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金貨1枚で変わる冒険者生活  作者: 天野ハザマ


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あるいは、お主のような者こそが

 しかし、とクロードは思う。

 過去は過去。それで割り切るのが普通だ。

 現在ではない場所の、切り取った「再現」でしかないそんな偽物の極致のような場所。

 そんな場所で……しかも、悪鬼帝を蔑むでもなくその心情に思いを馳せる者がいるなどとは。


「……あるいは、お主のような者こそが」

「僕?」

「うむ。悪意を煮詰めたようなこのダンジョンの真実を解き明かすのは、あるいはお主のような者なのかもしれぬ……と思っての」

「それは言い過ぎだよ」

「かもしれんのう」


 カカと笑うクロードに苦笑しながらも、イストファは思う。

 悪意を煮詰めたような、とクロードはこのダンジョンを評した。

 恐らくは今寝ているカイルに聞いても同じ答えが返ってくるだろうと思う。

 ドーマに聞いても、ミリィに聞いても……ステラに聞いてもそうかもしれない。

 しかし、本当にそうなのだろうか?

 このダンジョンにあるのは「悪意」なのだろうか?

 

 触れるのは、腰に差したアルスレイカー。

 ダンジョンが無ければ、この剣は……そして、必殺剣はイストファへと継がれることはなかった。

 ダンジョンが無ければ、カイルは家族を見返すことなどできなかった。

 ダンジョンが無ければ、イストファは「人間として生きる」ことなどできなかった。


「……僕は」

「む?」

「僕は、ダンジョンの真実を知りたい」

「知ってどうする?」


 その問いに、イストファが答えかけた刹那。来た方向とは反対の扉が開く音が聞こえ始める。


「休憩はここまで、ということのようじゃの」

「うん」

「先程の答えは、此処を出た後で聞くとしようか。それ、皆起きよ」


 クロードが全員を起こして回り、イストファは扉の向こうを警戒するように立つ。

 完全に開いた扉の先には何かが待ち構えているということもなく……しかし、どんな罠があるかも分からない。

 それでも自分に可能な限りの感覚を総動員してイストファは先を見つめ……静かに剣を抜き放つ。


「……何か、音がする」

「ああ? 音ォ? まさかどっかで罠が……」


 伸びをしていたカイルが緊張したように周囲を見回して、ドーマもミリィも耳を澄まして。

 しかし、イストファが聞いた「音」が聞こえずに疑問符を浮かべる。

 その中で……唯一、クロードのみが床……壁、そして天井の順に何かを探すような視線を向ける。

 次の瞬間、舌打ちが響く。


「そういうことか……! なんと性格の悪い!」


 言うが早いか、クロードはミリィを抱え上げる。


「出るぞ! 天井が『落ちて』きよるぞ!」

「はあ!?」

「えっ」

「わわっ」

「うげっ!?」


 イストファがカイルを抱え、ドーマは走り。全員が飛び出すように部屋を出たその瞬間、文字通りに天井が……いや、天井となっていた巨石が部屋へと落下する。

 ズズン、という凄まじい音と共に落下した巨石は、そこに留まっていたらどうなっていたかをイストファたちに雄弁に語っていたが……続けて響く「カチリ」という音にクロードの顔が青ざめる。


「マズい……! 走れ、床が『開く』ぞ!」


 警告と共に走り出した直後、床が次々に『開いて』落とし穴と化していく。


「うわわっ……」

「なんて性悪な! イストファ、落とさねえでくれよ!」


 そうして、走り抜けたイストファ達の先には、部屋があり……。


「えっ」

「うおっ」


 石製の巨大な人型……ストーンゴーレムと呼ばれるものに酷似したそれが、その肥大化した巨大な腕を振り上げていた。

 響く打撃音はしかし、イストファ達に命中した音ではない。

 間一髪回避したが、非常にきわどいタイミングだった。


「……ルーンレイカー!」


 カイルを背後へと下ろしたイストファのアルスレイカーが、その真の姿を現す。

 石製の人型……ストーンゴーレムが再びその腕を振るう前に、必殺剣がストーンゴーレムの腕を深々と切り裂き、巨大な亀裂を走らせる。


「ふざけやがって! メガン・ボルト!」


 続けて放たれたカイルの電撃魔法がストーンゴーレムの腕の亀裂にとどめを刺し、その瞬間にはクロードがストーンゴーレムの身体を駆けあがっている。


「ハハッ、隙だらけじゃのう!」


 輝く蹴りがストーンゴーレムの頭部を砕き……その瞬間、巨体が突如力を失ったように倒れこむ。


「うわっ……!」

「ひゃー!」


 ミリィとカイルを抱えたドーマが倒れこむストーンゴーレムから何とか逃げ切り……そのままストーンゴーレムの身体はガラガラと崩れ落ちてしまう。


「危なかった……これ、モンスター……だよね?」

「あー、いや。違うな」

「え?」


 魔石を探そうとしていたイストファに、カイルは首を横に振る。


「罠だよ、こいつはな」

「え? でも……」

「さっさと先行くぞ。始まっちまう」


 カイルに背中を押されるようにしてイストファは仲間と共に部屋の奥の通路へ進み……部屋を出た後、カイルに「見てみろ」と促される。


「あれって……」


 イストファの視線の先……部屋の中で石の塊が集まっていき、再びストーンゴーレムの形になっていくのが見えた。


「魔法の罠だな。俺も知ってはいるが、あそこまで大規模なのは初めて見るぜ」


 なんだかんだ皇帝だったってことだな……と、そんな事を言うカイルに、イストファは「悪鬼の試練場」が帰還者を出さなかった理由の片鱗を感じていた。

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