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金貨1枚で変わる冒険者生活  作者: 天野ハザマ


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想像以上にヤベえな

 6階層の探索開始から、3日後。

 イストファ達は、適当に入った食堂のテーブルに突っ伏していた。

 あれから鍵が見つかる事もなく、溜まる疲労はストレスに変わっていく。

 その為、気分転換に美味いものでも食べようという提案がカイルからされたのだが……それで一気に気分が上がるわけでもない。

 皿に積み上げられた空揚げを1つ摘まんで齧ると、カイルは大きな溜息をつく。


「……想像してたつもりだったが、想像以上にヤベえな、あの階層は」


 6階層には、今までにはない要素が存在する。

 それが「昼夜」の概念で、6階層には太陽こそ存在しないものの、一定時間で昼と夜が切り替わる。

 これは一見普通の事に思えるのだが、「都市」という形を持った6階層ではこれが凶悪に働く。


「まあ、確かに……まさか夜盗や辻斬りが現れるとは思いませんでしたね」

「しかも強かったしね……」

「イストファが気付かなかったらボク、死んでましたよ……?」


 辻斬りに斬られかけたミリィが身体を震わせ、果実ジュースを一口飲む。

 口の中に伝わるオレンジの風味が「生きている」実感をミリィに与え、ほふぅ、という声をあげさせる。


 そう、夜の6階層……幻影都市は「昼」以上の凶悪さをイストファ達に見せつけていた。

 外に居るだけで危険なレベルであり、だからといって室内にも幻影人が出る為安全とは言えない。

 他の冒険者達が最初の建物を拠点にしている理由をこれ以上ないくらいに理解できてしまうのが「夜の幻影都市」という存在だった。


「だが、チマチマやってたら1年たっても6階層をクリアできねえぞ。なんとかしねえと……」

「王都規模っていうのが問題ですよね。普通に探索をするだけでも時間がかかります」

「それに、細かく探さないといけないしね」

「それもあるんだがな……」


 そう、イストファの言う通り6階層では「細かい探索」が必須だ。

 これまでイストファ達は宝箱の類も全無視するなどの恐るべきショートカットを行ってきたが、それが今回は出来ない。

 更に言ってしまうと……イストファ達は瞬間攻撃力は高いが、長時間の戦闘には向いていない。

 それをイストファはともかく、他の3人はなんとなく理解できている。


「……ぶっちゃけ、今の俺達はイストファ頼りになってるところはある。前から分かってはいたんだが、6階層ではそれが悪い方向に働いてる」


 今の4人を戦力分析すると、こうだ。


 まずはイストファ。魔力がゼロで、その成長は完全に身体能力に割り振られている。その結果、単純な身体能力での勝負であれば6階層でも充分以上に通用し、体力も申し分ない。

 戦闘でも先頭に立ち回避と逸らしを上手く使い、ファルシオンを手に入れたことで攻撃力も強化された。弱点としては、魔法にこれ以上ないくらいに弱い事だろうか?


 次に、カイル。魔力の成長が著しく、6階層に辿り着いた今では一端の魔法士として充分に通用する火力を実現している。

 遠距離攻撃に関してはカイルが一手に担っているといっても過言ではないだろう。

 頭脳労働もカイルの担当ではあるが、体力は著しく低い。全力疾走すればすぐに息切れする程度であるし、魔力が切れたら戦闘ではお荷物以下になってしまう。


 ドーマ。身体能力と魔力のバランスは良く、神官戦士となった事で回復も出来る近接防御担当として非常に重要な立ち位置だ。

 しかしながら、攻撃力が要求される場面ではどうしても苦戦せざるをえない。


 そして、ミリィ。呪法士として行動阻害系の呪法を扱うミリィの活躍の場面は意外と多い。

 しかしながら、身体能力に関しては「カイルよりはマシ」程度。

 攻撃力が皆無な点も問題ではある。


「全員でうまく役割分担出来てるよね」


 イストファがカイルの分析に感心したように頷くが、カイルは難しい顔のままだ。


「そうかもな。だがな、俺達の柱はイストファ、お前なんだよ」

「えっと……あ、うん。ありがとう」


 ちょっと照れたような表情になるイストファに、カイルは「そういう話じゃねえんだがな」と思いつつも否定せず、机をコツンと叩く。


「つまりな、イストファを迂闊に休ませることができねえんだよ。お前の体力の多さに甘えてる状況だ。正直言って、こいつはダメだ」


 そう、今のパーティの戦術も行動もイストファを前提に成り立っている。

 イストファが正面に立ち、イストファが全員を支えている。

 つまるところ、イストファが倒れたら崩壊してしまうのだ。

 

「とはいえ、俺が鍛えてマッチョになったところでたかが知れてる。ミリィも同じだろう」


 筋肉をつければ当然身体能力は上がるが、ダンジョンでの成長程劇的ではない。

 つまるところ、カイルとミリィの身体能力の改善は現実的ではないということだ。


「となると、私ですか」


 自分を指差すドーマに、カイルは頷いてみせる。


「自分で言ってて情けねえが、イストファをある程度楽にできるのはドーマ、お前しか居ねえだろうな」

「それは私もその通りだとは思いますが、今の私の役割はカイルやミリィ……後衛の防御ですよね? 時折イストファと前衛を交代というお話ですか?」

「あるいは、な」

「ふむ……」


 少し悩むような様子を見せた後に、ドーマは「考えてみます」と答える。

 今日の所は自由時間にしようという提案が出たのは、それからしばらく後の事だった。

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