表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金貨1枚で変わる冒険者生活  作者: 天野ハザマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

230/332

そういえば

 そして、日も沈み始めた頃。宿のカイルの部屋で反省会が開かれていた。


「……マジで困ったぜコレは……」


 そんなカイルの言葉に、誰も答えない。誰もが同じ心境だったからだ。

 いや……唯一イストファが同意の言葉を発する。


「そうだね。アメイヴァが、あんなに厄介だなんて……」

「カイル頼りになってしまうのが問題ですね」

「ボクの呪いも、あんな生き物相手にどう発動していいのか……」


 そしてイストファに触発されるようにドーマとミリィも続ける。

 そう、神官戦士となったドーマではあるが、攻撃魔法の類は授かっていない。

 攻撃手段はイストファ同様に物理攻撃であり、たとえヘビーウェポンやライトウェポンで魔力を、纏わせたところで、ゴースト退治のようにはいかない。


 ミリィはもっと深刻だ。

 元々攻撃手段に欠けるミリィではあるが、その真価を発揮するのは行動阻害の各種呪法だ。

 だが、元々ミリィの呪いは対象が狭い範囲であればあるほど効果を強くする。

 単体相手でも腕や翼といった部位に絞る事で強力にあるが……不定形のアメイヴァに部位などという概念があるかどうかも分からない。

 それ故に全体にかけねばならないが、伸びる、広がる、隠れると多彩に体を変化させる上に数が多いとなると視界に収めるだけでも難しくなってくる。

 言ってみれば、呪法士と相性が限りなく悪い相手なのだ。


 そしてイストファだ。マジックイーターがあると言えど、それで全てが解決するというわけではない。むしろそこから先が本番であり、魔法の使えないイストファにはアメイヴァをどうにもできない。


「俺がどうにかしなきゃいけねえんだが、なあ……」


 しかし、カイルの問題は深刻だ。カイルのダンジョンでの成長は魔力に偏っている。

 そのせいか、今のカイルの魔力は並の魔法士よりも多少上のレベルにまで成長している。

 その分、体力や身体能力は並の魔法士より遥か下なのだが……それは今更なのでさておき。

 それでも、カイル1人に比重が偏っている分、極度の集中でただでさえ少ない体力も削られていくし……魔力の消費も激しい。


「安全な場所が分からないのも問題だよね」

「ああ。なんだかんだで6階層は休憩できたしな……今度の階層は地中から出てくる分、全く気が抜けねえ」

「僕が魔法使えればいいんだけど……」

「空飛びたいって方がまだ現実味があるな」

「え、そこまで?」


 ちょっと落ち込んだイストファをそのままに、カイルは悩むような様子を見せる。

 事実、攻撃魔法を使えるのがカイルだけというのが今の問題だ。

 カイルの魔力が尽きた時点でアメイヴァへの対抗手段がゼロになる。

 これが問題なのであって、もっと言えばこの点さえ解決できればどうにかなるとも言える。

 しかし、どうするか。そう簡単に解決策が浮かべば苦労しないのだが……カイルは、イストファがじっとドーマを見ている事に気付いた。


「なんだ、どうしたイストファ」

「んー……そういえばドーマって、攻撃魔法は使えるようになったりしないのかなって」

「むっ」

「今のところ授かってはいませんが……そういえば、確かに神官の魔法にも攻撃魔法はありますね」

「それなら!」


 今にも立ち上がろうとするイストファを、ドーマが「まあ、落ち着いてください」と抑える。


「確かに神官にも攻撃魔法はあります。ただ、ニールシャンテ様のこれまでの傾向からいって……授かる可能性が高いとは言えませんね」

「確かにな。どう考えても迷宮武具の神は神官戦士向けの神だろ」

「せめて解毒や麻痺治しの魔法くらいは授かりたいのですが……」

「麻痺治しは一般化されてなかったよな。となると神殿で習う事もできねえし……」


 そこで、イストファはそういえばと首を傾げる。


「……なんで通じるんだろ」

「ん?」

「麻痺みたいな毒が通じるのって、初心者までって話だったと思うんだけど」

「あー……そうか、そこからか」


 カイルは何か納得した風な表情になると、自分の胸元を指す。


「確かに、麻痺毒の類はダンジョンに潜ってると効かないようになってくる。俺にだって、外で出回ってる毒の類は効かないだろうな」

「だよね?」

「だがな、毒には2種類ある」

「2種類?」

「おう、物理毒と魔法毒。前者は粉や液みたいな形で誰でも運用できるものだ」


 たとえば、裏で出回っているような「毒薬」の類は物理毒になる。

 魔力を含むわけでもない、ただ身体に毒というだけのもの。

 これはダンジョンで鍛えていると、自然と通用しないようになっていく。


 そして、魔法毒。これは物理毒のように出回ったりはしない。


「言ってみれば、これは魔法効果としての毒だ。身体の強さだとかそういうのと関係なく、魔法抵抗の問題だ」


 魔法毒はあくまで魔法による結果であり、厳密にいうと「毒」とは言い難い。

 そういう魔法効果なのだ。


「だがまあ、物理毒でも魔法毒でも解毒や麻痺治しの魔法で解除できるけどな」

「なんで?」

「知らん。俺も訳分かんねえとは思うが、そういうもんなんだ」


 カイルの説明に、イストファはふとステラの話を思い出す。

 あの時ステラは「リトルファイア」の魔法を見せながら、こう教えてくれた。


 全ての理屈を無視して、この火はそれでも此処にある。魔法ってのは、つまり『そういうもの』なの。


 なるほど、魔法とは不思議な物なのだろう。それを改めて理解して……。


「あっ」


 そして、唐突に思い出す。


「そういえばステラさん……僕の麻痺を魔法で治してたよ?」


 全員の驚愕の声が響いたのは、その瞬間だった。


分からない方は過去の話を読み返したり発売中の書籍を読んだりするとよいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載「漂流王子ジャスリアド~箱庭王国建国記~」
ツギクルバナー

i000000
ツギクルブックス様より書籍発売中です。売り上げが続刊に繋がりますので、よろしくお願いいたします……!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ