからだッ!」


 ブルーの叫びに了も答える。

「こいッ!! 吸血鬼!!」


 向かい来るブルーを迎撃するために、了はすぐさま新たなカードを発動させた。


<オーガ>


 すると背から翼は消え、音声とともに右額に角が出現。さらに拳に火が纏った。<オーガ>は力の妖怪鬼の力を与えるカードだ。


「パワー比べだッ!!」


 叫び、ブルーに向かい拳を突き出す了。両者の拳がぶつかりあい大きな衝撃を生んだ。パワー比べの結果は、

「シャアア!!」


「私の拳がッ!?」


 吸血鬼の拳が砕けた。鬼の力を得た事によりパワー差が逆転したのだ。手が破壊されたことでブルーは一瞬だが怯む。それを了は見逃さず好機と捉え、マシンガンの如く拳を連打。


「ウオオオ!!」


「ガアアアアアアア」


 相手は防御することは出来ず、燃えながら叫びと共に館の壁に叩きつけられた。叩き付けられた衝撃で、壁に大きな亀裂が走り、壁の欠片と共にブルーは地に伏した。それを見て了は勝利を確信する


「やったか」


「私は吸血鬼…… この程度では死なないッ」


「何!?」


 しかし、吸血鬼は深手を負っていたが立ち上がっていた。攻撃を喰らっても闘志はまだ消えていなかったのだ。その様子を見て、了は止めのカードを発動した。


「……らしいな。だがこれならどうだッ!」


 <ドラゴン>


 額から角は消え、両腕にドラゴンの頭部をもしたガントレッドが現れる。それをブルーに向けるとドラゴンの口が開き、水弾が連続して飛び出した。水弾はブルーに全弾命中。

しかし威力は低く、バシャバシャとブルーを水に濡らしただけである。そのためかブルーは水弾を甘いモノだと判断した。がしかし、


「水鉄砲ごときで…… なんだと!?」


 ブルーは驚愕した。水弾を受けた自身の体が、溶けるような音を立てて煙に変わっていくのだ。この現象は<ドラゴン>のカードの力によるものだ。

 <ドラゴン>の力は聖水による浄化。それは化け物のブルーとしては致命的であった。


「グオオオオ」


 うめき声と煙を上げて、再び地に伏す。そして地に伏してこう思考した。


(先ほど鬼の力に与えられた傷がなければ、水弾を避けられたかもしれない) 


「……いや無いな。私の完全敗北だ」


 だが、吸血鬼は否定し、自分の敗北を潔く受け入れて気を失った。戦いは了の勝利で終わった。


――――


(チクショウ、傷がクソ痛む)


 ブルーは頭の中で口汚く思っていると視界が開いた。目に見知った天井がうつる。


「生きているだと?」


 自身の命があることに困惑し辺りを見渡す。 

 自分が居る場所は自分の寝室であり、体には包帯がまかれていた。隣にはディナが立っており心配そうに声をかけた。


「目を覚ましましたかお嬢さま」


「なぜ私がここにいる?」


「負けたからです。怪我も負いました」


「違うなぜ私は生きている。了のやつは私を始末しなかったのか!?」


「それについては了様からお聞きください」


「居るのか! 案内しろ!」


 傷を負っていること忘れてディナに催促し、了がいる庭へ向かった。了は青い月を見て夜景を楽しんでいた。そしてブルーがやってきた事を知ると、「大丈夫か」と声をかけた。しかし声をかけられたブルーは怒りを露わにする。


「なぜ私を生かした。戦いに負けたものは死、それが当り前だ!」


 手紙の内容の事もあるが、ブルーにとってはそれが当たり前で、人間と化け物の戦いはそういうモノであると考えていたからだ。それを聞いた了は驚きながらも言葉を返した。


「私はブルーを殺したくないし」


「退治しに来たのではないのか!?」


「退治といっても、命は取らないのさ。ブルーの死は望んでないよ私はただ、月を元に戻してほしいだけ」


「しかしなあ、月を元に戻すそれだけで……」


 過去に死闘を繰り広げていたブルーとしては、了の言葉に納得がいかず、眉間に手をやる。そんなブルーに了は月を眺めながら穏やかに話す。


「しかしも何も、私は勝った。弱者では無い。『強者の言うこと』は聞いてくれるよな」


「! そうきたか」


 了に言った言葉をそう返されて、ブルーは了が自分より強い者だとわかった。


「……そうだな強者の言う通りなら」


 了の言葉にブルーは目を伏せ納得し指をパチンと鳴らした。すると青い月は消え夜空には金色に輝く月が現れた。了は月を元に戻してくれたことに喜び、ブルーに顔を向けて笑みをこぼす。


「ありがとうよ」


「次は負けない」


 その笑顔につられブルーも笑う。二人の様子を見てメイドのディナは胸をほっとなで下ろした。


「いやーお嬢様が死ななくて良かったですよー。いや本当に死んだらどうしようかと思いましたよ。特にお金のことで」


「おまえーなー」


 ブルーはその言葉に頬を膨らませ顔赤くし、怒りの表情をディナに見せる。するとディナはあることに気がついた。


「あら怒ったら顔は赤くされるんですね」


「ゆるさんんん!!」


 それを聞いて、さらに顔を赤くする。そしてディナに説教を与えようとしたが、ディナは笑って逃げた。それを追いかけるブルー。


 そんな二人の様子を見て了は笑う。月は優しく世界を照らしていた。

 こうして青い月事件は解決した。

―――


 翌日 ブルーが書いた謝罪の手紙をメイドのディナが人里に届けた。内容は青い月の事に関する謝罪と今後は仲良くするという内容だった。手紙の内容に青い月に怯えていた者達は安どし、事件を解決した了に感謝した。


 事件を解決したとうの了本人は、


「ZZZZZZ」


 自宅で布団に包まれて、熟睡していた。

 事件を解決したこと伝え、すぐさま布団を貰いに行ったのだ。了は布団に入るとすぐに眠れた。 夜に寝ずに戦ったので疲労困憊だ。


「快適だぁ……」


 ゆっくり眠ることができた。後にブルーのお茶会に呼ばれて、了は布団の事を話した。すると聞いたブルーは目を丸くした。


「布団のために戦っていたのか!?」


「そうだぜ。めっちゃ眠れた」


「ぬおおおお。吸血鬼との戦いの褒美が布団だと~」

 ブルーは眉間に手をやり嘆いた。それを見た了は嘆くほどではないだろうと、ひとりごちた。

コメントくれるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ