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金貨1枚で変わる冒険者生活  作者: 天野ハザマ


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EX:ある日のフリート武具店

おまけストーリー第2弾です。

ちょこちょこっと投稿してまいります

「あれ?」


 その日、イストファがフリート武具店に行ったのは約束を果たす為だった。

 定期的にフリート武具店に武器や防具の状態を見せに行く。

 そういう約束をしていたからこそ、イストファは店に行ったのだが……妙に、混んでいる。

 武器や防具であれば、もっと人気の店はある。

 むしろ職人通りに店を構えるフリート武具店は「知る人ぞ知る」といった感じの店だ。

 それが、なんだか妙に混んでいる。

 

「これは……出直した方がいいのかな?」


 言いながら頬を掻くと、「イストファ君!」という小さな声が横から聞こえてくる。

 聞き覚えのある声に振り向けば、そこには路地裏から手招きするケイの姿がある。


「あれ? どうしたんですか?」

「いいから、こっち! 早く!」


 言われてイストファは路地裏に引っ込む。

 ここ最近、衛兵隊による大規模作戦があり落ちぶれ者は強制的に何らかの職に就かされたが……それでも落ちぶれ者は日々増えるばかりだ。

 そういう意味では路地裏はあまり女の子が居ていい場所ではないのだが……。


「危ないですよ、ケイさん。ちゃんと明るい場所を通らないと」

「うっ、それは分かってるけど。それよりイストファ君、今ウチに来ようとしてたでしょ?」

「ええ、まあ」

「今はダメ! ちょっと面倒なことになってるから!」

「面倒? 何かあるなら僕も」

「余計ダメ! 騒ぎが大きくなるから! とりあえずこっち!」


 ケイはイストファの手を引っ張ると路地裏を走り……やがて、何処かの家の裏に辿り着く。

 というか、此処は。


「お店の裏口……?」

「しーっ、静かにね」


 鍵を差し込んで、ドアを開けて。そのままイストファを押し込むと、ケイも入って鍵を閉める。

 すると、店の方から様々な声が聞こえてくる。


「あー、もう、うっせえな! オーダーメイドは受けてねえって言ってんだろうが!」

「そこを何とか! 彼の装備一式は貴方の作品なんだろう!?」

「迷宮鉄なら用意する! 俺のも作ってくれ!」

「帰れ帰れ! そんなに迷宮武具が欲しけりゃ余所で山のように積んでるだろうが!」


 なんとなく理由が分かってイストファは「ごめんなさい……」と謝ってしまう。


「いいから、イストファ君はこっち」


 階段を上がって2階に登ると幾つかの部屋があり、そのうちの1つの部屋にイストファは通される。

 そこはなんだか可愛らしい内装の部屋で、一目でケイの部屋だと分かる、そんな部屋だった。


「って、あれ?」


 ベッドの脇に飾ってある、小さな絵。そこに描いてある人物が自分に似ている気がして。


「あ、あははははは!」


 凄い勢いで絵をパタンと倒したケイは、真っ赤な顔で「違うからね!?」と言う。


「これはそういうのじゃないから!」

「えっと、はい」

「とにかく、その辺座って?」

「ええっと、じゃあ」


 クッションをどかして床に座ると、ケイに「なんでクッションどかすの?」と言われてしまう。


「座られるの嫌かなって」

「もう、変な遠慮するところは全然治らないんだから。今はむしろイストファ君の座ったクッションが欲しがられるくらいなんだからね?」

「ええ……なんでですか……?」

「うーわ、本当に嫌そう……でも、そういうものなんだってば」


 全然理解できない顔をするイストファにケイは困ったように笑うが……「でも、そうなんだからね」と真剣な顔で言う。


「イストファ君、10階層突破したよね?」

「はい」

「イストファ君の年で、更にそのスピードで10階層の突破はね……初記録なの」

「えっと……はい。でも、僕達より深く潜ってる人はいますよね?」

「はい、ダメでーす。失格です!」


 ぶっぶー、と両手で「バツ」を作るケイにイストファは「え?」と疑問符を浮かべてしまう。


「確かにそういう人は居ます! でもイストファ君は今一番新しくて一番未来のある男の子です!」

「それは言い過ぎな気が……それにその理屈なら、カイルとかドーマとか……」

「お父さんが言ってたけど、今ミリィちゃんのぬいぐるみとかが無許可で結構出て問題になってるんだって」


 ミリィが聞いたら悲しい顔になりそうだな……などと思いながら、ケイは「クロード君も苦労してるよ?」と続ける。


「クロードがですか?」

「そうだよ。クロード君、一番最近に入ったでしょ? 紹介してくれって煩いから最近は地面に降りられないって言ってたもの」

「え、じゃあクロード何処にいるんですか?」

「屋根。この前窓開けたら向かいの屋根走ってた」


 最近ドアから出入りする姿を見ないと思ってたらそんな事になってたのか、とイストファは思う。


「でも、その割には僕、そういう実感ないんですが……」

「たぶん話しかけづらいんだと思うよ? イストファ君、明らかに良い子オーラ出てるし。嫌われたら終わりだって分かるから、我慢してるんだと思う」

「えっと……分かんないです」

「誰だって悪人にはなりたくないってことかなー。その分カイル君とかドーマ君は明らかに裏がある風だし」

「そんなことないですよ」

「そう言えるからかなあ」


 あはは、と笑うケイにイストファは首を傾げてしまうが、ふと先程の絵の事を思い出し視線を向ける。


「そういえばさっきの絵って」

「ダメ」

「なんか僕に似て」

「忘れて。いや、待って。ちょっとくらい気にしてほしいかも。でも人には言わないで」

「えーっと……はい」


 なんだか分からないままにイストファはケイに「約束ね」と言われて頷くのだった。

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キコリの異世界譚

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