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金貨1枚で変わる冒険者生活  作者: 天野ハザマ


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何か露店で買って帰る?

 洋服屋を出た後は、もうすっかり日が暮れていた。

 一部の店を除く店は店仕舞いを始める時刻だが……逆に酒場などはこれからがメインの営業時間だ。

 呑み始めた冒険者の騒がしい声が響く中、イストファはミリィの服が入った荷物を抱えて歩いていた。


「結構買ったねえ」

「どうせ必要になるものですしね」

「うう……」


 ぐったりした様子のミリィとは違いドーマは楽しそうだが、余程買い物が楽しかったんだろうな……などとイストファは考えていた。

 まあ、確かにミリィの服に関してはカイルから予算上限なしと言われている。

 まるでお貴族様のような優雅で贅沢な買い物は、ストレス解消にはバッチリでもあるのだろう。

 ……まあ、イストファは少し前までの自分であれば信じられない額のお金が動く現実に胃がキリキリしそうではあったのだが。


「でも、ご飯どうしようか。何か露店で買って帰る?」

「それもいいんですが……あまりご飯で妥協しない方がいいですよ。しっかり食べられそうな時は食べたほうがいいと思います」


 露店の食事は基本的に味が濃いか、調理が簡単なものが多い。

 これはダンジョンの中で保存食の類にうんざりした冒険者相手に商売するための基本のようなもので、とにかく強烈に食欲を誘う香りが冒険者を誘い、そしてしっかりと暖かいものが冒険者に求められるからだ。

 ダンジョンから帰ってきた冒険者に「ああ、帰ってきた!」と思わせる、そういう食事が露店の基本という事であり……串焼きの類が多いのも、柔らかくて暖かく良い香りを漂わせるからでもある。


「そっか……でも、あんまり遅くなるのもね……」


 イストファの視線は路地裏へと向けられる。

 ジロジロと見られている感覚は今もあるが、それはいつも通りでもある。

 だが、不用意に危険に身を晒す必要もない。


「まあ、それはそうなんですが……流石に大通りで仕掛けてくるとも思えませんが……」


 言いながら、ドーマはミリィをちらりと見る。

 襲われても余程の事が無ければ切り抜けられるだろうが、ミリィのこともある。

 それを考えるとドーマも「何も気にしない」などとは言えない。


「では、酒場で包んでもらえるものを買って帰りましょうか」

「あ、それがいいと思う」

「その方がいいかもですね」


 言いながらイストファは近くの酒場に視線を向ける。

 あまり高級な感じはしないが、揚げ物の良い香りも漂ってくる。

 たぶん値段は手頃だろう。


「そこ、とかどうかな?」

「いいんじゃないでしょうか。値段も手頃そうですし」

「そうですね。ボクもあんまり高いのは買えませんし」


 頷き合う3人が酒場の中に入ると、店員らしい犬獣人の女性が「いらっしゃいませー!」と元気な声をかけてくる。


「3名様ですか? お好きな席にどうぞー!」

「あ、いえ。持ち帰りでお願いしたいんですけど」

「はい、お持ち帰りですね! こちらにメニューがございますので、お好きなものを!」


 言いながら店員は近くに置かれた紙をイストファに渡し、ニコリと微笑む。


「お薦めは、このコッコ鳥の空揚げです! 安定して入荷してますから、味も保証できますし!」

「あ、はい。あの、この日替わり空揚げって……?」

「その日入荷したもので揚げるんですよ! 肉か魚かも入荷次第なので、あんまりお薦めできないですね!」


 決まったら近くの店員にどうぞー、と言いながら店の奥に注文を取りに行く店員を見送ると、イストファ達は顔を見合わせる。


「……どれにする?」

「どうにも揚げ物が多いみたいですね」

「うーん……」


 メニューに書かれた品は、ドーマの言う通り揚げ物が非常に多い。

 サンドイッチや焼き肉、焼き魚、チーズの類などもあるが……大抵は揚げ物だ。


「なんでこんなに揚げ物が多いんだろうね」

「ダンジョン内では中々食べられないからじゃないですかね?」


 焼きや煮込み程度ならともかく、ダンジョン内で揚げ物をする冒険者は流石に中々いないだろう。

 そんな事に油を使うなら、ランタンなどに使うべきというのは分かりきっているからだ。


「じゃあ、揚げ物かな?」

「美味しいし、いいんじゃないですかね」


 頷き合うと、イストファ達は幾つかのメニューを選び店員に注文する。

 コッコ鳥の空揚げ、そしてパンにサラダ、果物ジュース。

 4人分の料理を受け取り、良い香りを漂わせるソレをドーマが持つ。


「うんうん、美味しそうですね。早く宿に戻りましょうか」

「……そういえばドーマって今は何処に泊まってるの?」

「朝鳴き雄鶏亭っていう宿ですよ。イストファとカイルのいる所からは少しだけ離れてますけど……」


 言いかけて、ドーマは「そういえば」と呟く。


「ミリィはどうするんですか?」

「えっと……一応多少のお金は持ってますから、何処か安い所に泊まろうかなって……」


 イストファ達に助けられた時に持っていた荷物は然程多くは無いが、多少のお金を入れた財布もベルトに括り付けていたので、それがミリィの当座の資金という事ににある。


「さっきのお金も4等分だから、それで大丈夫かな?」

「そうですね。とはいえ、ミリィ1人で別というのも心配ですし……今日はミリィも私と同じ宿に連れていくことにしましょうか」

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