それで? アンタはどうすんだ
やがてフリート武具店の近くまで辿り着いたイストファ達は、丁度店から出てくるところだったらしいドーマと遭遇した。
「あ、おはようドーマ!」
「おう、ドーマ。おはようさん」
「おはようございます、2人とも」
挨拶をしながらも、イストファとカイルはドーマの姿に何か変わった所がないかを探し……すぐに気付く。
ドーマの背中には、イストファがつけている小盾よりは少し大きめの盾が背負われていた。
受け流しではなく、明らかに防御を重視したその盾が何のためのモノかは明らかで、カイルが「うっ」と小さく呻く。
そしてドーマもイストファ達の視線に気付いたのだろう、背負った盾を示してみせる。
「これですか? いいでしょう、結構高かったんですよ」
「いや、その……なんていうか、ごめんドーマ」
「ああ。流石にすまねえと俺も思う。ごめんな、ドーマ」
「なんですかいきなり」
不審そうな目で見てくるドーマに、イストファは「実は……」と謝ろうと思った切っ掛けの話について話す。
それを聞いたドーマは一瞬納得したような顔になった後、大きな溜息をついてしまう。
「……何かと思えば。足りないものを各自が考えて補強するのは普通でしょう。特に武具は財産なんですから」
「だが、それを買ったのは俺が脆いからだろ?」
「そうですね。それは否定しません」
ですが、とドーマは続ける。
「カイルが居なくとも、盾は必要でしたよ? あんな虫がいるんですから」
「そりゃ、そうかもしれねえが」
「気にし過ぎです、2人とも。そもそもヒーラーの役割はパーティを支える事でしょうに。それに、この盾だって2人と一緒にダンジョンに潜ってるから持てるようになったんですよ?」
「え? それってどういう……あっ」
ダンジョンでの成長、とステラに耳打ちされたイストファが思い出し声をあげる。
「そっか。力が上がったんだね?」
「ええ。私も魔力より単純な身体能力の成長の方が大きいようで。重たいものを振り回しても多少は平気なようになりました」
「そうだよね。カイルも魔力が上がってるんだもの」
「俺は体力はあんまり上がってねえけどな……」
笑い合う3人だったが、そこでドーマが「そういえば」と思い出したように声をあげる。
「2人はフリートさんの店で何か用意するものはありますか?」
「ない、かな」
「俺もねえな。それより食料品店と冒険者ギルドだな。その後ダンジョンだ」
イストファに続いてカイルもそう答え、3人を見守っていたステラへと視線を向ける。
「それで? アンタはどうすんだ」
「んー、そうねえ。付いていってもいいかな、とは思うんだけど」
言いながら、ステラはフリートの店へと視線を向ける。
「今日はそっちのドワーフの店に用があるのよね。だから行ってらっしゃい、3人とも」
「はい、行ってきますステラさん」
「ええ、気を付けてね」
ヒラヒラと手を振るステラにイストファも手を振り返し……その手を、ドーマが握る。
「ドーマ?」
「食料品の店はこっちですよ、イストファ」
「え、えっ!?」
早足で歩き始めるドーマに引っ張られるようにしてイストファは歩き、その後をカイルも慌ててついていく。
「おい待て、置いてくんじゃねえ!」
イストファの反対の手を掴んだカイルはそれでようやく安心したように息を吐くが、両手を両側から掴まれたイストファはたまったものではない。
まずドーマの手を、そしてカイルの手を引き剥がすと、2人から不満そうな視線を向けられる。
「なんですかイストファ」
「なんだよイストファ」
「うっ、何って言われても。普通に歩かせてよ」
「……まあ、そうですね」
アッサリと頷くドーマだが、イストファはいったいなんだったんだろう、と疑問符を浮かべてしまう。
「あ、もしかしてドーマもステラさん嫌いだったり……?」
「そんな事はありませんよ。エルフとしては何も思うところはありません。相当強いな、とは思いますけど」
「あ、やっぱりそうなんだ」
「え、知らないんですか?」
意外そうな顔になるドーマにイストファは「あはは」と笑う。
「何度か助けて貰いはしたけど、アレが全力ってわけないし。どのくらい強いのかすら、今の僕には分からないんだ」
「師匠、なんですよね?」
「自分で努力して成長するようにって主義らしいから……」
あ、でも生活の面倒見て貰っちゃってるのは心苦しいな……と呟くイストファから、ドーマはカイルへと視線を向ける。
「俺を見るんじゃねえ。イストファが納得してるなら尊重すべきだろ」
「まあ、それはそうかもですが」
「そういえば、食料品店って何処なの?」
気付けば変わってきた辺りの風景に、イストファは視線を巡らせる。
職人通りとは違う、比較的穏やかで温和な空気の流れる商店の並ぶ通り。
布やら食器やらが売っている店を物珍しそうに眺めるイストファの手を引き、ドーマは「あの辺りですね」と指し示す。
そこはどうやら食料品や香辛料の類を売っている店の集まる一角のようで、冒険者だけではなく普通の町人らしき人達が商品を眺めている姿があった。





