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悪い予感

一緒に暮らそうと口約束を交わした次の日から、ジュリアは姿を見せなくなった。


最初は冒険が忙しいのかとも思っていたのだが

4日を過ぎた頃から心配になりもしかして俺との事でPTで揉めているのではないか?などと考える


今日で一週間いつもなら空になったポーションを手に店の扉から入ってくるのだが?


時刻はそろそろ夕方になる頃

鳴ることのない鈴にため息をつきながら扉の外を眺めている。通りを歩く人たちの姿も少なくなって来た


明らかにおかしい

あの時のジュリアの言葉や態度は俺を騙す為とは思えないし騙すなら失う物が多すぎる


PT間での揉め事だったとしても一週間も姿を見せないなんて、何か事件に巻き込まれたのかも


そうだ!俺は賢者の書に問いかける

「ジュリアはなぜ会いに来てくれないんだ?」

【冒険者ギルドに全てのポーションを持って行けば分かる】



意味が分からない?どういう事なんだ?

俺は納得行かない思いを抑えて店中に置いてあるポーションと今現在作りかけているポーションも魔法のポーチに入れて冒険者ギルドに向かう


家路に向かい通りを行き交う人々を抜かして騒めく心を抑えて冒険者ギルドに辿り着く


ギルドの奥では冒険者達が酒を飲んで騒いでいる

前回俺達に絡んできた酔っ払いがまた近づいてくる


「てめえ!この前ジュリアと一緒にいた野郎じゃねえか!けっアイツも俺と付き合ってればあんな目に遭わなかった物をよ!自業自得だ!」

凄く嫌な予感がする


「ジュリアに何かあったんですか?」慌てた俺は男の肩を掴み問い掛ける


「はなせっ!」俺の手を振り解き俺の胸を押し返す


「てめえに教えるギリなんてねえ!そこのギルド職員にでも尋ねればいいじゃねえか!」

悪態をつきながら元いた席に戻っていく


すぐさまギルド職員に

「すいません、冒険者のジュリアを探しているんですが」受付に尋ねる


職員は

「会員の事は機密事項になってますので縁者でなければ御教え出来ません」どこの世界も役所は頭が固い


俺は咄嗟に

「わたしはジュリアさんにポーションを卸している業者です代金が振り込まれないので探しているんです。この前一緒にポーションをこちらに買い取ってもらいましたよね?」カウンターの上にポーションを一本置いて嘘をつき何とか教えてもらおうと頑張る


「少々お待ちください」

受付は奥へと向かい奥にいた偉そうな中年と俺の方を見つめ何か説明している。


奥から頭を掻きながら中年の男がこちらに歩いてくる

「ジュリアの居場所だって?ギルドの規約で教える事は本来なら出来ない所だが状況が状況だし今回は特別にうちの職員が付き添いで案内してやるそれでもいいか?」

「はい!お願いします!」


「よし、じゃあここにサインしてくれ」

一枚の紙を渡されサインをする


中年の男は受付の女性に声をかける

「少し案内してくるから何かあったら治療院まで来てくれ」治療院?怪我でもしたのか?不安で心臓の音が大きく聞こえてくる


「ギルドマスターわたしが行きましょうか?」

受付は中年男に告げるが

「いや、俺が行く」

この人ギルドマスターなんだ


よく見ると単なる中年オヤジではなく歴戦の戦士のような佇まいと鍛え上げた体をしているが今はそんなことより


「ジュリアはどこか怪我をしたんですか?」

「うん?何も知らないのか?」


「ええ、一週間前から連絡が途絶えていまして」

「そうか、少し辛い事になるがそれでも案内するのか?」鼓動が早鐘のように大きく聞こえてくる


「まさか...なく」

「いや、まだ死んでは居ないが治療院の話しじゃ長くは持たないそうだ」


膝から崩れ落ちそうになる俺をギルドマスターが支えて起こし

「どうする?やめておくか?」優しく諭すように尋ねてくる


「いえ、お願いします合わせて下さい」

「会っても話は無理だぞ?意識はずっと戻って居ない」


「それでも会いたいです」

俺は気がつくと大粒の涙を流しながら頼み込んでいた


ギルド内は静まり返り酒場の喧騒も止んでいた


「よし!わかったじゃあ自分の足でしっかりあるけ!」ふらつく俺の背中を思い切り叩き気合いを入れるギルマス


「懸命に生きようと頑張ってるジュリアの前で泣く事は許さないからな!行くぞ!」


現実感の無くなった俺はどこか浮遊感に包まれたように無心でギルマスの後をついて行く


どんな道を通って来たのかも誰とすれ違ったのかも何も覚えていない気がつくと病室の前に立っていた

「ほれ!しゃんとしろ!」ギルマスの声に我に返った俺はノックをするギルマスの手を見つめていた、まだ現実とは思えない悪夢なら覚めて欲しい


中から声がして一人の若い男が顔を出す男は目を真っ赤に腫らしとても酷い顔をしていた


「どうしたんだギルマス?君は誰?」

若い男は突然の訪問に苛立ちを隠そうとせず扉を開き不審な顔をしている


「グレイン辛い時に済まないな此方の方がジュリアに面会したいと言ってギルドに来られたからお連れしたんだ」


「ジュリアに?」

グレインはとても迷惑そうに俺を睨む


「ああ、最後かもしれないから特別に案内したんだ」ギルマスのその言葉にグレインは怒りを露わにして怒鳴る


「ふざけんな!ジュリアは必ず返ってくる!」

グレインは大粒の涙を流しながら怒鳴る


「すまない、そんなつもりじゃなかったんだ」

自分の失言に気づいたギルマスは深く謝っている


「ジュリアに会ってどうするんだ?」

俺を睨みながらグレインが尋ねてくる


「怪我をしているのを知らなくて一緒に住む約束をしていたんだ」どこか遠くでテレビでも見ているような感覚に襲われながら伝える


「はぁ!てめえか!てめえのせいでジュリアは!」グレインは俺の襟を掴み殴り掛かろうとする


ギルマスが間に入ってグレインを止める

「俺のせい?」コイツは何を言ってるんだ?


「ああ!てめえのせいだ!いつもは慎重なジュリアが何故か浮き足立って簡単なトラップに引っかかるなんて有り得ないんだ!クソが帰れ!早く帰れよ!」取り乱すグレインをギルマスが押さえ込み


「まて!グレイン。ジュリアの気持ちも考えろ!シン!コイツは俺が抑えているから会って来い」


言葉がうまく飲み込めず俺はふらつきながら病室へと足を入れる


個室のベッドに寝かされた一人の女性は包帯で顔を覆われていた


もしかして、俺が探しているジュリアでは無いかもしれないな、現実感がなく現実逃避している俺の元へ少し落ち着いたグレインがやって来る


「お前のせいでジュリアはこんな姿になったんだ!俺は絶対に許さないぞ!」グレインはそう叫び女性に掛けられていた布団を捲る


全身包帯に包まれた女性は左肩から先と左脚が無かった包帯の隙間からは焦げた皮膚が見える髪の毛も無く俺が探しているジュリアでは無いと安堵しようとしたその時


残った右手に握られた空瓶を見つけ全ての時が止まる。どこか遠くで怒鳴るグレインの声


俺は右手をそっと掴み握られた空瓶に目をやる。それは間違いなく俺がジュリアに渡したポーションだった。止まった時間が動き出し誰かの叫び声のような泣き声が聞こえてくる


右手を握りしめた俺の声だと気付くのにそれほど時間はいらなかった


体中の涙が全て出たような気がする程泣き少し落ち着いた俺にギルマスが声をかける


「シン、辛いだろうがどうしようもない。グレインだってわかった筈だ彼の気持ちが」


「少し取り乱してお前を責めてしまってすまない」

「グレイン、治療院の人間は何と?」

「今日、もって明日だろうと。」再び涙をこぼしながら告げてくる


俺は

「すまない、少しだけ二人にしてくれないか?」

二人にお願いする

「大丈夫か?」ギルマスが聞いてくるが大丈夫だと応える


グレインはギルマスに肩を抱かれながら病室を出て行く


二人が出ていったあと俺はジュリアの手を握り話しかける

「ふざけんなよ、一緒に暮らす約束はどうすんだよ!」

ジュリアと出会った日の記憶が蘇り今までの短すぎる思い出を何度も何度も反応がないジュリアに話しかける


何十年と一人で生きてきて初めて心を許せる人が出来たのにこんなに悲しい思いをするくらいならこんなに人を好きになるんじゃなかった


ジュリアを亡くしたら明日から何を楽しみに生きて行くんだ?一層の事一緒に死ぬか?


動かないジュリアの右手を握りながらそんな事を考えていると


ベルトから本がストンと落ち何も書いていないページが開かれ赤い文字が浮かび上がる


【いや、もう好きなのは分かったから早くポーション使えや!ハゲ!!】神様がブチ切れている


俺は急に現実に引き戻される

【何のためにポーション持ってきたんだよ!!考えろやジジイ!!】激おこだな


何故今まで気が付かなかったんだろう。あまりにも現実感が無く対応する気も起こらなかった


俺は直ぐに魔法のポーチからポーションを出す


まずは、数少ないS特級ハイポーションを飲ませてみるが意識が無いため飲み込めずに口からこぼれ落ちる


俺はS特級ハイポーションを口に含み無理矢理ジュリアの喉の奥へと流し込む

体全体が薄っすらと輝きだす

微かだった呼吸が力強く変わる


二本しかない部位欠損ポーションを左肩と左脚に振りかける、何もない包帯の隙間から真っ白なスベスベの肌をした手脚がニョキニョキと生えてくる


巻かれた包帯を外す。体中が真っ黒に焦げて火傷が綺麗な顔まで広がっている


頬の肉は削げ落ち歯が見えている。綺麗な鼻も潰れて瞼も火傷で癒着していた


長く美しかった髪の毛はどこにも見当たらず焼け爛れた頭皮が痛々しい


もっと早くに助けに来れば良かった後悔だけが頭を過る


俺は店から持ち出したポーションを頭から順に掛けていく。傷の深い場所にはS特級ハイポーションを、それ以外は特級ハイポーションを、傷ついた筋肉などの回復にS強化ハイポーションを。傷が化膿している所にはS特級解毒ポーションを惜しげもなくじゃぶじゃぶとかけていく


金髪が無くなっていた頭は火傷が無くなり綺麗な金髪が戻る


酷く潰れていた顔も元通りに柔らかな頬も癒着していた瞼も回復する首元まで回復が済んだ時扉が開く

「もう、別れは済んだか?お!おい何してる!」どこかくたびれたグレインが声を掛けてくる

包帯を外して俺が何か悪さでもしているように思ったようだ


「治療をしているんだ」

「ふざけるな!傷ついたジュリアの..あれ?」

左腕と左脚が戻っている事に言葉を失うグレインだが後回しにして俺は治療を続ける


「おい、ジュリアの裸は俺だけのものだ!」

短くそう告げると


「すまん、つい」

と後ろを向きジュリアから視線を外す


俺は構わずに首から肩に掛けて特級ハイポーションをかけていく。火傷した皮膚がポロポロと落ちて行き新しくスベスベの白い肌が現れる


「どうやって治しているんだ?」治療方が気になったのかグレインが尋ねてくる

「ポーションだよ」投げやりに応えるここからが顔の次に気を使う場所なんだ!


「ポーション?そんなもので治るわけないだろ?何言ってんだ!」何故か怒りながらこちらを振り向く


俺はS特級ハイポーションをジュリアの胸にかける寸前だった

「おい!こっちを振り向くな!何なら部屋から出て行け!」危うくジュリアの胸を他人に披露する所だった!


「あ、す済まない」再び後ろを向き謝ってくる



「しかしポーションなんかであんなに傷ついた体が治るわけ無いだろ?何か特殊なポーションなのか?」どうしても気になるらしい


俺は細心の注意払いジュリアの豊満で完璧な胸の治療に全神経を傾けていたので

「S特級ハイポーションだよ!うるせえな!少し黙ってろ」と投げやりに返す


「え?えS特級ハイポーションだと?!!!」

こちらを振り向きそうな気配がしたのでグレインの顔にグーパンチをお見舞いする


「す、すまん。いや、S特級ハイポーションなんてどうやって手に入れたんだ!幻のプレミアアンシエント級のお宝じゃないか!」


「俺とジュリアだけの秘密だ!それと治療の邪魔だから少し部屋から出ていてくれ」

気が散ってすすまない


もう、命に関わることは無いが早く治してやりたい

「すまん。あとは頼んだぞ」

治療の為なのか素直に部屋から出て行く


鎖骨から胸にかけてS特級ハイポーションをかけて行く痛々しく焼け爛れた胸が元の白く柔らかな薄いピンクの先まで完璧に戻って行く


お腹から大事な所、右脚へと特級ハイポーションをかけて行く


うつ伏せに寝かせて背中からお尻にかけても同じように惜しげもなくかけて行く


右足の指まで綺麗に治し最終チェックを行う

頭、耳、口、鼻、瞳を開けて眼球も見てみる

首、肩、腕、手、脇、背中、お尻、胸は少し長めに検査する何かあったらいけないからな!


お腹、太腿、足先、で、大事な場所


見事だ、見事としか表現出来ない美しさに見惚れていると


「ねえ?シン何してるの?」

突然ジュリアが意識を取り戻す


ちなみに俺はジュリアの脚を大きく広げて大事な所を慎重に検査している所だ。何故かジュリアはプルプル震えている


「おはよう」爽やかな笑顔で挨拶するが

物凄い速さで拳骨が飛んでくる


全てを見せ合った仲なのに?

解せぬ


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