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金貨1枚で変わる冒険者生活  作者: 天野ハザマ


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これが、雪……

 山道、高所の吊り橋、山間を抜ける風。

 今までの階層では存在しなかった「自然の妨害」を抜けながらイストファ達は進んでいく。

 今までとは全く違う道程というものによる疲労と、そんなものはおかまいなしに襲ってくるモンスター達。

 もし、これが1階層であるならば乗り越える事は出来なかったかもしれないと……そしてこれまでの階層を乗り越えることによって成長したカイルが居なければ今も進むことは出来なかったかもしれないとイストファは思う。

 そして同時に思う。こんな中、1人余裕を見せているステラは未だ自分の手の届かない域にあるのだと。

 そうして進んだ3人……いや、ステラを加えた4人の先にあるのは、雪を伴う風の吹く場所だった。

 渡った吊り橋の先、どういう理屈なのか綺麗に分けられたように吹雪いている山の光景は、先頭にいるイストファに思わず進むのを躊躇わせるほどだった。


「これが、雪……」

「雪っつーか吹雪だな。マント買って正解だったが……視界が悪くなるな」

「襲撃に気付きにくくなりますね、気を付けなければ」


 三者三様の反応を見せたイストファ達だったが、その視線は自然とステラへ向く。

 いつもとほとんど変わらない格好に見えるステラだが、心配するというのも間違っているかと考えたイストファはマントのフードを深く被ると、前へと踏み出す。


「うわっ……!」


 その途端に吹き付けてくる吹雪はイストファの視界を奪い、今までの冷たい風など生温いくらいの冷たさを運んでくる。靴の裏のスパイクが雪をザクリと踏みつけ、イストファはマントの下で握る短剣を再度強く握りしめる。

 こんな中で襲われたら、どう対処すればいいか。ビュウビュウと吹きすさぶ吹雪の音は声すらも掻き消しそうで、今まで通りの連携がとれるようには思えなかった。

 それでも索敵は自分の役目だとイストファは必死で周囲を見回し……そして、上空に雪に紛れるようにしてアイスバードの青白い姿があるのを発見する。


「カイル! 上!」

「あ!? 敵か!? よく聞こえね……上か!」


 叫ぶイストファの声がよく聞こえなかったのか聞き返そうとしたカイルだったが、上空のアイスバードに気付き杖を向け……しかし、軽い舌打ちをする。


「チッ、上手く狙いが……ボルト!」


 上空へと放った魔法はしかし、アイスバードの横をすり抜け外れてしまう。

 いや、回避されたのだろうか? 雪で視界が塞がれた状況ではいまいち判別ができない。

 そしてカイルのボルトの魔法が放たれると同時に、上空からアイスバードの氷魔法が飛来する。

 放たれた細い氷柱のような氷の矢は防ごうと突き出したイストファの小盾の表面を凍らせ、もう1羽のアイスバードの放った氷の矢がカイルに向かって放たれ……察したドーマが素早く引き寄せる事で、今までカイルが居た場所に氷の矢が突き刺さる。


「うおっ、あぶね……!」

「気を付けてください!」

「おう! ボルト!」


 カイルの放つボルトの魔法はしかし、狙いがうまくつかないせいか再びヒラリとアイスバードに回避され、反撃のようにアイスバードの氷の矢が突き刺さるという結果が連続する。

 ドーマの素早いフォローがなければ何度かカイルに命中していただろうくらいにはアイスバードの狙いは正確で、しかし吹雪はカイルの視界を塞ぎ魔法を上手く命中させることができない。


「くそっ、どうすりゃ……っておい、イストファ!?」


 ふと響いた戦闘音。カイル達から少しだけ離れた先で、イストファが何かと戦っているのをカイルは見た。

 吹雪の中、白い保護色のような体躯を活かしイストファに襲い掛かるのは、2匹の狼。

 1階層にいたグラスウルフの近似種、スノウウルフだ。


「おいドーマ、イストファの……!」

「今フォローが必要なのは貴方でしょう!」


 カイルに氷の矢が当たりそうになる度にドーマが引き寄せている現状、確かにカイルをフォローするしかドーマのとれる手はない。

 背後にいるステラは未だ静観し、手を出す様子はない。そんなドーマの一瞬の視線に気付いたか、この吹雪の中でも通る声でステラは「私は手出ししないわよ」と告げてくる。


「でもまあ、サービスよ。後ろから来る敵は迎撃しといてあげるから、頑張りなさいね」


 言いながら、ステラは微笑み……振り向かないままに、背後からステラに襲い掛かろうとしていた別のスノウウルフ達が真っ二つに斬り裂かれ地面に落ちる。

 確かにあれであれば、ドーマが自分の背後をも気にする必要はない。いや、むしろ……最悪の事態に陥る事を防げているとさえ言える。ドーマがカイルのフォローを出来なくなった時、この戦いに勝利できなくなるのだから。


「カイル、もっと広範囲か……もっと速い魔法はないんですか!?」

「光より速ぇ魔法があるわけねえだろ!」


 叫びながらもカイルは思考をフル回転させ……牽制のようにボルトの魔法を放つ。

 速い魔法……ボルトの魔法で無理なら、何を使っても避けられる。

 ならば広範囲魔法……上空へ放てる魔法で、尚且つボルトより速度を落としてはならない。

 そんな魔法となれば……。


「……やるか。今の俺ならまあ……たぶんイケる!」

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