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金貨1枚で変わる冒険者生活  作者: 天野ハザマ


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華々しい話には、誰しも憧れる

 ダンジョンの入り口まで戻ってきたイストファ達は、思わず大きく息を吐く。

 一筋縄でいかない事は分かっていた。いたが……あそこまでとは思わなかった。

 7階層「極彩色の楽園」は、ギガアメイヴァのような規格外の敵や無数の敵に襲われるという事こそあったが、それでも「普通の敵」は普通のサイズだった。

 だが、8階層では違う。どの敵もすさまじく巨大。あんなものをマトモに相手できるとは思えなかった。


「いきなりレベル上がり過ぎだろ……」

「何か考えないといけないよね」

「とはいっても、どうすれば。武器の選択でどうにかなる段階を超えてますよ?」

「うう、怖かったです……」


 何か手立てを考えたとして、とれる選択肢は2つしかない。

 つまり「イストファがどうにかする」か「カイルがどうにかする」の2択だ。

 選択肢が2つあるだけダンジョンの探索を始めた時よりも良いが……それはさておき。

 その2つの選択肢ですら、かなり賭けの要素がある。


「とにかく、此処で顔突き合わせててもどうしようもねえ。まずはガルファングの生き物の生態について調べて……」


 カイルが言いかけたその時、近くに居た衛兵が軽く咳払いをする。


「あー、ちょっといいか?」

「あ?なんもがっ」

「はい、なんでしょう?」

 

 なんだよ、と言いかけたカイルの口をドーマが素早く塞ぎ、イストファが受け答えをする。


「君達、もしかして今日は冒険者ギルドに行ってなかったりするかい?」

「え? はい」

「そうか。行ってみるといいぞ。今日はあっちで依頼が出てる」

「依頼……ですか」


 イストファ達は顔を見合わせ、疑問符を浮かべながらも冒険者ギルドへ向かう。

 そうすると……お昼前のこの時間に、冒険者ギルドがごった返しているのが見えた。


「え……何、これ」

「なんだあ?」


 イストファもカイルも、そしてドーマやミリィも訝しげな表情を浮かべるが……冒険者ギルドの職員が張り上げる声を聞いていれば、その疑問が氷解する。


「現在、都市周辺の森林地帯への探索の緊急依頼を発動中です! 人数はほぼ無制限、国からの報酬として、1人1日4000イエン! 成果に応じて増額されます!」


 どうやらその緊急依頼の受付とやらをしている最中らしいが……それを聞いてカイルが「なるほどな」と呟く。


「こりゃ、アレだな」

「アレって……アレだよね」

「ああ、アレだ」

「アレですか……」

「なるほど……」


 イストファだけではなく、ミリィも……そしてドーマも頷く。

 どう考えても、ステラとドーマの遭遇したオークエンパイアの件だろう。

 当然ステラは報告しただろうから、他にもないかどうか……とか、そういう話だろうとイストファ達は考える。


「どうする? 受けた方がいいのかな?」

「どうするも何も、受けなきゃならんだろうな」

「そうなの?」

「緊急依頼をスルーすると、ちょっとばかり印象が悪い」


 そもそも緊急依頼とは、冒険者ギルドがモンスター災害などの「放置する事で甚大な被害が予測される現象」を確認した際に発動するもので、自警団や領主、あるいは国などと事前に定めた規定に基づき報酬が支払われる。

 この為、受ける冒険者側としては確実かつ迅速に報酬が支払われる上に、そういった組織からの覚えがめでたくなる……かもしれない、大きなチャンスでもある。


 そしてデメリットとしてだが、受けなければ緊急事態に動かない人間として職員に覚えられる可能性がある……といったところだ。これは決して無視できるリスクではない。


「えーと……つまり受けなきゃダメってことだよね?」

「覚えが良くなれば、良い情報が手に入る確率も上がるしな。受けといて損もねえ」


 それに、オークエンパイアの主であるオークエンペラーはすでにステラが倒しているのだ。

 たとえ生き残りが居たとしても残党にすぎないし、あの8階層のバケモノ共と比べれば楽なものだ。


「なら、並ばないといけませんね」


 そんなドーマの当然の台詞で、イストファ達は列に並び……やがて、疲れた顔の職員のいるカウンターまで辿り着く。


「おや、緊急依頼を受けてくださるんですね?」

「はい」


 イストファが答えると、職員は笑顔で頷く。


「そうですか、良かった。貴方達は依頼に興味がないのかと思っていたので」

「あ、あはは……」


 確かに依頼は全く受けていなかったが、そういうわけでもない……のだけれど。

 しかし、どう言えばいいか分からず笑って誤魔化すイストファに、職員は一枚の紙を渡してくる。


「貴方達には期待する人も多いです。出来れば依頼を多く受けてランクも上げてほしいと、私も思っていますよ」

「期待……ですか」

「ええ。あのミノタウロスの斧。アレの件が商人経由で他の町に伝わって、こっちに移動してくる冒険者も増加中です。良い事ですね」

「そうなんですか」


 確かに知らない冒険者が増えているとは思っていたが、そんな事になっているとは全く思ってもいなかったイストファはそう言って驚くが、職員はそれに頷く。


「華々しい話には、誰しも憧れるものです。特にこういう商売だと、ですね。俺もやってやる……と、そんな人達が集まるものです」

「……」


 ちょっと照れたような表情をするイストファからカイルが紙を奪い、軽く目を通す。


「やっぱりオークエンパイア関連か。現状調査とモンスターの撃滅……どの程度を見込んでるんだ?」

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