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金貨1枚で変わる冒険者生活  作者: 天野ハザマ


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ま、そんなところが気に入ってるんだけど

こまきちさんにレビューいただきました。

ありがとうございます!

「おいイストファ!」

「イストファ!」

「うわ! な、何!?」


 カイルとドーマに同時に詰め寄られ後ずさるイストファだが、2人に同時に肩を掴まれてしまう。


「マジで言ってんのかお前!」

「本当なんですか!?」

「そ、そうだけど……確か、えーと……キュアパラライズって」


 それを聞いて、カイルとドーマは顔を見合わせる。


「……どうだ?」

「間違いないかと。え? 知らないだけで、実は一般化されてたんですか?」

「いや、それなら俺が間違いなく知ってる。つまり……」

「ステラが独自に一般化してる……? 何者なんですか、あの人!」

「分かんねえ……だが、光が見えたぞ!」

「あ、まさか」


 カイルがスッと手をどけ、ドーマがイストファの両肩を掴む。


「イストファ。ステラさんにお願いをしますので、立ち会ってください」

「それは……いいけど、立ち合い必要かな」

「あの人、貴方には甘いじゃないですか」

「そ、そうなのかな?」

「逆に私1人で頼んだりしても、ニッコリ退けられそうな気がします」

「そうかなあ……」

「そうなんですよ」


 ドーマにグイグイと迫られ、イストファは「うーん」と悩むような声をあげる。

 そんな事をしなくてもステラは聞いてくれそうな気がするな……と考えているからだが、当然イストファのステラに対する無意識の美化が過ぎるせいである。

 ダンジョン初日にイストファを襲った不逞冒険者の扱いやデュークへの態度を考えれば、大体分かりそうなものではあるが……その辺り、イストファにはまだ理解が難しい部分ではある。


「う、うーん……そういう事なら。でも、帰ってきてるか分からないよ?」


 確かに師匠ではあるし同室ではあるが、ステラにはステラの仕事がある。

 いつも居るとは限らないのだ。


「それならそれで構いませんよ。早速行ってみましょう?」


 とはいえ、カイルと同じ宿なのだ。確かめるだけならすぐであり……ドーマに手を引かれるようにしてイストファが部屋の扉を開けると、そこには丁度ステラの姿があった。


「あら、イストファと……ドーマだったわね。どうしたの?」

「あ、お帰りなさいステラさん」

「ええ、ただいま。で、どうしたの?」


 スルリと自然な動きでイストファを自分の腕の中に収めたステラだったが、そんなステラをドーマは正面から見据え頭を下げる。


「麻痺治しの魔法を会得していると聞きました。それを教えて頂けませんでしょうか?」

「キュアパラライズ? 確かに会得してるけど……」


 そう言うと、ステラは悪戯っぽい笑みを浮かべてみせる。


「貴方に教えるかどうかは、別よね?」

「それは……ええ、その通りです」

「何より、イストファを『使おう』って根性が気に入らないわ」


 言われてドーマはグッと黙り込む。まさに言う通りだったからだ。

 しかし、しかしである。


「ではイストファに何処かに行ってもらって、その上で1対1で頼んだら承諾してくれましたか?」

「そんなわけないじゃない」

「そうでしょうね」


 つまるところ、ドーマの想像通り。ステラは基本的にイストファ以外にはあまり興味が無いのだ。

 今のところ、ドーマの扱いは「イストファの仲間」といったところだろう。

 カイルであれば、あるいは話が別だろうか? とにかく、自分がその域にまでは達していない事を嫌でも理解させられてしまう。

 笑顔ではあるが、態度に明確な「壁」があるのを感じていた。


「あの、ステラさん」

「何かしら?」

「ステラさんが、僕達の力だけでの突破を望んでるのは知ってます」

「うん、そうね」

「でも、今はそれでは足りないものが多すぎます」

「でしょうね」

「だから……僕に払える対価は払います。それで、ドーマに稽古をつけてあげてくれませんか?」


 そう言われて、ステラは少し驚いたような顔をする。


「対価を?」

「はい。僕達が今求めてるものはたぶんステラさんしか持ってないモノで、それをタダで手に入れようなんてのはムシがいいのは知ってます。だから」

「あー、うん、そこまで」


 イストファを強く抱きしめて黙らせると、ステラは大きく溜息をつく。


「ほん……っと、いい子よね貴方は。弟子としての権利を主張すればいいものを、遠慮してばっかりで1度もしないんだもの」

「ス、ステラさん……?」

「ま、そんなところが気に入ってるんだけど」


 言いながらステラはイストファを離し、ドーマの前までやってくる。


「いいわよ」

「え?」

「イストファに免じて、稽古つけたげる」

「あ、ありがとうございます」

「期間は1週間。それで貴方を7階層で戦うに相応しい程度に鍛えてあげる」

「え。いえ、何もそこまで」

「運がいいわよ貴方。私、イストファは育成方針の関係でガッツリ教えてるわけじゃないもの。魔法も教えるから、そこまでキツいわけじゃないけど……そこそこ死ぬ寸前辺りまではやるから」

「え、ちょ……ええ!?」

「じゃ、イストファ。カイル達にはよろしく伝えておいてね?」


 引きずられながら出ていくドーマを見送り……イストファはどう伝えたものかと悩む。


「えーと……引き受けてもらえた、でいいんだよね?」


 訪れてしまった1週間のダンジョン探索の休み。

 それをどう過ごすべきか……それを相談するべく、イストファはカイルの部屋へと戻っていく。

Q、ガッツリ教える場合はどうなりますか?

A、死ぬ瞬間に引き戻されるのが前提になる感じです。

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