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金貨1枚で変わる冒険者生活  作者: 天野ハザマ


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将来的な話です、将来的な

 食事を終えたイストファ達はステラと別れると冒険者ギルドでのドーマのパーティ登録を終わらせる。

 これは早めに登録した方がいいというステラのアドバイスに基づくものだが……こうして懸念を全て片付けたイストファ達は、再びダンジョンの入り口に立っていた。

 周囲には地図と顔を突き合わせ相談をしている冒険者パーティの姿が幾つかあり、大きな荷物を抱えたトランスポーターの姿も見受けられた。


「……まだ入る前なのに荷物が多いんだね」

「そりゃあ、な。中で野営をする時だってあるんだ。それを見越せば当然荷物も多くなる」

「私も最低限の干し芋程度ですが持ってますよ。イストファ達もそうなのでは?」


 ドーマに聞かれ、イストファとカイルは顔を見合せ同時に首を横に振る。


「持ってないよね」

「ああ、持ってねえな」

「信じられない……」


 天を仰ぐドーマは大きく溜息をつくと、イストファとカイルを睨みつける。


「備えてこそ冒険者でしょう。簡単に帰れなくなった時に餓死するつもりなんですか?」

「そうは言ってもな……あんまり食い物の類を持つとグラスウルフ共を引き寄せかねないから持ちたくなかったんだよ」

「僕はお金なかったから……」


 二人の「理由」を聞いたドーマは「まったくもう……」と言いながら額に手を当てる。


「まあ、いいです。今日は二階層への到達が目標なんですから、このまま行きましょう。明日以降はちゃんと用意してくださいね?」

「おう」

「うん」

「それじゃ、行きますよ!」


 ドーマを先頭にイストファ達は一階層への階段を降りていき……再び、目隠しの草原へと降り立つ。

 いつでも真昼のように輝く草原が、見た目と反して凶悪なのはイストファ達は嫌というほどに理解しているが……今回は、此処で狩りをするわけではない。


「えーと……入り口が此処だから……あっちの方角だな」

「そうですね。間違いありません」


 カイルとドーマは一定の方角を指差し頷き合うと、イストファへと視線を向ける。


「よし、そんじゃイストファ。先頭頼むぜ」

「お願いしますね、イストファ」

「うん。行こう!」


 カイルは勿論、ドーマも前衛向きではない。

 自然とイストファを先頭とする形で隊列が組まれ、三人は二階層の入り口へ向けて歩き出す。


「そういえばドーマ」

「なんですか?」

「ゴブリンヒーロー倒したんだ。何か新しい魔法は授からなかったのか?」

「ふふふ、ええ。とっておきのものを授かりましたよ」


 そう言うと、ドーマは手に持ったメイスを軽く振る。


「すぐにお目にかける機会も訪れるでしょう。期待しておいてください」

「そういう事を言うってこたあ補助系か? ふーむ」

「今は秘密です」


 上機嫌そうなドーマの声にイストファは振り向きたくてウズウズする心を抑え、周囲の警戒をする。

 何しろこの階層では、突然目の前にゴブリンが現れるかもしれないのだ。

 移動中は一瞬だって気を抜けない。


「ギ……ゲアッ」


 イストファの正面に現れたゴブリンが、その棍棒を振り上げるよりも早くイストファの短剣に切り裂かれる。

 斬撃からの、トドメの刺突。流れるようなその動きは、ゴブリンヒーローと戦う前と比べると僅かではあるがキレがよくなっている。


「……うん」


 少しずつだが、強くなっている。それを自覚したイストファは短剣をギュッと握り、忘れないうちにと魔石の取り出し作業に移る。

 そうして取り出した小さな魔石をイストファは袋に入れようとして、その腕をドーマがぎゅっと握る。


「え、何?」

「待ってください、イストファ。その魔石、どうしても売りたいですか?」

「どうしてもって……あ、ひょっとしてドーマの新しい魔法?」

「はい、そうです」


 頷くドーマに、イストファは「どんな魔法?」と問いかける。

 ドーマの新しい魔法。気にはなるが、魔石は貴重な収入でもある。


「ふふふ……驚かないでくださいね。新しい魔法は、その名も『魔石合成』。迷宮武具に魔石を合成する魔法です」

「へー……」

「ほう」

「反応薄いですね」


 イストファとカイルの反応にドーマが不満そうな顔をするが、イストファは困ったように頬を掻く。


「えっと……凄いんだろうってのは分かるんだけど。でも迷宮武具で魔石を壊せば魔力を吸収するよね?」

「だな。その合成とかいう魔法を使うと、何が変わるんだ?」

「変わりますよ。確かに魔石に関してはその通りですが、迷宮武具で壊すよりも吸収率が上がります」

「へえ、それは凄いね!」

「ほんとかあ?」


 素直に驚きの声をあげるイストファと、疑り深いカイルだが……ドーマは「凄いんです」と頷く。


「なので、私の合成の魔法を使えばイストファのその短剣も今までより成長率が上がるわけです。それだけじゃなく、防具も迷宮武具にすれば合成魔法で簡単に育成可能って訳です。ガンガン育てていきましょうね!」

「あはは……しばらく鎧は変えないと思うけどね」

「まあ、そうですけど。将来的な話です、将来的な」

「うん。でもまあ、とりあえずこの魔石は袋に入れておくってことで」

「あっ」


 合成魔法を使いたかったらしいドーマが少し残念そうな声をあげるが、「仕方ないですね」と諦めたように呟く。

 まあ、今すぐ使わなければならないというわけでもない。


「でもイストファ。ゴブリンガードの魔石を手に入れたら合成してみましょうね!」

「う、うん。考えとくよ」

「嫌な時は嫌って言うべきだぞイストファ」

「そんな事ないよ……」

空揚げについて、唐揚げじゃないのかとの指摘が幾つかきているのでお答えします。

これ、基本的にはどちらも同じものをさしています。

言葉の起源を辿りますと、唐揚げ表記の場合は一説によれば唐の国との関連性を示唆するものであるようです。

また、空揚げ表記は下味をつけないからだとする説もあります。

実際のところどうであるのかは、誰にも分からないのかもしれません。


言葉って、面白いですね!

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